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第三部
Sky's The Limit・14-1
しおりを挟む夜中に起きたらしいきいくんは、私が朝起きたら隣で寝ていた。起こさないようにベッドから出て、簡単なブランチを用意しておく。
ブランチとかおしゃれに言ってるけど、昨日の残りをおにぎりにしただけ。買ってきておいたインスタントのお味噌汁の素を、マグカップに入れて、お湯をそそぐだけにしておいた。
私は面倒だからご飯は食べず、メイクをしたら出勤する。まだスヤスヤと寝ているきいくんのほっぺたに、こっそりキスをして部屋を出た。
いやまじ、きいくんの寝顔とか彫刻かな?ってくらい美しいからね!睫毛長いし!!普段、きいくんの写真を撮ったら、流出防止でクラウドに入れてから削除してるんだけど、今日の寝顔はロック画面に設定したいほど可愛かった…はー…しないけど。
先週分の配信アーカイブを見ながら電車に揺られて、会社へとたどり着く。
そういえば、今日は三人で配信の日だったな。ということは、帰りは1時を回るだろうから、夕飯は用意しておかない方がいいかな。メッセージで確認しておこう。
ふふっと笑って自席に着き、パソコンを立ち上げる。
さきさきが始業ギリギリにやって来て、「あいつ、まだ結婚してないのに旦那気分で困る」なんて幸せな愚痴を言っていた。
私も今、ほんのちょっとだけ奥さん気分で生活してるよ。いや、ほんのちょっとです。調子乗ってすんません。
心の中で誰かに謝って、誰に謝ってんの?なんてツッコミを入れる。
好きな人の体調や精神面を心配したり、寄り添ったりできるのって、私にとっては本当に幸せなことだ。だって数年前は、あらゆる画面の前、遠く離れたこちら側から、透明な壁を隔てた向こう側をただ勝手に心配して、手紙を送ることしかできなかった。
今は、触れられる距離で心を通わせられる。
だから、私にできることは全てやりたい。
世界で一番好きな人のために、私ができることを。
久しぶりの残業になってしまい、定時ピッタリで上がりたい族の私とさきさきは、ブーブー文句を言いながら仕方なく書類を作っていた。
「うー!!早く帰って、配信に間に合うように家事を終わらせたいのにー!」
予想通り、きいくんからは夕飯不要とメッセージが来ていたから良いけれど、お風呂まで終わらせて配信待機するためには、できるだけ早く帰りたい。
「まじ上司のくせに仕事振るの下手すぎなんだってばー!間に合わないってちょっと考えれば分かったじゃん!っていうか、間に合わないって言ってたよね、私達!?」
「言ってたよー!二、三日前からずっと言ってたー!今日は三人の配信なのにー!」
「しかも自分だけ定時で帰ってるしさー!ほんっとムカつく!」
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