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Chapter10 - Side:EachOther - D
150 > 佐藤のエゴ (Side:Sugar)
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【Side:Sugar】
俺自身が、俺の想いを否定したら────
〝これまでに築いてきた、汐見との友情、絆、その全部を否定することに……〟
そんなこと、できるわけがない────
俺は、俺と汐見との今の関係を、維持したかっただけだ。
もう少しだけ、汐見に俺が必要だと思って欲しかっただけだ。
〝俺のことを、もっと頼って欲しいと……〟
もっと時間をかけて、もっとゆっくり染み込むように、俺の気持ちをお前に写したかった。
ただ、それだけなのに。
「……佐藤。お前が、何を思ってこれを撮ったのか、聞きたいんだ」
「そ、れ、は……」
動揺で視界が歪む。こんなにも緊張して、緊張のあまり吐き気まで催しそうになるのは初めてだ。
いやだ、いやだ、答えたくない。
本音を言って、お前に気持ち悪がられたくない。
お前に拒絶されたら俺はどうしたらいいのかわからない。
お前に嫌われたら俺はきっと存在ごと消し飛んでしまう。
そんなこと聞かないでくれ。
俺が本音で答えたらお前はきっと、俺を切り捨てるんじゃないか?
俺の7年を丸ごと……
ゆっくりとため息を吐き出した汐見は一瞬俯いて、そしてまた視線を合わせた。
「佐藤」
「……」
「お前が言わないなら、オレは返事のしようがない」
「!!!」
〝返事? ……怖い……いやだ……聞きたくない……!〟
でももう耐えられない。
これ以上、黙っておくことはできない。
だけど、
〝怖い……お前に拒絶されたら、俺は……〟
汐見は、遠い目をしてどこかを見つめている。
焦点が合っていない。
その横顔すらも俺の心を焦す。
〝こんな……ことで……〟
前を見ていた汐見が、ゆっくり横を向いて俺を見据える。
「佐藤。……お前のその感情は『刷り込み』だ」
「?!」
〝な、なんで……〟
「お前が弱ってる時に、オレが一番最初に寄り添ったから……お前の相談を聞いたのがオレじゃなければ……お前の気持ちはそいつに向いたと思う」
「そんなこと……!」
〝違う! 汐見だから! 汐見だったから!〟
「だから、さ…………お前……同性愛者じゃない、だろ?」
「……!」
「……ちょっと勘違いしてるだけだ。……オレがずっと近くにいるから」
「違う!」
思わず叫んでしまった俺の声に、汐見は目を瞠っていた。
「……俺だって……! 悩んだ…………」
「……」
「勘違いなんて言うな……お前が、言わないでくれ……」
「……」
俺のこの想いを否定しないでくれ。
俺がどれくらい長いことお前に片想いしてるなんて、お前は知らないかもしれない。
だけど、俺の心は俺のものだ。
お前に焦がれる俺の気持ちをお前自身が否定しないでくれ。
「俺は……汐見、聞いてくれ、俺は……」
「……」
じっと見つめてくる汐見の視線が俺に突き刺さる。
これ以上隠しておくのはもう無理だ。
どういう経由で拾ったのか知らないけど、汐見はあの写真を見て、俺の気持ちに気づいてしまった。
〝これ以上、誤魔化せない……もう誤魔化したくない……でも、勘違いだ、なんて……お前は……俺に答えてくれるわけじゃないのか?〟
汐見を見ていると決心が鈍る。
好きで好きでどうしようもないくらい汐見が欲しくて、でも嫌われたくなくて。
気安く触れることすらできないのに。
〝こんな時に……こんなタイミングでお前に告白するなんて……〟
今の汐見の状況は複雑すぎる。
こんな状況で俺の気持ちを知ったらお前はもっと混乱するだけじゃないのか?
汐見にとっては最悪なタイミングじゃないのか?
