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第三部
Sky's The Limit・2-1
しおりを挟む食器を片付けてリビングへ戻ると、きいくんがコンサート映像を眺め一人座っていた。
「あれ?実音々は?」
「んー、明日早いからお風呂入って寝るって」
ぽんぽんと自分の隣に座れと指示してくるので、素直に従う。
「妹に気を遣わせてしまった」
「ほんと、いい子だよねえ」
「ワシが育てた」
堂々と威張ると、きいくんが笑って私の肩に頭を乗せる。
「羨ましいなあ、林姉妹」
「そう?」
「うん、いつも楽しそう」
「楽しいよ!サンキュウ!はもちろんだけど、実音々の担当グループの円盤も見るし。お互いのおすすめ見たり、現場も一緒に行くし」
「ふーん」
なぜか急に拗ねモードになったきいくんの頭をよしよしする。
「一番は、ばんばんだよ!」
「それは知ってるけどー」
口を尖らせて、まだ不満そうにしている理由が全然分からないけれど、あまりの可愛さに口元が緩んでしまう。
奇跡が起きて、お付き合いさせていただくことになってから早幾年経つけれど、未だにときめき続けているし、彼女としても、ファンとしても、毎日感謝が尽きなくて、日々愛が募っていく。
うふふ、と笑うと、きいくんが乗せた頭をぐりぐりと押し付けてきた。
私の彼氏が可愛すぎる。
「どしたの?」
頭皮がいい匂いするなあ、なんて考えながら問いかけると、きいくんは拗ねモード全開の小さな声で呟いた。
「さっき、うげんのことカッコいいって言ってた」
え?!嫉妬…?
まさか、もしかしなくても、嫉妬?!
アイドルとして?!これはアイドルとしてですか?!
「ばんばんが世界で一番かっこいいですよ!命かけて誓えます!!」
自担が自信を無くしたら困る!だってこの世の何を置いても、比べるまでもなく、宇宙で一番輝いてるのは、真・アイドル伴喜一なのだから!!
「でも、手首とかうなじとか言ってた」
あんなに爽やかに笑って料理をしていながら、心の中ではそんなこと思ってたんですか、自担は。可愛すぎませんか、という自問自答に、全内なる私が強く頷いている。
「確かに言いましたが、それはうげんちゃんのかっこいい部分であって、ばんばんと比べてる訳じゃありませんよ。それに、真・アイドル伴喜一は唯一ですから!上から順を追って申し上げれば、ふわふわの髪の毛は天使の巻き髪かな?というくらい愛らしいですし、大きな瞳は世界中の眩さを閉じ込めたようにキラキラしていて、筋の通った鼻に薄く形の良い唇は整い過ぎていて、パーツの大きさに目が行きがちですが輪郭はシュッとしていて同じ人間とは思えないくらいの小顔で」
「もういいってば、もういいから」
肩の上にいたきいくんは、今ブルブルと震えている。
「笑い過ぎでは?」
「ほんと…なかちゃん…ずるい…腹筋痛い」
自担を軽く褒めただけなのに、なぜこんなに笑われているのか。
「まだ顔しか褒めてませんけど」
「これ以上言われたら、漏らすくらい笑うからダメ」
「えっ…それは、続けるしかないのでは?自担のお漏らし見たいです」
「絶対やだ」
ばたんと仰向けに倒れて、ふうふうと息をしている。
我が家のフローリングに転がる自担兼彼氏様は、とても無防備で可愛い可愛いネコちゃんがお腹を出してリラックスしているようにしか見えない。
「はー苦しかった…なかちゃん、ファンになると敬語になるのおかしい」
「やはり、自担に敬意を表する為にも必要だと思いますので」
「じゃ、これで彼女に戻ろっか」
グイッと腕を引っ張られて、転がり彼氏の腕の中に収まった。そのまま胸元で息をする。
「…手羽のいい匂いがする」
「ジューシーな匂いがしちゃってるね。服に跳ねたかな」
背中をぽふぽふとあやすようにされると、幸せでついニヤついてしまう。
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