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第3章
025 > ヒート・逆転現象【☆】
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<微BLなお話【☆】苦手な方は飛ばしていただいても大丈夫です.>
「なっ?!」
今、基礎Bクラスの教室には10人もいない。
つい先程放った辰樹のセリフは音量が落とされていたため、他の人間には聞こえていなかったと思われる。だが、他の居残り自習組が辰樹と直次郎に注目していた。
「た、滝川? なに言ってんだ……!」
目を白黒させ、辰樹の異常さを感じた直次郎は一気に挙動不審になる。
辰樹は他の生徒が視線を合わせないよう、だが、明らかにこちらを伺っている気配を感じていた。
自分の匂いが漏れ出ないよう、開けていた学生服の襟元のボタンを全て閉じ、非常時用に携帯していた通気性の悪いダークグレーのネックカバーをリュックから取り出す。それを上から被ると首元を覆い隠して目元だけを出した。
最大限の注意を払い、最小限の声で直次郎に話しかけた。
「……来い」
「滝川っ?!」
直次郎の手首を捕まえて教室の外に連れ出し、左右の廊下を見渡して周囲を伺う。
〝ここではまずい……!〟
「た、滝川、ちょっと待てって!」
辰樹の何らかの非常事態を察した直次郎が異論の声をあげようとすると
「話は後だ……」
右手の人差し指を布越しの口元に当て、静かにするよう抵抗を制した。
平日の金曜日とは言え、受験生が多く残っている5階でコトに及ぶわけにはいかなかい。なぜなら、辰樹専属護衛長の岩清水曰く
『坊のヒートはβでも気づくほどですから、常に注意してください』と言われるくらいだからだ。その理由もわかっている。
〝くそ! 予定では来月のはずだ! なんで今?!〟
今日は10月27日(金)。
予定では、2日後にある『託宣』に備え、明日、明後日は予備校を休むと糸川に連絡済みである。
前回のヒートは8月末──31日(木)──の『託宣』の直後だった。
それから3ヶ月後を予定していたため、次回のヒートは11月28日(月)のはずなのだ。
しかも、次の『託宣』は今度の日曜──10月29日──。
本来であればこんな中途半端な日に来るはずがない。
左手で捕まえている直次郎の右手首から何かが這い上がってくる感覚を感じながら辰樹は
〝こいつのせいだろうな……〟
直次郎の存在を強く感じていた。沈黙したままの辰樹は直次郎を連れてどこかに向かおうとする。
直次郎の方は混乱したまま、ただただ引っ張られ、何も言わない辰樹に引き摺られている。
〝こいつを連れて人気の少ないところに身を潜めて……ヒートを抑える必要がある〟
なら、人気のないところとは──と辰樹は考えていた。
予備校の建物は5階建て。
1階が職員室と各学年のSSクラス。2階は浪人生のクラスが多く、3・4階もこの時期は受験生の居残りで人が多い。中途半端に寒くなってきたこの時期に人間が一番少ない階とは──受験勉強に身が入らない基礎クラスの人間が多くいる5階、つまり今いるフロアだ。
〝ということは……〟
廊下を走る寸前で足速に進んでいく2人の姿は、徐々に人気がなく非常灯のみ明るく点灯している通路を選んでいた。
直次郎の手首を捕まえたまま早足で歩く辰樹に引っ張られる格好の直次郎は、初めて見た辰樹の焦っている様子に驚いていた。
〝この前腕相撲した時、相当腕力あるとは思ってたけど……〟
手首を握り締められている直次郎の抵抗が虚しく感じるほど、辰樹の握力も腕力も並大抵ではなかった。
一言も言わずに自分を引きずっていこうとする辰樹に、直次郎は少し怒りを感じている。
