29 / 89
3章
26・再会(2)
しおりを挟むジャスミンは少々混乱していた。
「私だったら後ろに隠れるか、隣に立つわ。その状況で、好きでもない男性の胸になんて飛び込まない。」
どの口が言ってるんだ、と心の中で突っ込む自分がいたけれど、それよりも指摘されたことが恥ずかしくてたまらなかった。
「あ、アレクは友人よ。危機的状況で親しい頼れる人がいたら、ああなるわよ。」
「お兄様の胸に飛び込んで、泣いてすがって頭を撫でられて喜ぶの?」
プルメリアの言葉に、想像して少し引いた。
「それはないわ。だって、お兄様よ?いくら今の世界がヨーロッパ圏ぽくても、私はお兄様とそういうことはしない。」
「でしょう?私だって親しくて頼れるお兄様でも、泣いてすがらないわよ。」
「お兄様がいるの?」
「いないわ、弟だけ。弟でもしないわよ。」
プルメリアは、当たり前って顔で両手を上げた。
「あの騎士隊長が好きなんじゃないの?」
「知ってるの?アレクのこと。」
食い気味に尋ねるジャスミンに驚きつつ、プルメリアは頷いた。
「オスマン様と同じ隊に所属してる同僚だから。」
「ゲームにも出てくる?」
「出ないわよ。あのゲームは脇キャラクターがほとんど出てこないもの。モブとして存在はするかもしれないけど、騎士隊長はこっちに来てから知ったの。」
「…そうなんだ。」
なぜかホッとしてしまう自分が不思議だった。
「だから、悪かったわよ。いくら悪役令嬢だからって…あなたは今を生きてるんだもの。」
「まさか、謝られると思わなかったわ。ちゃんと仕事をしろって、また言いに来ると思ってたから。」
プルメリアは気まずそうに俯いた。
「私のこと努力してるって、違うルートを考えようって言われたから…」
説得を聞いてくれていたことに、ジャスミンは嬉しくなった。
ーほらやっぱり、プルメリアは悪い子じゃない。
きっと、プルメリアも一人で先の見えない恋愛ルートを巡り続け、辛く寂しかったに違いない。
「いいのよ、私は無事だったし。だから、ちゃんとオスマンのこと捕まえてよね。あの人、遊び人かもしれないけど放っておいたら危ないわよ。」
「ええ、頑張るわ。だから、お願いがあるんだけど。」
「いいわよ、どんなこと?」
しおらしいプルメリアに、ジャスミンはうっかり頷いてしまった。
「舞踏会に一緒に出て!」
「またぁ?!嫌よ!」
「今いいって言ったじゃない!」
「舞踏会はいい思い出が一つもないのよ!」
「オスマン様が来るの!だから、もう一回頑張ろうと思って!」
「一人で行けばいいでしょ!」
「勇気が出ないの!怖いの!不安なの!ジャスミンしか頼れる人がいないの!」
そう言われて、何も言い返せなくなってしまった。
ミュゲが見ていたら、お人好しにも程があると言われるだろう。
「…分かったわ。で、どうすればいいの?」
「ありがとう。あのね、騎士隊長と一緒に来て、オスマン様を見張ってて欲しいの。」
「な、なんでアレクも?!」
動揺しているジャスミンを見て、プルメリアがニヤリと笑う。
「だって、オスマン様が他の女を誘うのは嫌だし、ジャスミンは他の男から言い寄られて踊りたくないでしょ?」
「そりゃ、そうだけど。」
「だったら、騎士隊長と一緒にいればいいじゃない。オールハッピーよ。」
真っ赤になっているジャスミンを尻目に、プルメリアは立ち上がった。
「じゃ、そういうことだから、よろしくね!舞踏会の詳細は、あとで手紙を送るから!ドレスの新調、頑張りなさいよ!」
「えっ、ちょっと!」
じゃあねー!と手を振り、プルメリアは教会を去って行った。
1
お気に入りに追加
1,296
あなたにおすすめの小説
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
★完結 【R18】変態だらけの18禁乙女ゲーム世界に転生したから、死んで生まれ変わりたい
石原 ぴと
恋愛
学園の入学式。デジャブを覚えた公爵令嬢は前世を思い出した。
――ああ、これはあのろくでもない18禁乙女ゲームの世界だと。
なぜなら、この世界の攻略対象者は特殊性癖持ちのへんたいばかりだからだ。
1、第一王子 照れ屋なM男である。
2、第二王子 露出性交性愛。S。
3、王弟の公爵閣下 少女性愛でM。
4、騎士団長子息で第一皇子の側近 ドMの犬志願者。
5、生徒会長 道具や媚薬を使うのが好きでS。
6、天才魔術教師 監禁ヤンデレ。
妹と「こんなゲーム作った奴、頭おかしい」などと宣い、一緒にゲームしていた頃が懐かしい。
――ああ、いっそ死んで生まれ変わりたい。
と思うが、このゲーム攻略対象の性癖を満たさないと攻略対象が魔力暴走を起こしてこの大陸沈むんです。奴ら標準スペックできちがい並みの魔力量を兼ね備えているので。ちな全員絶倫でイケメンで高スペック。現実世界で絶倫いらねぇ!
