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第三部
Sky's The Limit・37-2
しおりを挟むゆーてぃは目元を拭うと、きいくんの肩を叩いた。
「痛いわ」
怒ったように言うけど、顔は満面の笑みで、私の大好きな三人がここにいた。
「そろそろ、お色直しのタイミングなんじゃない?」
「あ、そうかも。そろそろ呼ばれるかな」
きいくん本人が忘れていたのに、うげんちゃんが分かってるってどういうこと、ウケる。
私のたっての希望で、きいくんもお色直しをするのだ。ああもう、きいくん最高にかっこいい。見てなくてもわかる!
うげんちゃんの言った通り、スタッフさん達に呼ばれて会場を後にする。きいくんとは着替える場所が違うため、途中で別れた。
ドレスからドレスに着替えるのは時間がかかって、グッタリしつつ会場に戻ると、先に着替え終わっていたきいくんが、私を待っていた。
「似合ってるね、赤いドレス」
拍手で迎えられながら、きいくんの隣に座る。
やっぱり、ここは主張しておきたかった。絶対に赤いドレスにするって決めていた。
「きいくんも、すっごくかっこいい」
白いタキシードから、少しカジュアルなスリーピーススーツに変わったきいくんを、今めちゃくちゃに撮影したい。
一応、馴れ初めだけムービーは流しておきなよと実音々に言われて、きいくんのツテで動画を作ってもらい、それがお色直し中に流れていた。なんと、動画制作が趣味の事務所の先輩が作ってくれたらしい。
なにそれ…もったいなくない?いや、きいくんの動画だと思えばもったいなくないんだけど、私のところだけ申し訳なさしかない。
サンキュウ!のコンサート映像を流した方が良かったんじゃないか。
そんなことを考えていると、私達の前にマサオさんがやってきた。
「結婚、おめでとう」
いつ見ても美人さんだ。ハイブランドのスーツがとてもよく似合っている。
「ありがとうございます」
「ありがと」
「喜一、顔がゆるっゆるだったぞ」
「うるせー!なかちゃんが可愛いんだから仕方ないだろ」
きいくんのデレに、顔が熱くなる。
「マサオさん、来てくださってありがとうございます」
美人が悪い顔をして笑った。
「人妻なのがもったいないよなあ」
「絶対ダメだから無理だから」
「はいはい、分かってるって。俺に興味が微塵もない女の子には、手を出しませんよ」
そうだった、マサオさんモテたくて仕事してるんだった。
「じゃ、妹さんに話しかけてくるわ」
「そっちもダメ!」
マサオさんは楽しそうに手を振って、宣言通り実音々のところへ向かって行った。
「ああ、俺の妹が毒牙にかけられる」
「実音々はしっかりしてるから大丈夫だよ。今はうげんちゃんで頭がいっぱいだろうし…ってあれ?うげんちゃんいないね」
「トイレじゃない?あー…俺も行ってきてもいいかな…なかちゃん一人にするの申し訳ないんだけど」
「いいよ!行っておいで!」
人間としての尊厳は大切だ。
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