「っなあ! どこ行くつもりだよっ!」
「っるさい! 着いたら話す」
「っこ、っの!」
掴まれた右手から辰樹の左手を解こうとするが、びくともしない。
〝やっべぇって!〟
縺れそうになる足を必死に前に繰り出しながら、直次郎が
「なんなんだよっ!」
最後の抵抗とばかりに廊下に響くような音量で抗議の声をあげる。
「黙ってろ!」
辰樹が向かう先は──この時間帯なら確実に誰もいない──非常階段に隣接する男子トイレだ────
ドッ! という鈍い感触と共に、ガチャっ! と音がした。
男子トイレの3つある個室の1つに連れ込まれた直次郎の背は個室のドアに押し付けられ、辰樹は興奮しているのか走ったせいなのか息が上がっていた。
あまりの豹変ぶりに一瞬、本人かどうか怪しんだ直次郎は
「た、滝川っ、だよな?!」
思わず変な質問をぶつける。
非常階段を使うのは予備校に通う生徒の中でも少数で、あまりの治安の悪さと不衛生さと強烈な匂いゆえ、大多数の人間は近づかない。だからこそ、素行の悪い男連中の絶好の溜まり場でもある。
その据えた匂いは異臭一歩手前だが、この時の辰樹にはそれすら些事だった。
「っおい! 滝川っ!?」
薄暗い男子トイレは、廊下から漏れる5本に1本しか点灯していないジリジリパチパチと音がする今にも消えそうな電灯の明かりと、それとは対照的にトイレの奥にある明るい非常灯のみ。
当然のことながら連れ込まれたトイレの個室内を照らす明かりはなく、直次郎は薄暗い中で辰樹の顔色を伺う。
辰樹は、鍵をかけたドアに両肘をつき両腕の間に閉じ込めた直次郎の顔面に上気した顔を向ける。
「滝川?」
直次郎の不信感が最高潮に達したところで、ようやく辰樹が直次郎と視線を合わせた。
〝やっぱり……よく、見える……〟
ゆっくりと口元を覆っていたネックカバーを下ろすと、とろけるような視線で直次郎を見下ろす。
「っは……北野……できること、してくれるんだろ?」
「へっ?!」
驚いた表情で辰樹を見上げる直次郎は、一瞬、何を言われたのかわからない。
「……これ、だ……」
辰樹の大きな手のひらが直次郎の股間にあるブツに触れた。
「っひゃぅっ?!」
「これ……入れろ……」
「っえ?! って、お、おいっ!」
情報量が多くてパンクしそうになっている直次郎とは対照的に、辰樹は自分の中にあるものを自覚して直次郎を引き摺ってきた自覚があった。
〝あぁ……こういうことか……〟
ヒートの時、薄れる記憶で女を抱いている自分の存在は知っていた。
だが、こうやってあろうことか、男を拐かそうと思ったことは一度たりとてない。つまり──
〝そういう、ことだ……〟
「ちょ、っと待て! お、お前! ヒートなのか?!」
今頃気づき、明らかに狼狽している直次郎を見ていた辰樹は
〝食いたい……〟
自分の内から湧き出してくる衝動に唇を噛みちぎりたくなるくらい苦しくなる。
直次郎の左の耳元に唇を寄せ
「……そうだ……見て、わかるだろ……」
ふっ、と呼気を吹きかけた。
不本意ながら鍵を閉められた個室の扉に背を押し付けられ、正面からは自分より大きな辰樹に迫られている直次郎は混乱していた。
「お、前っ! あんとき、『人違い』だって、言っただろぅがッ!」
「……そうだな……でも……」
すりっ、と直次郎のものの先端部を擦ると
「ぅひゃっ!」
新鮮な反応を返した。
その反応を見て、熱く痺れる後孔と背筋を這い上がってくる何かを感じた辰樹が
「初めて、なんだろ……?」
「っから! った、きがわっっ!」
直次郎が抵抗する手足の力すら、甘い快楽をもたらすのに気づく。
本来なら、か弱いΩが屈強なαに組み敷かれる図なのが常だが──この2人の身長差と性格から、その逆転現象は必然の理に見えた。
