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秋の桜海祭編
文化祭ーミス桜海 決勝戦⑩
しおりを挟む私はステージの上にあがり、ステージの中央へと向かう。
そして私は中央に設置してあるスタンドマイクを手に取る。
別に歌をうたう訳ではない。
歌が上手くはない私がそんなことをしたらどうなるか目に見えている。
松白君から『ステージ上の事は任せる』と言われた時から既にやりたいことは決まっていた。
………というより、私にやれることなんてこれくらいしか無かった。
「あー……、あー……、桜海祭に来ていただいているみなさんこんにちは。」
唐突な私の挨拶に会場が動揺する。
『何を言っているんだ?こいつは。』と言いたげな感じだ。
それでも、私は続けた。
「私は二年生の染井 桜と申します。この桜海高校に来てからというものの毎日が忙しく大変な日々が多々ありました。」
「それでも、私は充実した高校生活を送っています。」
あれだけ騒がしかった会場がとても静かだ。よく私の声が通る。
「今日の桜海祭もそうです。子供の時に桜海祭を見て、そして憧れて十数年の月日が経ち、私は今その舞台に立ててとても嬉しいです。」
「普段の私は『シンデレラ』なんて言うには程遠い存在なんですけど、今だけ私は多くの人達の協力により誰よりも素敵な『シンデレラ』になれていると思います。」
「………いえ、もしかするとこの桜海高校にきてからずっと私の毎日は魔法にかけられた『シンデレラ』のような素敵な日々だったのかもしれません。」
忙しいと私が錯覚していた日々は、振り返ってみると案外悪くない日常なのかもしれない。
今、私は話しながらそう感じた。
…………って、話し続けたらきりがないな。
この毎日が楽しいことを。
「長々とお付き合い頂きすみません。私は『シンデレラ』というお題でステージ上でのパフォーマンスと聞いた瞬間に真っ先にこの思いを伝えたいと思ったのです。」
「最後に私はこの桜海高校をはじめ、みんなの事が大好きです。いつもありがとう。」
そう言って私は頭を下げた。
(い、勢いで言ってしまったが恥ずかしいな。)
感謝の気持ちを伝えることがこんなにも難しいとは。
パチパチ………。
会場から小さな拍手が聞こえる。
「「かっこいいよー。」」
「「染井先輩素敵でーす。」」
そして、それが段々と……………。
「「素晴らしい!」」
「「私も桜海高校のこと好きだよー。」」
段々と…………。
「「俺も桜海高校にこれて良かったー。」」
「「桜海高校大好きーー。」」
段々と大きくなり会場を包み込んだ。
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