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第三部
Sky's The Limit・15-3
しおりを挟む「ふーん…そおなんら」
意地悪そうにニヤニヤしたきいくんが、私の耳を弄ぶ。
「なかちゃんのこと、上から下まで全部知りたいし、どんな時に恥ずかしがって、喜んで、悲しくなるのか、怒ったり泣いたり、感情の揺れも全部知りたい。それで、全部俺のものにしたい。揺れの原因は、全部俺でありたい」
待って、本当無理。なにそれ、やめて胸が苦しい。
嬉しいやら恥ずかしいやら、首まで赤くなってると思うし、ちょっと視界が滲んでる。
「あ、ありがとうございます…分かったので、もう分かりましたので」
「分かってないよ、なかちゃんはまだ俺のこと全然知らない。俺がどれだけ卑怯で弱虫なのかも、すごくワガママで欲しがりなのかも、全然知らないんだ」
何それ…可愛いのコンボじゃん…ビンゴ大会だったら全部のマス目空いちゃってるじゃん。
「…うう…きいくん好き…可愛い…無理…愛してる」
「本当?」
「きいくんが、きいくんでいるだけで、全部好き…」
生きてるだけで最高、ありがとうございます。人として尊敬できる上に、人間らしい部分も持ち合わせてるとか、好きにならずにいられないよ。
きいくんは、眉尻を下げて微笑んだ。
「……ありがとう」
耳から手が離れると、きいくんはお箸で肉団子を口に入れた。
「おいしい」
「よ、良かったね」
「うん!」
顔を両手で仰ぎつつ、私も夕飯を食べることにした。
最近、きいくんの愛の言葉が多くて、慣れたって言ったけどアレは嘘でした。全然慣れてなかったわ。世界で一番かっこよくて可愛くて好きな男性から、そんなこと言われて慣れるとか烏滸がましいこと言った。申し訳ございません。
それから一週間くらい、きいくんはこの前までの落ち込みが嘘みたいになくなって、普段通りの楽しそうな様子になった。
「なかちゃん、ありがとね」
「え?」
「ずっと、俺のこと心配してたでしょ」
ベッドの中、きいくんの腕に閉じ込められている。
「ううん、私が好きでやってたから、気にしないで」
「それでも、ありがとう。俺、もう大丈夫だから林家に帰っていいよ」
ニコって笑っているのに、私は何故か不安になって首を振った。
「まだいられるよ?」
「でも、そろそろ妹様に怒られそう」
「それは…うん…」
実音々は若干、そろそろ耐えられなさそうな感じではある。
「ね?俺、今すごく元気だから大丈夫だよ」
「そう?」
「うん!」
きいくんも、言い出したら聞かないところがある。
「分かった。じゃあ、明日は会社に行ったらそのまま家に帰るね」
「うん、気をつけてね」
額にちゅっとキスをされて、私達は眠った。
翌朝、出勤する前に、これだけはと伝えておいた。
「冷凍庫と冷蔵庫に、サラダと常備菜があるから食べてね!三、四日はもつからね!」
「分かった、ありがとう。気をつけてね」
唇にキスを落とされて、ゆっくりと名残惜しむように離れる。
「て、照れる…」
「可愛いなあ、なかちゃん」
「いってきます」
「ん!」
手を振るきいくんに見送られて、私はきいくんの家を出た。
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