「無理無理無理無理」
「無理無理無理無理無理無理」」
あれ…………?
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
完結 チート悪女に転生したはずが絶倫XL騎士は私に夢中~自分が書いた小説に転生したのに独占されて溺愛に突入~
シェルビビ
恋愛
男の人と付き合ったことがない私は自分の書いた18禁どすけべ小説の悪女イリナ・ペシャルティに転生した。8歳の頃に記憶を思い出して、小説世界に転生したチート悪女のはずが、ゴリラの神に愛されて前世と同じこいつおもしれえ女枠。私は誰よりも美人で可愛かったはずなのに皆から面白れぇ女扱いされている。
10年間のセックス自粛期間を終え18歳の時、初めて隊長メイベルに出会って何だかんだでセックスする。これからズッコンバッコンするはずが、メイベルにばっかり抱かれている。
一方メイベルは事情があるみたいだがイレナに夢中。
自分の小説世界なのにメイベルの婚約者のトリーチェは訳がありそうで。
本日をもって、魔術師団長の射精係を退職するになりました。ここでの経験や学んだことを大切にしながら、今後も頑張っていきたいと考えております。
シェルビビ
恋愛
膨大な魔力の引き換えに、自慰をしてはいけない制約がある宮廷魔術師。他人の手で射精をして貰わないといけないが、彼らの精液を受け入れられる人間は限られていた。
平民であるユニスは、偶然の出来事で射精師として才能が目覚めてしまう。ある日、襲われそうになった同僚を助けるために、制限魔法を解除して右手を酷使した結果、気絶してしまい前世を思い出してしまう。ユニスが触れた性器は、尋常じゃない快楽とおびただしい量の射精をする事が出来る。
前世の記憶を思い出した事で、冷静さを取り戻し、射精させる事が出来なくなった。徐々に射精に対する情熱を失っていくユニス。
突然仕事を辞める事を責める魔術師団長のイースは、普通の恋愛をしたいと話すユニスを説得するために行動をする。
「ユニス、本気で射精師辞めるのか? 心の髄まで射精が好きだっただろう。俺を射精させるまで辞めさせない」
射精させる情熱を思い出し愛を知った時、ユニスが選ぶ運命は――。
R18、アブナイ異世界ライフ
くるくる
恋愛
気が付けば異世界。しかもそこはハードな18禁乙女ゲームソックリなのだ。獣人と魔人ばかりの異世界にハーフとして転生した主人公。覚悟を決め、ここで幸せになってやる!と意気込む。そんな彼女の異世界ライフ。
主人公ご都合主義。主人公は誰にでも優しいイイ子ちゃんではありません。前向きだが少々気が強く、ドライな所もある女です。
もう1つの作品にちょいと行き詰まり、気の向くまま書いているのでおかしな箇所があるかと思いますがご容赦ください。
※複数プレイ、過激な性描写あり、注意されたし。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?
KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※
ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。
しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。
でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。
ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない)
攻略キャラは婚約者の王子
宰相の息子(執事に変装)
義兄(再婚)二人の騎士
実の弟(新ルートキャラ)
姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。
正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて)
悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる