2 / 5
最終話 怨みの終焉(月鬼と月姫)
しおりを挟む
執筆日 2017/06/07
第三世代の本当の終わり
ラスボス黄泉比良坂 不比等(よもつひらさか ふひと)との決着です。
不比等目線の独白に近い
狂愛・死要素あり
登場人物は新月神話伝の第三世代
後期のネタバレあり
1000年が経っても怨みは変わることが無かった
ずっと孤独だった
神久夜(かぐや)への憎しみだけ
神久夜へのウラミだけ
ある時あいつは
「結婚するの
もうお前とは会わない
…さようなら、兄上」
じいさんも婆さんももういねぇ
夜刀もいつの間にか死んじまいやがった
神久夜の娘を連れて竹林を歩いた
懐かしい竹の香り
葦原にいた頃を思い出す
「鬼さん、かぐやちゃんの…母様のお兄さんでしょ?
髪の色が一緒」
「かぐやはお前だろ
※祈里(いのり)…懐かしいな
髪の色…俺はあの頃は黒髪だったけどよ」
※神久夜の幼名
「花…好きだろ、やる」
「母様にそんなに似てるの?
嬉しいな…かぐやちゃんに、かぐやちゃんみたいになりたいから」
「かぐやちゃん、あんまり笑わないけど美人だから
笑うと美人だって、父様は母様の笑顔が好きなんだって」
「…祈里はすぐ泣くから葦原一の不細工なんだよ
笑ってりゃまあまあ見れたもんなのにな…」
「鼠さんの皮衣、、随分古いのね私が直して上げる」
懐かしい…親父が纏っていたのはこんなキラキラ光っていた
だから欲しくなった
いや、親父が纏っていたから、欲しかった
あんなクズでも親父は親父だったからな
祈里と瓜二つなのはなかなかウケた
火の色の皮衣を纏う
嘆く思いを…束ねて
「かぐやちゃんが好きなの?」
「さあな」
「だって鬼さん、さっきからずっとかぐやちゃんの話ばかりしてる
かぐやちゃんからお兄さんの話、たまに聞くの
私も髪を結ってげる、じゃあかぐやちゃんの好きな三つ編み」
『いつかお前の婿になる伯父よ
…結婚したら、お前は私の母上にも会えるのよ
寂しいけどいつでも帰ってきなさい
何と言ってもお前は妾の娘よ?』
「…ありがとよ祈里
お前はそういうところ小まめだよな」
「そんな名前じゃないもん紫
紫って書いてユカリだもん」
祈里がよく、勝手に括ってきやがった
…嗚呼、きっと俺はあいつが好きなんだろう
妹として?幼馴染として…女として
双子だなんて、聞きたくなかった
実の兄妹なんて聞きたくなかった
カッとなって親父を殺っちまった
…あんたにはまだ、聞きたいこと色々あったんだけどな…
我に返った
「そうかそうか…そうだったな
お前は修羅と結婚して、ガキができたからもう会わないって…
ならば
ガキを殺せば、また会えるのか
ユカリに振り上げたらもう一人のガキが俺の右目を矢で射抜きやがった
俺は先に怯えるガキを殺そうと、目を押さえて黄泉の黒刀を振り上げたら修羅の奴が庇いやがるから
もう動かない修羅
殺り損ねたあのガキ
眼の痛さに耐えきれず、一旦黄泉に帰った
修羅を殺したのは計算外だったがこの際どうでもいい…
いつもヘラヘラして変な奴だった
いや、祈里への復讐には良い相手だ
あのガキ…よくも唯一視える方の右目を殺りやがったな
もう
何も視えはしない
第五層・人間道まで降りた
実母に会う為に
「…おばさん、髪を切ってくれ
自分じゃ切れねぇ」
「…目が、視えないのね?
いいわ、お母さんが切ってあげる」
千年ぶりだろうか
髪を切った、葦原にいた頃の髪型に
あの頃と色は変わっちまったが、葦原にいた頃の俺に戻ろう
「どう?上手くできたかしら…お母さん、貴方が頼ってくれたの初めてだったから凄く嬉しかったのよ」
「…ありがとよ
…母さん」
拒み続けた、その言葉を言ってやると母さんは泣いてた
祈里の泣き虫はあんた譲りなんだな…
「母さん…あんたにとって俺はさぞ忌まわしい存在であっただろう
俺が生まれなきゃ、あんたも親父も死ぬことは無かったんだからよ」
「そんなことないわぁ…貴方達を産んで本当に良かった…可愛い可愛い、あたくしの双子…!
