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第三部

Sky's The Limit・32-2

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 センターステージが下がり、三人は花道を歩きながらメインステージへ移動する。新アルバムの曲を何曲か続けて踊った後、MCに入った。
「みなさんこんには!サンキュウ!でーす!」
 元気なばんばんの声が響くと、ファンがフゥー!と叫ぶ。お決まりの流れに安心する。
「いやあ、ついに最終日が来ましたね」
 うげんちゃんの言葉に、会場から「やだー!」と声が出る。
「ありがとう!」
 ゆーてぃが嬉しそう手を振った。
「じゃあ、いつものやっと来ますか」
「今日初めてサンキュウ!のコンサートに来たよって方ー?」
 はーい!と声がして、チラホラと手が上がる。
「おおー!いるね!今日最後だよ?レアだねー!」
「何回も来てるよって方ー?」
 たくさんの声と手が上がる。
「いつもありがとうございます!じゃあ、彼女に連れられて来ちゃった彼氏ー?」
 野太い声があちこちから聞こえる。
「おっ、男の人がいるの嬉しい!ありがとう!」
「居酒屋みたいな声したな!」
「すみませーん、大人の麦ジュースくださーい!」
「はい、よろこんで!」
「ヤメロ!」
 ゲラゲラと笑って楽しそうにちょけている三人を見ると、今日が最後だなんて嘘みたいだ。
 他愛もない話、直近で起きたゆーてぃのドジっ子話、お昼に食べたご飯など、話題はゆるく楽しいものばかりだ。
「あ、スタッフさんから巻けって言われてる」
「えー、まだ大して喋ってないぞ!」
「怒られるから歌に入るか」
 水分を摂った三人が舞台袖に履けて行くと、また大画面に映像が流れ始める。三人がさっきの真っ白いタキシードから、カラフルなスーツへと着替えて、楽屋から出てきた。カメラへと手を振り、うげんちゃんがウィンクをして、会場から悲鳴が上がる。
「うげんちゃんかっこよすぎぃ」
 実音々の叫びに完全同意。
 ステージ裏を移動して行く三人の後を追って行くと、階段を上って、パッとスポットライトが光ると、バックステージに同じ衣装を着た三人が飛び出して来た。
 また悲鳴が上がり、曲が始まった。二曲ほど踊ると、新旧織り交ぜたメドレーを歌いながら、外周を歩き出す。
 私の胸は心臓が飛び出しそうなほどドクドク言っている。もうすぐ、ばんばんが花道を通る。私の目の前を通り過ぎるのだ。
「お姉ちゃん、来るよ!」
 私は無言でこくこく頷くと、ばんばん団扇を前にして、ペンライトを力強く振った。
 手を振りながら全方向へ笑顔を見せているばんばんに、きゃー!と叫ぶ。
 私の担当、最高にかっこいい!
 アイドルのすごさは、自分と目が合ったと錯覚させる視線の動かし方にある。
「私、ばんばんと目が合った!絶対こっち見てた!」
「いや、見てたでしょ。見るでしょ」
「だよね、そう思うよね!?」
「いや、そうじゃなくて、普通にお姉ちゃんのこと見てたよ」
 それは、ない。今のはアイドルの特技、目が合ったよね?!術である。
「はー、ばんばんかっこいいー!」
「聞いてない!」

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