「やってやるよ……直次郎、お前の童貞は俺がもらう……」
「っぅう、そだろっ!?」
※次話はR18Ero【★】=物理描写アリ……は現在非公開中です……申し訳ありません……
「なっ?!」
今、基礎Bクラスの教室には10人もいない。
つい先程放った辰樹のセリフは音量が落とされていたため、他の人間には聞こえていなかったと思われる。だが、他の居残り自習組が辰樹と直次郎に注目していた。
「た、滝川? なに言ってんだ……!」
目を白黒させ、辰樹の異常さを感じた直次郎は一気に挙動不審になる。
辰樹は他の生徒が視線を合わせないよう、だが、明らかにこちらを伺っている気配を感じていた。
自分の匂いが漏れ出ないよう、開けていた学生服の襟元のボタンを全て閉じ、非常時用に携帯していた通気性の悪いダークグレーのネックカバーをリュックから取り出す。それを上から被ると首元を覆い隠して目元だけを出した。
最大限の注意を払い、最小限の声で直次郎に話しかけた。
「……来い」
「滝川っ?!」
直次郎の手首を捕まえて教室の外に連れ出し、左右の廊下を見渡して周囲を伺う。
〝ここではまずい……!〟
「た、滝川、ちょっと待てって!」
辰樹の何らかの非常事態を察した直次郎が異論の声をあげようとすると
「話は後だ……」
右手の人差し指を布越しの口元に当て、静かにするよう抵抗を制した。
平日の金曜日とは言え、受験生が多く残っている5階でコトに及ぶわけにはいかなかい。なぜなら、辰樹専属護衛長の岩清水曰く
『坊のヒートはβでも気づくほどですから、常に注意してください』と言われるくらいだからだ。その理由もわかっている。
〝くそ! 予定では来月のはずだ! なんで今?!〟
今日は10月27日(金)。
予定では、2日後にある『託宣』に備え、明日、明後日は予備校を休むと糸川に連絡済みである。
前回のヒートは8月末──31日(木)──の『託宣』の直後だった。
それから3ヶ月後を予定していたため、次回のヒートは11月28日(月)のはずなのだ。
しかも、次の『託宣』は今度の日曜──10月29日──。
本来であればこんな中途半端な日に来るはずがない。
左手で捕まえている直次郎の右手首から何かが這い上がってくる感覚を感じながら辰樹は
〝こいつのせいだろうな……〟
直次郎の存在を強く感じていた。沈黙したままの辰樹は直次郎を連れてどこかに向かおうとする。
直次郎の方は混乱したまま、ただただ引っ張られ、何も言わない辰樹に引き摺られている。
〝こいつを連れて人気の少ないところに身を潜めて……ヒートを抑える必要がある〟
なら、人気のないところとは──と辰樹は考えていた。
予備校の建物は5階建て。
1階が職員室と各学年のSSクラス。2階は浪人生のクラスが多く、3・4階もこの時期は受験生の居残りで人が多い。中途半端に寒くなってきたこの時期に人間が一番少ない階とは──受験勉強に身が入らない基礎クラスの人間が多くいる5階、つまり今いるフロアだ。
〝ということは……〟
廊下を走る寸前で足速に進んでいく2人の姿は、徐々に人気がなく非常灯のみ明るく点灯している通路を選んでいた。
直次郎の手首を捕まえたまま早足で歩く辰樹に引っ張られる格好の直次郎は、初めて見た辰樹の焦っている様子に驚いていた。
〝この前腕相撲した時、相当腕力あるとは思ってたけど……〟
手首を握り締められている直次郎の抵抗が虚しく感じるほど、辰樹の握力も腕力も並大抵ではなかった。
一言も言わずに自分を引きずっていこうとする辰樹に、直次郎は少し怒りを感じている。
「っなあ! どこ行くつもりだよっ!」
「っるさい! 着いたら話す」
「っこ、っの!」
掴まれた右手から辰樹の左手を解こうとするが、びくともしない。
