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第16話 古賀さんとギャル友と商店街3
しおりを挟む「あーってか、マニアショップ行き逃したわ。ちょっと寄ってもいい?」
「え、まあいいけど、、、」
古賀さん達には、RISE送っといたし、大丈夫だろう。
僕達はアニマニイトの中に入った。
「うわー!やっば恋逃げの新刊出てたんだ!あーてか運ネザ、アニメ化してんの!?やば!てか理子の好きなラヴィ隊長のフィギュア売ってんじゃん!いいなぁー」
「あ、あの全然キャラ違くない?」
「は、はぁ!?べ、別に理子はこういう時はいつもテンション上がんだよ!」
「ならいいけど。でもラヴィ隊長が好きなんてセンスいいね」
「だろだろ?アンタもわかるの?」
「うん、追撃の地底人のキャラの中なら一番好きだし」
「なんだお前、良い奴じゃん!ラヴィ隊長好きに悪いやつはいねぇ!」
「というか、なんで僕を悪者だと思ってたんだよ...」
「えーだって、見た目がさあ?なんか見るからに頼りないし、陰湿そうだし普通に、悪いやつに見えた!」
いや間違ってはないんだけどさ、うん。
「てか、アンタ、名前なんだったっけ」
「中森渡だけど」
「ワタルか!そ、そのなんか、さ、最初はい、意地悪言ってごめん。ら、ラヴィ隊長好き同士だし、これからよろしく...」
「よろしく理子さん」
「いや、理子でいいよ。さん付け気持ち悪いから」
「あっ、はい」
「でもさ、ワタル、諒花に少しでも変な事したら、私は容赦しないからそこんとこはよろしくな?」
「あっ、はい...」
このやり取りがあったあと、僕達は完全に打ち解け、アニメ話に花を咲かせた。理子さんは、結構アニメに詳しく、オタクだったのでいい感じの趣味友になれそうだ。
「でも、ワタルも諒花の被害者の1人でもあるのかもね」
マニアショップを出たあとに、理子さんはそう呟いた。
「被害者?」
「諒花、妙に押し付けがましいというか、そういうところがあるだろう?」
「あーたしかに」
「アッハッハ!やっぱりお前も被害受けてたのか!」
「うんまぁ...」
チックタックで急に踊らされたり、映画もほぼ強制的に決められたし、服装もっとオシャレにしてあげるって色んな服買わされたり、全然悪い気はしなかったんだけど。
「でもまぁ、諒花がやっても何故か全然悪い気がしないのが不思議よね」
理子さんは、そう、僕の心を読み取ったかのように言う。
「むしろ、僕にとってはありがたいと言うか」
「そう、理子も、そんな諒花の性格に救われたのよ」
そう言って、彼女は遠い目をして、過去話を始めた。
◇
あれは、一年の頃だった。理子と諒花は、同じクラスで、ちょうど文化祭の時期、理子は実行委員になった。
自分でも理解してた。自分が素直になれない頑固で不器用な性格で、本心ではそう思っていないのに、他人にどうしても強く当たってしまう。
そのせいで、理子の周りの人達は、どんどん距離を置いて、そして理子を嫌っていった。
文化祭の実行委員で、やる気のない生徒に嫌味のように注意してしまう。
やってくれた生徒に対しても、素直に感謝できない。心の底では感謝してるのに。
そんな時、クラスで理子に対しての陰口がよく言われるようになった。
『あの子、調子に乗ってない?何様のつもり?』
『上から目線だし、生意気でウザイよね』
『まじで、居ない方がいいよね』
そんな陰口をたまたま耳にしてしまった理子は、怒りが頂点に達した。
それは自分への怒りもあったと思う。そんなのを陰口を言った子にぶつけてしまって口論になった。その口論は過激化して、相手が掴みかかろうとした時、理子はそれを振りほどこうとして、つい押し倒してしまう形になった。そして最悪なことにその生徒の背中には階段が。
その生徒は、階段から転げ落ち、足の骨を折る重傷を負った。
理子は加害者となってしまった。
もちろん、理子を庇う人は誰もいない。
クラスの全員が勝呂《すぐろ》 理子という人間を嫌いだったのだ。
当然だ。私は嫌われるような態度を取ってきたのだから。全員に嫌われても仕方なかったのだ。
そう思ったのに、彼女だけは、古賀 諒花だけは、違った。
「私、見てました。彼女は故意でやった訳ではありません」
彼女だけは、私を庇ってくれた。
「勝呂さんは、確かに、人当たりが強いけど、文化祭のために裏で、色々みんなのために働いてくれてたんだよ」
彼女はそう言って、私が居残りでずっと他の生徒の分の仕事をやったり、休日も文化祭の準備をしていたりしたことを明かした。
他人なのに、ほとんど喋ったこともない理子のためになぜそこまでましてくれるのか、訳が分からなかった。
「な、なんで、そこまで」
「私、どんな人でも放っておけないそういう性分なの。それに、貴方はクラスの一員なんだし」
「か、変わった人ね」
「それと、勝呂さんを見てると、昔の私を思い出して、親近感が湧いたというか、絶対悪い子じゃないと思ったからね」
「な、何よそれ別に貴方なんかに助けられなくても……」
「その強がりやめたら?」
理子は、彼女の鋭く強い光を放ち、そして優しい目に照らされ、嘘を、見栄を張ることが出来なくなった。
「ありがとう...ありがとう......」
ただ感謝の言葉を、古賀 諒花に繰り返し、溢れる涙を抑えきれず、泣くことしか出来なかった。
彼女は、庇ってくれただけではなく、理子を、みんなと仲良くなれるよう、背中をも押してくれたのだ。
◇
「そんなことがあったんですね」
「うん。諒花のおかげで今の理子があるの。だから感謝してるし、心底尊敬してるし、いちばん大切な友達なの」
「だから絶対!アンタ幸せにしなさいよ!」
「う、うん」
店を出て、古賀さんについて理子さんと語り合っていると、三人が僕たちを見つけた。
「おーいふたりともー!無事で良かった!」
と言って、古賀さんは、駆け寄ってきて僕と理子さんに抱きついた。
「ちょっちょっと古賀さん!?」
「諒花、痛い痛い」
僕と理子さんは抱きつかれてそう声を上げた。
「はぁ、一時はどうなる事かと思ったよ」
「ごめんね、心配させて。でもワタルが見つけてくれてよかったわ」
「まぁたまたまだけどね」
「うーん?なんか、二人仲良くなってない?」
と古賀さんが首を傾げる。
「ほんとだ理子と中森っち!なんか仲良くなってるじゃん!」
「おー、これは諒花もうかうかしてらんないね」
「は、はぁ!?」
「何言ってんの菜々子!?」
「僕と理子は、あくまでアニメ趣味の友達だから!」
「そ、そうなんだ!?ほんとなの?理子」
「そうだよ!もう、菜々子が変な事言うからさ!」
「かー!青春だねー」
と、菜々子さんはそのノリを辞める気は無い。
「「ちょっと菜々子!」」
古賀さんと理子さんは口を揃えた。
菜々子さんは知らんぷりをして、天子さんは笑っていた。
僕は苦笑いだった。
本当に今日は騒がしい一日だった。色々あったけど、古賀さんの知らない一面をギャル友から聞けて、知れたのが良かったし、ギャル友とも仲良くなれた感じがしてよかった。
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