だから不比等、帰ってきてね
お母さん待ってるから、貴方が…もう一度…お母さんって呼んでくれるの」
「…そうか
じゃあ母さんの為にも祈里を黄泉に連れ帰ってきてやるよ
なっ、初めての対面だろ?」
「待って不比等、貴方の為にあたくし名前をずっと考えていたの」
「黄泉比良坂 業魔 それが貴方の名前よ、持っていきなさい」
「…ありがとよ
精々俺が死なねーように祈っててくれ」
きっとお前は死ぬつもりだろう…
お前の寿命はもう僅か
神久夜を殺して共に死ぬつもりだろう…
母さん、ずっと泣いてた
あんたに育てられていたら真っ当な妖怪になれただろう
例え兄妹として育っても俺はあいつに惚れるのだろう、自分でも自信がある
忌み子はお前だ神久夜…
死して贖え
黄泉比良坂を上がる途中で吐血し、倒れそうになった
血を吐くようになった…体にガタが来てやがる
千年も生きたからか、それとも力を使い過ぎたか
急がねぇと俺の命が尽きちまうな…
ユカリ、とかいったかあのガキ
あいつと人生をやり直すのも悪くねぇ
母親は邪魔だ、あいつはもう祈里じゃねぇ…殺してガキを奪おう
祈里…いや神久夜
お前はもう要らない
過去を清算する為に死んでくれ…今度は本気で
あと一歩というところで神久夜は吐血してよろけた
「馬鹿かてめぇは…
一気に力を使い切るからガタが来るんだよ」
「わざと…遊ぶふりして私に使わせたのね…!
どこまで外道なのお前は…!!」
「祈里、結構気に入ってたんだぜ?お前のことはよ…昔は
さよならだ祈里…あの世で修羅と会いな」
二人の妖怪は空中で差し違え、地に堕ちた
不比等は神久夜の心臓を貫いた
神久夜は不比等の腹を貫いた
死が身近に感じられる
こんなにも恐い
こんなにも冷たい
先に息絶えたあいつを手探りで探す
祈里を抱きしめるとまだ温かい
お前は最期まで修羅を選ぶのか
お前にとって俺は何だったのか…取るに足らない男に過ぎないというのか
「なあ祈里…なんか話してくれよ
もう、なんも視えねぇんだ…
側に…ずっといてくれよ」
最期にやっと理解した
俺はこいつが好きだったんだ
ずっと、ずっと昔から
名前をくれたあの日からこいつに惚れていた
もう感覚がねぇ…
「祈里、愛している
生まれ変わってもお前を殺そう…」
不比等の死骸は黄泉の第五層・人間道の黄泉比良坂家の墓に埋葬された
名を黄泉比良坂 業魔として
霊香は二人の我が子の最期を見届けると満足し成仏していった…
第三世代の本当の終わり
ラスボス黄泉比良坂 不比等(よもつひらさか ふひと)との決着です。
不比等目線の独白に近い
狂愛・死要素あり
登場人物は新月神話伝の第三世代
後期のネタバレあり
1000年が経っても怨みは変わることが無かった
ずっと孤独だった
神久夜(かぐや)への憎しみだけ
神久夜へのウラミだけ
ある時あいつは
「結婚するの
もうお前とは会わない
…さようなら、兄上」
じいさんも婆さんももういねぇ
夜刀もいつの間にか死んじまいやがった
神久夜の娘を連れて竹林を歩いた
懐かしい竹の香り
葦原にいた頃を思い出す
「鬼さん、かぐやちゃんの…母様のお兄さんでしょ?
髪の色が一緒」
「かぐやはお前だろ
※祈里(いのり)…懐かしいな
髪の色…俺はあの頃は黒髪だったけどよ」
※神久夜の幼名
「花…好きだろ、やる」
「母様にそんなに似てるの?
嬉しいな…かぐやちゃんに、かぐやちゃんみたいになりたいから」
「かぐやちゃん、あんまり笑わないけど美人だから
笑うと美人だって、父様は母様の笑顔が好きなんだって」
「…祈里はすぐ泣くから葦原一の不細工なんだよ
笑ってりゃまあまあ見れたもんなのにな…」
「鼠さんの皮衣、、随分古いのね私が直して上げる」
懐かしい…親父が纏っていたのはこんなキラキラ光っていた
だから欲しくなった
いや、親父が纏っていたから、欲しかった
あんなクズでも親父は親父だったからな
祈里と瓜二つなのはなかなかウケた
火の色の皮衣を纏う
嘆く思いを…束ねて
「かぐやちゃんが好きなの?」
「さあな」
「だって鬼さん、さっきからずっとかぐやちゃんの話ばかりしてる
かぐやちゃんからお兄さんの話、たまに聞くの
私も髪を結ってげる、じゃあかぐやちゃんの好きな三つ編み」
『いつかお前の婿になる伯父よ
…結婚したら、お前は私の母上にも会えるのよ
寂しいけどいつでも帰ってきなさい
何と言ってもお前は妾の娘よ?』
「…ありがとよ祈里
お前はそういうところ小まめだよな」
「そんな名前じゃないもん紫
紫って書いてユカリだもん」
祈里がよく、勝手に括ってきやがった
…嗚呼、きっと俺はあいつが好きなんだろう
妹として?幼馴染として…女として
双子だなんて、聞きたくなかった
実の兄妹なんて聞きたくなかった
カッとなって親父を殺っちまった
…あんたにはまだ、聞きたいこと色々あったんだけどな…
我に返った
「そうかそうか…そうだったな
お前は修羅と結婚して、ガキができたからもう会わないって…
ならば
ガキを殺せば、また会えるのか
ユカリに振り上げたらもう一人のガキが俺の右目を矢で射抜きやがった
俺は先に怯えるガキを殺そうと、目を押さえて黄泉の黒刀を振り上げたら修羅の奴が庇いやがるから
もう動かない修羅
殺り損ねたあのガキ
眼の痛さに耐えきれず、一旦黄泉に帰った
修羅を殺したのは計算外だったがこの際どうでもいい…
いつもヘラヘラして変な奴だった
いや、祈里への復讐には良い相手だ
あのガキ…よくも唯一視える方の右目を殺りやがったな
もう
何も視えはしない
第五層・人間道まで降りた
実母に会う為に
「…おばさん、髪を切ってくれ
自分じゃ切れねぇ」
「…目が、視えないのね?
