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第三部
Sky's The Limit・18-2
しおりを挟む泣き疲れて眠ってしまった。
私の人生の半分はサンキュウ!でできていて、心の家族であり幼馴染であり、ずっとずっと大切な三人だ。これは変わることがなくて、一生大好きで、私の誇りと支えになっている。
だから、泣きすぎて顔がパンパンなのは仕方ないし、余ってる有給をもう一日使ったっていいのだ。
いやそもそも、有給は行使するの普通だからね。権利だからね、理由なんて関係なく使っていいものなんだから、ここで気兼ねするのはおかしいです。だって有給なんだもの。
「十五周年の円盤見よ」
実音々が作っておいてくれたブランチを食べながら、コンサート映像を眺める。
三人はキラキラ輝いてて、かっこよくて、いつも一生懸命で、ファンの為に一緒に楽しもうって色々考えて、愛を分けてくれていて、大好きで大好きで、いつもありがとうって感謝ばかりが溢れてきて、気づいたらまた泣いていた。
「うげんちゃんのばか…優しすぎる…涙が止まんなくなっちゃったじゃん…」
悲しい、寂しい、いなくならないで。でも、三人がやりたいことをして欲しいって、思う気持ちもある。
「つらい…」
画面いっぱいに、ばんばんが映り、ソロ曲を歌い出した。
ああ、そうか。
だから、しばらく変だったんだ。最近感じていた、あの違和感はこれだったのだ。
彼が私を見て泣きそうに顔を歪ませたり、ベロベロになるまで酔っ払って帰ってきたり、恥ずかしいくらいの愛の言葉を伝えてきたのは、これが原因だったんだ。
楽しそうに歌い踊るばんばんが、ステージのど真ん中でスポットライトを浴びている。
私の人生の半分以上は、彼を応援することで成り立っていて、アイドルとしての彼を心から愛していて、ずっとずっとそれが変わらずに続くものだと信じて疑わなかった。いつまでも永遠に、リア恋ばんばん担当でいると思っていた。
それが、私のアイデンティティだったから。
画面が滲んで、ばんばんが見えない。
喉がぎゅっと締まって苦しくて、息がしづらい。身体中が冷たくなって、心が体から離れていきそうだ。
頭も重く、姿勢を保っていられない。床に両腕をついて体を支えるけれど、震えてそれもままならなかった。
私は、何もできない。何も言えない。
今、泣くことしかできなくて、自分の気持ちもしっちゃかめっちゃかで、何を伝えようとしても、大好きなあの人を傷つけてしまうだろう。
そんなこと、したくないのに。
やだよ、サンキュウ!がいなくなるなんて、やだ。
どうして、なんで、いなくなる必要なんてないじゃん。
お芝居の仕事、たくさんしてるじゃん。
それは、サンキュウ!よりも大切なの?
三人で頑張って来たのに、それを置いて一人になるの?
そこまでしてやりたいことなの?
ほら、彼を傷つけるような言葉しか浮かんでこない。
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