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Chapter17 - Side:Other - F

249 > 佐藤の家ー08(興奮冷めやらぬ…)☆

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[Side:Other]



 初めての体験だからか、佐藤の興奮が治まるのに若干時間がかかったため

「お……俺、ちょっと……」

 汐見に配慮した佐藤が1人でトイレにこもった。

〝そういや、こいつ最近トイレ近かったな……って、そういうことか!〟

 またしてもようやく気づくことになってしまった佐藤の事情に赤面する。

〝それにしても……〟

 事が終わって、ホッとするものの汐見は新たな不安を思い出していた。

〝……やった……は、いいが……そもそも、佐藤は、その……プロポーズ……してきたよ、な……〟

 不安ではあるものの、その言葉を思い出した汐見がまた新たに赤面する。
 佐藤は7年片想いしていたと言っていた。それはつまり、その時間の分だけ佐藤の気持ちは重く熱いというわけだ。さらには

〝……結婚しても諦められなかったって……〟

 親友だと思っていた自分と違い、佐藤は汐見の人生のパートナーとしてそばにいたいと言い募る。
 その答えを今すぐ出せと言われたら

〝そ、れは……無理、だろう……〟

 自分の中にある佐藤への気持ちをようやく認めることができた。
 佐藤の気持ちも、かなり即物的ではあったが確認する方法としては間違ってなかったと思う。

〝……本気じゃなければ、異性愛者の男が……男相手には勃たない、だろう……〟

 そう思ったから、佐藤をけしかけたのだ。
 自分は佐藤には勃たない。それなら男役はできないと思ったから佐藤にその立場を譲っただけで。

〝男同士って……まぁ本来なら男役も女役もないんじゃないか? 多分……〟

 その辺りの短絡的かつロジカルな思考は汐見の利点であり欠点でもあった。
 その理論を聞けば佐藤は「俺以外の男に気を許したりするなよ!」と憤慨したに違いない。

 だが、改めて考えてみると

〝紗妃と会う前から佐藤への気持ちはあった……と、思う……〟

 なぜなら佐藤が外見のことでトラブルを抱えるたびに "女だったらよかったのに" と思っていた自分がいたからだ。女だったら、に続く言葉に「オレが……」という言葉を頭で紡ぎ出す前に、その考えは一瞬で消去されていたので。それにこうも思うのだ。

〝女だったら……きっと、こんなに打ち解けてはいなかったんだろうけどな……〟

 佐藤の、モテすぎるその外見やそれをいとう気持ちは正直よくわからない。自分が外見で苦労してこなかったため、仕方ない。
 だが、そこから180度反対方向に向かってここまでモテるイケメンが、男相手に、しかも強面の親友に片想いしてるなんて誰が思いつくのだという話で。

〝まぁ、だから余計に……信じられなかったんだが……〟

 汐見が非常識だと思い込んで踏み出せなかった性的嗜好を乗り越えてきた佐藤が、汐見の手を取りにきた。
 一方、佐藤が、非常識で普通なら受け入れてもらえないだろうと思っていることを汐見は────

「お互い、言葉が足りないな……」

 思ってることの半分も言葉にできないのに、ましてや言葉にしていないものが伝わるわけがない。
 実際に常日頃そう考えているのに、ちゃんと佐藤に伝えてなかったことに気づき、そして、自分もたくさんのものを伝えきれずにいることを知って。

〝たしかに……やり直す……必要がある……オレも……〟

 汐見は紗妃の言葉を反芻しながら、佐藤を待っていると

「す、すまん……その……」

 赤面しながらトイレから出てきた佐藤を、既に上下の服を着た汐見が寝室で迎えた。

「今夜は語り尽くそう。お互いに……」
「え……」

「まだ……全部は話せない。けど、お前がオレのそばにいたいと思うなら」
「汐見!」

〝オレとともに未来を築きたいと願うなら〟

 それに応えたいと汐見は思った。

 そして佐藤も

〝汐見が抱えているものを……全部じゃなくていい。俺をお前の隣にいさせてくれるだけで……〟

 願う未来は、お互いの幸せ。

 その形はおそらく2人とも同じものではない。
 だが、重なり合う部分はきっと大きく、厚い。

〝俺を選んでくれた汐見に……〟

〝オレが好きだといったお前に……〟







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