機械少女イヴ

鴉月語り部

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灰色の楽園と恋

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 ワタシは人間によって造られた穢れの無い理想の機械少女イヴ

それはまるで女神ガラテアのよう
詰め込み過ぎた理想は儚く脆く、崩れていく
実体化した夢は必ずしも理想とは限らないのだ

汚れた大都市で醜い大人達によって
大切に大切に育まれた人型のアンドロイド

大人達は汚いけれどワタシと違って感情があるらしい
ワタシは踏まれた花を悲しいとも思わない
人間や動物が死ぬというサイクルも理解できない

ワタシは永遠を生きる悲しい悲しい機械らしい

ワタシを所有した人間はやがて老いて醜く朽ちていく……
そんなワタシを愛してくれた人間すら愚かに思えるけどこの執着は何だろう?

ワタシと人間ごっこをしてくれた彼
彼のお嫁さんにはなれないから
彼の子孫代々まで見届けたわ

「アナタ、彼に似ているのね
昔、同じ事をワタシに言ったわ」

人間は脆い儚い
あーあ、彼らもワタシと同じだったら永遠に一緒なのに

他のアンドロイドは退屈だわ
相性が合わず定期的に殺し合った
ワタシの美しいボディもアイツらのせいで台無し
眼を抉られた時は怖くは無かったけど、不格好だなとワタシの脳でも理解できたわ

研究者達じゃ機械たちの暴走は止められない

最初の彼は寿命が来てワタシが見届けた
次の彼はワタシを破壊しようとして殺された
その次の彼はワタシを庇って死んでいった
その次は……

最後の彼をワタシはいつまでもいつまでも待っている。
貴方が何度でもワタシを修復して見つけてくれるようにワタシも本当の貴方を見つけるわ。

「博士、実験体イヴがまた記憶障害です、初期型のリリスに破壊された時のエラーが直らないようです」

――――機械達は語る
「リリスのボディにイヴの魂を入れました」

「博士アダムはリリスを失敗作としイヴを愛しました
結果、イヴに凶暴性が受け継がれてしまい博士アダムの甥を破壊しました」

「イヴ=リリスは相反する感情と二面性を持っています
アダムを愛しいと思う心
アダムを憎いと思う心
アダムを自分だけのものにしたい心

リリスの側面がイヴにすら彼を取られたくない心がバグを引き起こし悲劇は起こるべくして起こりました」

機械はもう動きません
イヴは鏡に映った自分の心臓を貫き
リリスは鏡に映った顔を切り裂きました

――――答え合わせ
「そうか……楽園計画は失敗に終わったか」

博士アダムの父である機械人間はイヴ=リリスの残骸を息子の墓に入れてやります
息子が最初に愛したのは実妹、その罪に悩んだオリジナル・イヴは肉体の死を選び機械に自分の魂を注ぎ込んだ
正確には機械にはイヴの思考を投影しただけである
機械なら合法的に兄と愛し合えると……

その後のアダムは機械しか愛せない異常者だった
オリジナル・イヴの人間として自然な感情に嫌気がさしたからだ
オリジナル・イヴはアンドロイド・イヴに嫉妬した
そのイヴをリリスと名付けた

情欲と嫉妬の念を強く受け継ぎ過ぎたリリスはアダムから愛されず廃棄された
そして新たにアダムが作ったのがアンドロイド・イヴである

機械に妻であり妹であるオリジナル・イヴ
プロトタイプであるアンドロイド・リリス
完成品であるアンドロイド・イヴ
リリスのボディにアンドロイド・イヴの人格を入れたイヴ=リリス

これは難解で複雑な愛の物語である

エラーを起こしたイヴ=リリスは記憶が混ざっており、時折誤作動を起こすがアダムへの愛だけは決してメモリーから消えることは無い……
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