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過去編 竹取伝
名も無き少年と竹取の娘のお話
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【前書き】
執筆日 2017/08/15
時期的には第二世代後期、第三世代の千年前のお話
葦原では700年代のお話
登場人物は新月神話伝の葦原外伝
※若干竹取物語ベースですが別物です。
遥か昔の葦原でのお話
名も無き少年と彼を拾った少女の話
少年は物心がつく頃からどこか空虚で異質な存在だった
孤児の子らと育ったが誰にも心を開かなかった。
年長のヤトと名乗る青年には弟分として気に入られ、彼からは唯一「弟(おと)」と仮に呼ばれていた。
孤児で貧しい子らは盗みなどで生活し、年長のヤトは生きる為に時に殺しもした、ただ黙ってオトと呼ばれた少年はヤトに付いていく。
「なぜ自分は生きているのか
なぜ親に赤子の時に捨てられたのか」
気味の悪い髪色に鋭い目つきが自分でも気に食わなかった。
この顔が両親は嫌いだったのか、それとも生きていけないくらいに貧しい家だったのだろうか。
少年は何も答えを見いだせないまま今日も空虚に生きていく。
ある日ヤトらが盗みを働いた際に役人に見つかり、逃げ足の速いヤト達は少年を置いて逃げ去り逃げ遅れた少年は役人に捕まってしまった。
「待って
その子は私の従者よ」
役人に殺されかけた際に不意に一人の少女が少年を助けた。
少女の祖父は朝廷でも顔が利く鍛冶師だそうな、少女のわがままに祖父は渋々付き合った
「あなた、変わった髪してるのね…まるで死者の色!
わたし、年の近い従者がほしいの」
気まぐれに少年を拾った少女は祖父と共に邸に帰ることにした。
少女の祖父はなんでも朝廷でも顔が利く鍛冶師だそうな、少女のわがままに祖父は渋々付き合ったが祖父・サヌキという竹取の翁は得体の知らない少年を従者にするのはあまり気が進まないようだ。
「あなた、なまえないの?
従者になった記念にわたしが名付けてあげる!」
三日三晩考えた少女が口に出した名前は不比等(ふひと)という名前だった。
「都ですごくえらいひとのなまえといっしょよ。
『並ぶものはない』って意味ですって!
あなた、わたしをまもるくらいに強くなってね」
少年は初めて自分に名前ができたことが今までで一番嬉しかった、名付けてくれたイノリという少女を仕方がないから守ってやろう。
…しかし数日が立ってヤトが彼を迎えに来た。
「お前の居場所は此処じゃない、俺とお前は実の兄弟じゃないか…!(嘘)」
少年でもわかるあからさまな嘘でお涙頂戴といったところか。
剣で10年上のヤトに一度も勝ったことがなかった少年だが、ヤトが脅しでサヌキに危害を加えようとした際に初めて少年は守るために剣を使った。
たった一撃だったがヤトを諦めさせるのに十分な一太刀。
ヤトは「諦めねぇからなぁ陰険ジジイ…!俺の弟を返してもらうまではぜってぇ諦めねぇから!」
と言い残してお得意の逃げ足で帰っていき、そうして不比等と名付けられた七つの少年は竹取家の従者となった…
時が過ぎ、13歳になったイノリは成人の儀を行い名を「なよ竹のかぐや姫」と名付けてもらったそうだ。
しかし不比等は変わらず彼女をイノリと幼名で呼び続けた…照れくさいのもあったが、不比等の中でイノリに変わらずいてほしかったからである。
不比等とかぐや(祈里)
かぐやに五人の求婚者が現れ、サヌキは大層喜んだがかぐやは頑なに拒み、五つの難題を要求し
ひとまず求婚者達は帰っていった。
「私、大人になりたくないわ。
ずっとおじいちゃんとおばあちゃん…たまに家に来るヤト、そして不比等と一緒にいたい…」
あの日からだろうか、かぐやはあれから三年が経っても体は成長しなかった。
サヌキはかぐやの年齢を偽り、18ではなく14歳と周囲にいつまでも言い張っていたが何の意味があるのだろう。
…心なしか自分も、あの日から体が成長していない気がする。
でもいいや、いつまでもかぐやといれるなら。
かぐやは最近帝と文通してるらしい。
八月が近づくにつれてかぐやが毎晩月を見て泣くようになった。
自分は月の國の者で月の神の娘なのだと、八月十五日の晩に迎えが来るのだと、訳の分からないことを言って泣き出した。
かぐやが人間じゃないのはわかってた、物を浮かしたり消えたりするから誰でも人間じゃないって気づく。
この頃から不比等はかぐやを避けるようになった。
そして運命の日、八月十五日の晩に月からの迎えが来てかぐやは連れ帰られてしまった。
…最後に別れの言葉も何一つ残さないで。
不比等は月の者らが帝に宛てた不死の薬を狙って、不死の山を目指す…
翁と嫗の為に不死の薬を手に入れる為…かぐやにいつかまた会う為に。
執筆日 2017/08/15
時期的には第二世代後期、第三世代の千年前のお話
葦原では700年代のお話
登場人物は新月神話伝の葦原外伝
※若干竹取物語ベースですが別物です。
遥か昔の葦原でのお話
名も無き少年と彼を拾った少女の話
少年は物心がつく頃からどこか空虚で異質な存在だった
孤児の子らと育ったが誰にも心を開かなかった。
年長のヤトと名乗る青年には弟分として気に入られ、彼からは唯一「弟(おと)」と仮に呼ばれていた。
孤児で貧しい子らは盗みなどで生活し、年長のヤトは生きる為に時に殺しもした、ただ黙ってオトと呼ばれた少年はヤトに付いていく。
「なぜ自分は生きているのか
なぜ親に赤子の時に捨てられたのか」
気味の悪い髪色に鋭い目つきが自分でも気に食わなかった。
この顔が両親は嫌いだったのか、それとも生きていけないくらいに貧しい家だったのだろうか。
少年は何も答えを見いだせないまま今日も空虚に生きていく。
ある日ヤトらが盗みを働いた際に役人に見つかり、逃げ足の速いヤト達は少年を置いて逃げ去り逃げ遅れた少年は役人に捕まってしまった。
「待って
その子は私の従者よ」
役人に殺されかけた際に不意に一人の少女が少年を助けた。
少女の祖父は朝廷でも顔が利く鍛冶師だそうな、少女のわがままに祖父は渋々付き合った
「あなた、変わった髪してるのね…まるで死者の色!
わたし、年の近い従者がほしいの」
気まぐれに少年を拾った少女は祖父と共に邸に帰ることにした。
少女の祖父はなんでも朝廷でも顔が利く鍛冶師だそうな、少女のわがままに祖父は渋々付き合ったが祖父・サヌキという竹取の翁は得体の知らない少年を従者にするのはあまり気が進まないようだ。
「あなた、なまえないの?
従者になった記念にわたしが名付けてあげる!」
三日三晩考えた少女が口に出した名前は不比等(ふひと)という名前だった。
「都ですごくえらいひとのなまえといっしょよ。
『並ぶものはない』って意味ですって!
あなた、わたしをまもるくらいに強くなってね」
少年は初めて自分に名前ができたことが今までで一番嬉しかった、名付けてくれたイノリという少女を仕方がないから守ってやろう。
…しかし数日が立ってヤトが彼を迎えに来た。
「お前の居場所は此処じゃない、俺とお前は実の兄弟じゃないか…!(嘘)」
少年でもわかるあからさまな嘘でお涙頂戴といったところか。
剣で10年上のヤトに一度も勝ったことがなかった少年だが、ヤトが脅しでサヌキに危害を加えようとした際に初めて少年は守るために剣を使った。
たった一撃だったがヤトを諦めさせるのに十分な一太刀。
ヤトは「諦めねぇからなぁ陰険ジジイ…!俺の弟を返してもらうまではぜってぇ諦めねぇから!」
と言い残してお得意の逃げ足で帰っていき、そうして不比等と名付けられた七つの少年は竹取家の従者となった…
時が過ぎ、13歳になったイノリは成人の儀を行い名を「なよ竹のかぐや姫」と名付けてもらったそうだ。
しかし不比等は変わらず彼女をイノリと幼名で呼び続けた…照れくさいのもあったが、不比等の中でイノリに変わらずいてほしかったからである。
不比等とかぐや(祈里)
かぐやに五人の求婚者が現れ、サヌキは大層喜んだがかぐやは頑なに拒み、五つの難題を要求し
ひとまず求婚者達は帰っていった。
「私、大人になりたくないわ。
ずっとおじいちゃんとおばあちゃん…たまに家に来るヤト、そして不比等と一緒にいたい…」
あの日からだろうか、かぐやはあれから三年が経っても体は成長しなかった。
サヌキはかぐやの年齢を偽り、18ではなく14歳と周囲にいつまでも言い張っていたが何の意味があるのだろう。
…心なしか自分も、あの日から体が成長していない気がする。
でもいいや、いつまでもかぐやといれるなら。
かぐやは最近帝と文通してるらしい。
八月が近づくにつれてかぐやが毎晩月を見て泣くようになった。
自分は月の國の者で月の神の娘なのだと、八月十五日の晩に迎えが来るのだと、訳の分からないことを言って泣き出した。
かぐやが人間じゃないのはわかってた、物を浮かしたり消えたりするから誰でも人間じゃないって気づく。
この頃から不比等はかぐやを避けるようになった。
そして運命の日、八月十五日の晩に月からの迎えが来てかぐやは連れ帰られてしまった。
…最後に別れの言葉も何一つ残さないで。
不比等は月の者らが帝に宛てた不死の薬を狙って、不死の山を目指す…
翁と嫗の為に不死の薬を手に入れる為…かぐやにいつかまた会う為に。
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