いいわ、お母さんが切ってあげる」
千年ぶりだろうか
髪を切った、葦原にいた頃の髪型に
あの頃と色は変わっちまったが、葦原にいた頃の俺に戻ろう
「どう?上手くできたかしら…お母さん、貴方が頼ってくれたの初めてだったから凄く嬉しかったのよ」
「…ありがとよ
…母さん」
拒み続けた、その言葉を言ってやると母さんは泣いてた
祈里の泣き虫はあんた譲りなんだな…
「母さん…あんたにとって俺はさぞ忌まわしい存在であっただろう
俺が生まれなきゃ、あんたも親父も死ぬことは無かったんだからよ」
「そんなことないわぁ…貴方達を産んで本当に良かった…可愛い可愛い、あたくしの双子…!
だから不比等、帰ってきてね
お母さん待ってるから、貴方が…もう一度…お母さんって呼んでくれるの」
「…そうか
じゃあ母さんの為にも祈里を黄泉に連れ帰ってきてやるよ
なっ、初めての対面だろ?」
「待って不比等、貴方の為にあたくし名前をずっと考えていたの」
「黄泉比良坂 業魔 それが貴方の名前よ、持っていきなさい」
「…ありがとよ
精々俺が死なねーように祈っててくれ」
きっとお前は死ぬつもりだろう…
お前の寿命はもう僅か
神久夜を殺して共に死ぬつもりだろう…
母さん、ずっと泣いてた
あんたに育てられていたら真っ当な妖怪になれただろう
例え兄妹として育っても俺はあいつに惚れるのだろう、自分でも自信がある
忌み子はお前だ神久夜…
死して贖え
黄泉比良坂を上がる途中で吐血し、倒れそうになった
血を吐くようになった…体にガタが来てやがる
千年も生きたからか、それとも力を使い過ぎたか
急がねぇと俺の命が尽きちまうな…
ユカリ、とかいったかあのガキ
あいつと人生をやり直すのも悪くねぇ
母親は邪魔だ、あいつはもう祈里じゃねぇ…殺してガキを奪おう
祈里…いや神久夜
お前はもう要らない
過去を清算する為に死んでくれ…今度は本気で
あと一歩というところで神久夜は吐血してよろけた
「馬鹿かてめぇは…
一気に力を使い切るからガタが来るんだよ」
「わざと…遊ぶふりして私に使わせたのね…!
どこまで外道なのお前は…!!」
「祈里、結構気に入ってたんだぜ?お前のことはよ…昔は
さよならだ祈里…あの世で修羅と会いな」
二人の妖怪は空中で差し違え、地に堕ちた
不比等は神久夜の心臓を貫いた
神久夜は不比等の腹を貫いた
死が身近に感じられる
こんなにも恐い
こんなにも冷たい
先に息絶えたあいつを手探りで探す
祈里を抱きしめるとまだ温かい
お前は最期まで修羅を選ぶのか
お前にとって俺は何だったのか…取るに足らない男に過ぎないというのか
「なあ祈里…なんか話してくれよ
もう、なんも視えねぇんだ…
側に…ずっといてくれよ」
最期にやっと理解した
俺はこいつが好きだったんだ
ずっと、ずっと昔から
名前をくれたあの日からこいつに惚れていた
もう感覚がねぇ…
「祈里、愛している
生まれ変わってもお前を殺そう…」
不比等の死骸は黄泉の第五層・人間道の黄泉比良坂家の墓に埋葬された
名を黄泉比良坂 業魔として
霊香は二人の我が子の最期を見届けると満足し成仏していった…
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
【本編完結】記憶をなくしたあなたへ
ブラウン
恋愛
記憶をなくしたあなたへ。
私は誓約書通り、あなたとは会うことはありません。
あなたも誓約書通り私たちを探さないでください。
私には愛し合った記憶があるが、あなたにはないという事実。
もう一度信じることができるのか、愛せるのか。
2人の愛を紡いでいく。
本編は6話完結です。
それ以降は番外編で、カイルやその他の子供たちの状況などを投稿していきます
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる