君知るや 〜 最強のΩと出会ったβの因果律 〜

有島

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第3章

023 > 受験までのカウントダウン

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 1週間休んだ後の滝川は通常通り予備校に来るようになったけど、雰囲気が変わってた。

〝なんつうか……なんだ?〟

 なんて言えばいいのかわからん。とにかくびみょうな空気がただよってる。

 入校してから休むことなんかなかったのになんでいきなり1週間も休んだのか聞いたら「体調不良。問題ない」としか言わなかったから、それ以上聞くな、っつうことだろう。

 まぁ、別に問題ないんだったらそれはそれでいい。





 そうやって過ごしてるうちに9月も終わり、10月に入った。



 学校ではツツがなく過ごしてるおれでも、さすがに周囲がピリピリし始めてきたのがわかる。
 ああ、本番近づいて来てるよな~ってよ。

 今まで、9時までだった授業も1時間早めに終わり、全体授業は8時には終了する。予備校の建物自体は12時まで開いてるから、それまで各自で自習するのもいいし常勤講師への質問し放題だし、って状況に変わってる。

 受験本番て──1月の、2週目だっけ? 

〝はぁ~……もう100日切っちゃってさぁ……カウントダウン始まってるしよぉ……〟

 学校はそうでもないけど、予備校に来るとユウウツになる。それもこれも、今月から進路シドウが月に1回から月2回になって、正直おれはもうめんどうくさくて受験から逃げたくなってきてた。

〝あ~……こんなめんどくさいって知ってたら受験しなかったのになぁ……成績はちょっと上がってきたけどよ、このままだったら結局E判定止まりだしなぁ……は~、どうしよ……〟

 SSクラス並の滝川の成績はともかくとして、幸太ですらおれのユウウツさを知らない。なんだかんだ言ってヨウリョウがいい幸太はこの基礎Bクラス内なら成績はトップ3に入る。
 もちろん1位は滝川。あいつはSSクラスの講師からのお呼ばれもあるし、行った方がいいって糸川に何度も説得されてるみたいだけど「このクラスのままでいい」って言って聞かないらしい。

 ま、おれも今では単元テストのたびにお世話になってるから? 滝川がクラス変わるのはちょっと勘弁してほしいなぁ、と思ってる。

〝同じクラスじゃないと気軽に頼めなくなるしよ〟

 我ながら打算的だとは思うけどよ、しょうがないじゃん? だってあいつが言ったんだぜ?

『どうせ帰ってもやることないしな』つってよ。

 結局、10月に入ってからは授業の後、1時間とか2時間とか、予備校から出された課題を手伝ってもらってる。
 ちなみに今日もそう。今からなう。

「今日、夕飯、どうする?」

 幸太に話しかけられた。

 そうそう、10月以降、おれと幸太と滝川は一緒に居残り自習するようになった。授業が終わったらとりあえず3人で腹ごしらえをしてから、課題や自習をするわけだ。

 話しかけられて一瞬おれは考える。

〝昨夜はそこのコンビニのカップラーメンだったしなぁ……〟

 すると辰樹が

「そういえば、近くの喫茶店でインドカレー食べられるって聞いたぞ」
「え? まじ? 行ったことねぇ」

 おれがそう言うと滝川が片方の眉を上げて、行くか? って合図を送る。無駄にイケメンのくせに無表情に近い滝川の表情を読み取れるようになったおれ、かなりすごくね?

 すると幸太が

「あー、オレ、それ食ったことある。おいしかったよ、そういや」

 意外な返事をしたので、予備校の近くでおれたちとは別に食事を一緒にする奴がいるとは、と思ったおれは幸太に聞いた。

「え? 誰と?」
「ん? ん~……ま、そんなことどうでもいいじゃん」

 なんかはぐらかされた。
 このとき、滝川がニヤリと笑ったのをおれは見逃さなかった。

「滝川、なにか知ってんの?」
「なにが?」

 滝川にわからないフリをされた。

〝これは、まさか……〟

 直感したおれは幸太に真剣なナマコを向ける。

「まさか……こうた、きさま……」
「え、えへへへ……」

 にこにこを通り越して、にやけヅラに変わった幸太のブレザーのえりをおれはガッと捕まえた。

「マジか?! マジで?! おまっ! あと100日ないのに?!」
「だってさぁ。向こうから来たら、断る理由ないじゃん」

「ぬぁ~~~~にぃ~~~~?!?!」

 ニヤニヤしてる幸太が──いつもなら、口が軽いことを除けば気の良いやつだと思っていた幸太が──

「こ、こうたが……」

 ショウゲキの事実を知ったおれは幸太のえりから手を放すと、力なくその場にクズれ落ちた……

 正直に言おう。
 幸太はおれよりもチビだし、おれとそんなに顔のつくりは変わらんと思う。なのになぜっ!

「幸太ですら! 彼女できるのに! おれには! なんでできないんだ~~~ッッ!!」

 天に向かって叫んでしまうのも仕方ないだろう?!

 おれは勢いよく幸太に向き合った。

「おれたちはッ! あと100日もしないうちに受験戦争の戦地に送り込まれるっ! 受験戦士なんだぞ?! そんなことで浮かれてていいのかっ?! いや、よくないっっ!!」
「……なんだよぉ、友達なら祝福するもんじゃないの?」

「くっ! きっさま! 彼女持ちの受験戦士はもう戦線をリダツしたも同然だ! おれは貴様とは違う!」

 くやしさのあまり、ダダをこねるおれ。

 だって、おかしいだろっ?!
 この3人なら彼女ができる順番としては、滝川が最初で、その次におれで、幸太は最後のはずだ!

 絶対におかしいっっ!!
 神さまが! 順番をマチガえたにちがいないんだ~~~っっっ!!




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