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第1章
004 > もう一つの性
しおりを挟むところでな────
あ~……辰樹が言ってた、そのオメガ(Ω)ってのはあれだ、こう、もう一つの性ってやつだ。
今は男と女っちゅう生物学的な性と、「もう一つの性」ってのがある。
α(アルファ)・β(ベータ)・Ω(オメガ)っていう3つの性別がそれだ。
たしか……人口的にはΩが一番少ないんだったかな。
このΩってのが一番特殊で、男女問わず妊娠可能な身体を持っているらしい。
あと、Ωの男は中セイ的な美少女のような風貌で、女だったら相当な美女、と相場が決まってる。
──ちょっと説明的な話、デンブンだっけ? 「らしい」とか言っちゃうけど、とにかく、そーゆー感じなのは勘弁な。当事者じゃないから、おれもよくわかってないんだよな。
なんか、100年前くらいだったかな? 発見されたんだと。
んでもって、このΩは定期的──人によっては毎月とか年に1回とか、そのあたりはバラバラ──に「発情」ってのがあるんだって。
【ヒート】って言われてる、これは。
【ヒート】がΩに起こると、αとβを性的に誘惑するんだと。
んで、その状態の時は、人間的な生活が厳しい。外を出歩けないし、状況? 状態? によってはずっと寝たきりになる人もいるらしい。
んーー。まぁこの正直、ちょい迷惑な習性? 特性? で社会的弱者になっちまってる、ってのはよく聞く。
一方のαってのは、Ωに次いで人口が少ないらしい。つっても、なんかここ10年くらいで急に増えてるって話。ようわからんけど。
で、このαの方はΩの【ヒート】に反応して強制的に「発情」──こっちは【ラット】って言う──することがあるらしい。
けど、「αは遺伝子がすごい!」「優勝!」って言われてて、能力的にも社会的にもレベル高い人が多い。
んでもって、αとΩは発情してるときの性交で「番(つがい)」っつう特別な関係になることができてさ。そうすると互いにしか発情しなくなってその後の生活は比較的楽になるんだと。
で。
この、αとΩ、出会っただけで本能的に強烈に惹かれ合う【運命の番】ってのもあるって聞く。けどさ──
まぁ、正直、おれには関係ないわけよ。
なんつったって、天下無敵のβさまだから。おれは。
今の話だと、βって普通ってことなんだろ? お前パンピーなんだろ? って思うだろ?
ふっふっふっ。それは違う。
いいか、よく聞け。
この説明をおれなりに……こういうの、なんつうんだっけ? ホン訳? カイ尺? とにかく、そうするとだよ。
αが優秀だの、Ωは男でも子供が産めるだの、そんなこととは全っ然関係ないところにいるんだよ! βはね!
発情の【ヒート】だとか【ラット】だとかに振り回されずに済むってこった!!
まあ、たまに強烈な【ヒート】に「βも当てられる」ってのは聞いたことがあるけどな。
おれは、ない!
めっちゃすごい! おれ!!
だから、天下無敵ってこった。な? そんなのに振り回される心配がないってのが一番じゃね~か。
おれはおれの石で好きな相手を好きになる。
ニオイとかそんなん関係ねぇ!
β最強じゃん! って、は・な・し!ってこった。
──って思ってたのにヨォ……
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