でも、このタイミングを逃したら俺は……もう二度と汐見に言えないまま全て終わりそうな気がする。
〝汐見は俺を……どう思ってるんだ……〟
親友だと思ってくれてはいるだろう。
だけどそれ以上の関係を望んでいるとは思えない。
俺と同じ気持ちでいてくれるわけじゃないのもわかっている。
これは俺のエゴだ。
俺が想うのと同じくらいの熱量でお前から返して欲しいと思うのは。
そんなことはあり得ないとわかっている。わかっていても───
〝お前に告げないまま……このままお前がどこかに行ってしまったら……〟
それこそ、後悔するだろう。あの、池宮弁護士のように……
走馬灯のように一瞬でさまざまな想いが駆け巡ったが、俺はそれら全てを振り払うように言った。
「好きだ、汐見……お前が、好きなんだ……」
俺自身が、俺の想いを否定したら────
〝これまでに築いてきた、汐見との友情、絆、その全部を否定することに……〟
そんなこと、できるわけがない────
俺は、俺と汐見との今の関係を、維持したかっただけだ。
もう少しだけ、汐見に俺が必要だと思って欲しかっただけだ。
〝俺のことを、もっと頼って欲しいと……〟
もっと時間をかけて、もっとゆっくり染み込むように、俺の気持ちをお前に写したかった。
ただ、それだけなのに。
「……佐藤。お前が、何を思ってこれを撮ったのか、聞きたいんだ」
「そ、れ、は……」
動揺で視界が歪む。こんなにも緊張して、緊張のあまり吐き気まで催しそうになるのは初めてだ。
いやだ、いやだ、答えたくない。
本音を言って、お前に気持ち悪がられたくない。
お前に拒絶されたら俺はどうしたらいいのかわからない。
お前に嫌われたら俺はきっと存在ごと消し飛んでしまう。
そんなこと聞かないでくれ。
俺が本音で答えたらお前はきっと、俺を切り捨てるんじゃないか?
俺の7年を丸ごと……
ゆっくりとため息を吐き出した汐見は一瞬俯いて、そしてまた視線を合わせた。
「佐藤」
「……」
「お前が言わないなら、オレは返事のしようがない」
「!!!」
〝返事? ……怖い……いやだ……聞きたくない……!〟
でももう耐えられない。
これ以上、黙っておくことはできない。
だけど、
〝怖い……お前に拒絶されたら、俺は……〟
汐見は、遠い目をしてどこかを見つめている。
焦点が合っていない。
その横顔すらも俺の心を焦す。
〝こんな……ことで……〟
前を見ていた汐見が、ゆっくり横を向いて俺を見据える。
「佐藤。……お前のその感情は『刷り込み』だ」
「?!」
〝な、なんで……〟
「お前が弱ってる時に、オレが一番最初に寄り添ったから……お前の相談を聞いたのがオレじゃなければ……お前の気持ちはそいつに向いたと思う」
「そんなこと……!」
〝違う! 汐見だから! 汐見だったから!〟
「だから、さ…………お前……同性愛者じゃない、だろ?」
「……!」
「……ちょっと勘違いしてるだけだ。……オレがずっと近くにいるから」
「違う!」
思わず叫んでしまった俺の声に、汐見は目を瞠っていた。
「……俺だって……! 悩んだ…………」
「……」
「勘違いなんて言うな……お前が、言わないでくれ……」
「……」
俺のこの想いを否定しないでくれ。
俺がどれくらい長いことお前に片想いしてるなんて、お前は知らないかもしれない。
だけど、俺の心は俺のものだ。
お前に焦がれる俺の気持ちをお前自身が否定しないでくれ。
「俺は……汐見、聞いてくれ、俺は……」
「……」
じっと見つめてくる汐見の視線が俺に突き刺さる。
これ以上隠しておくのはもう無理だ。
どういう経由で拾ったのか知らないけど、汐見はあの写真を見て、俺の気持ちに気づいてしまった。
〝これ以上、誤魔化せない……もう誤魔化したくない……でも、勘違いだ、なんて……お前は……俺に答えてくれるわけじゃないのか?〟
汐見を見ていると決心が鈍る。
好きで好きでどうしようもないくらい汐見が欲しくて、でも嫌われたくなくて。
気安く触れることすらできないのに。
〝こんな時に……こんなタイミングでお前に告白するなんて……〟
今の汐見の状況は複雑すぎる。
こんな状況で俺の気持ちを知ったらお前はもっと混乱するだけじゃないのか?
汐見にとっては最悪なタイミングじゃないのか?
でも、このタイミングを逃したら俺は……もう二度と汐見に言えないまま全て終わりそうな気がする。
〝汐見は俺を……どう思ってるんだ……〟
親友だと思ってくれてはいるだろう。
だけどそれ以上の関係を望んでいるとは思えない。
俺と同じ気持ちでいてくれるわけじゃないのもわかっている。
これは俺のエゴだ。
俺が想うのと同じくらいの熱量でお前から返して欲しいと思うのは。
そんなことはあり得ないとわかっている。わかっていても───
〝お前に告げないまま……このままお前がどこかに行ってしまったら……〟
それこそ、後悔するだろう。あの、池宮弁護士のように……
走馬灯のように一瞬でさまざまな想いが駆け巡ったが、俺はそれら全てを振り払うように言った。
「好きだ、汐見……お前が、好きなんだ……」
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