〝やっべぇって!〟
縺れそうになる足を必死に前に繰り出しながら、直次郎が
「なんなんだよっ!」
最後の抵抗とばかりに廊下に響くような音量で抗議の声をあげる。
「黙ってろ!」
辰樹が向かう先は──この時間帯なら確実に誰もいない──非常階段に隣接する男子トイレだ────
ドッ! という鈍い感触と共に、ガチャっ! と音がした。
男子トイレの3つある個室の1つに連れ込まれた直次郎の背は個室のドアに押し付けられ、辰樹は興奮しているのか走ったせいなのか息が上がっていた。
あまりの豹変ぶりに一瞬、本人かどうか怪しんだ直次郎は
「た、滝川っ、だよな?!」
思わず変な質問をぶつける。
非常階段を使うのは予備校に通う生徒の中でも少数で、あまりの治安の悪さと不衛生さと強烈な匂いゆえ、大多数の人間は近づかない。だからこそ、素行の悪い男連中の絶好の溜まり場でもある。
その据えた匂いは異臭一歩手前だが、この時の辰樹にはそれすら些事だった。
「っおい! 滝川っ!?」
薄暗い男子トイレは、廊下から漏れる5本に1本しか点灯していないジリジリパチパチと音がする今にも消えそうな電灯の明かりと、それとは対照的にトイレの奥にある明るい非常灯のみ。
当然のことながら連れ込まれたトイレの個室内を照らす明かりはなく、直次郎は薄暗い中で辰樹の顔色を伺う。
辰樹は、鍵をかけたドアに両肘をつき両腕の間に閉じ込めた直次郎の顔面に上気した顔を向ける。
「滝川?」
直次郎の不信感が最高潮に達したところで、ようやく辰樹が直次郎と視線を合わせた。
〝やっぱり……よく、見える……〟
ゆっくりと口元を覆っていたネックカバーを下ろすと、とろけるような視線で直次郎を見下ろす。
「っは……北野……できること、してくれるんだろ?」
「へっ?!」
驚いた表情で辰樹を見上げる直次郎は、一瞬、何を言われたのかわからない。
「……これ、だ……」
辰樹の大きな手のひらが直次郎の股間にあるブツに触れた。
「っひゃぅっ?!」
「これ……入れろ……」
「っえ?! って、お、おいっ!」
情報量が多くてパンクしそうになっている直次郎とは対照的に、辰樹は自分の中にあるものを自覚して直次郎を引き摺ってきた自覚があった。
〝あぁ……こういうことか……〟
ヒートの時、薄れる記憶で女を抱いている自分の存在は知っていた。
だが、こうやってあろうことか、男を拐かそうと思ったことは一度たりとてない。つまり──
〝そういう、ことだ……〟
「ちょ、っと待て! お、お前! ヒートなのか?!」
今頃気づき、明らかに狼狽している直次郎を見ていた辰樹は
〝食いたい……〟
自分の内から湧き出してくる衝動に唇を噛みちぎりたくなるくらい苦しくなる。
直次郎の左の耳元に唇を寄せ
「……そうだ……見て、わかるだろ……」
ふっ、と呼気を吹きかけた。
不本意ながら鍵を閉められた個室の扉に背を押し付けられ、正面からは自分より大きな辰樹に迫られている直次郎は混乱していた。
「お、前っ! あんとき、『人違い』だって、言っただろぅがッ!」
「……そうだな……でも……」
すりっ、と直次郎のものの先端部を擦ると
「ぅひゃっ!」
新鮮な反応を返した。
その反応を見て、熱く痺れる後孔と背筋を這い上がってくる何かを感じた辰樹が
「初めて、なんだろ……?」
「っから! った、きがわっっ!」
直次郎が抵抗する手足の力すら、甘い快楽をもたらすのに気づく。
本来なら、か弱いΩが屈強なαに組み敷かれる図なのが常だが──この2人の身長差と性格から、その逆転現象は必然の理に見えた。
「やってやるよ……直次郎、お前の童貞は俺がもらう……」
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