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Chapter08 - Side:EachOther - C
108 > 佐藤宅 ー04〜 波打ち際の小人 (Side:Sugar)
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【Side:Sugar】
リビングで適当に朝食を取った俺は、重い腰をあげてぐちゃぐちゃになったあの部屋に行った。
「あ~……こりゃまた派手にやったな、俺……」
【あの時】も片付けるのに骨が折れるほどだったけど、今回も結構ひどい。
「とりあえず……鏡の破片から先だな……」
寝入る直前に、姿見にスマホを投げつけた……のはぼんやりとだけど覚えてる。
……美形だイケメンだとか見た目だけ他の人間にもてはやされたって、汐見が俺のことを恋愛対象に見てくれないなら意味がない。こんな姿……逆にそうじゃなければ汐見は見てくれたかな……俺が美形でもなんでもなく普通のそこら辺にいるような男なら……
〝男って時点でダメなんだもんな。無理だよな……〟
色々考えたところで汐見が俺をそういう目で見てくれる可能性はゼロだ。
どう足掻いたって……男って時点で、俺が汐見と恋人同士になる可能性は……
「あ~あ……〈春風〉、俺と入れ替わってくんないかなぁ……」
そしたら俺は世界最高に幸せな嫁になれる自信がある。
一生汐見潮の隣にいて、病める時も健やかなる時もずっとそばにいて、最期はお前を看取って、俺はお前と同じ墓に入るんだ。そんな幸せな人生を送りたい、ただそれだけなのに……
「っあー、やめやめ! とりあえず片付けだ!」
気を取り直した俺は、趣味の部屋を出て、向かいの部屋のクローゼットに向かう。
汐見に貸し出す予定のあの部屋のクローゼットには掃除機だのそういう電化製品一式を置いてあったから。
部屋に行って、改めて見ると
「まぁ、確かにこの部屋の方がデカイはデカイんだよな……」
俺の趣味の部屋は5畳しかないけど、この部屋は6畳以上あって、まぁ最初はここを趣味の部屋として使ってたんだけど壁が……と思って今の部屋に移動した。まぁ、別に不自由しなかったからどうでもよかったんだけど。
「ん?」
趣味の部屋に戻ろうとした俺は、その6畳の部屋のドアに挟まってる紙切れを見つけた。屈んでそれを取ると
「あぁ……」
いつぞやに3人で鎌倉に行った時の【汐見だけ写ってる】写真だ。ギリギリで〈春風〉を切り取ったせいで正方形に近い形になってる。昨日、写真箱をひっくり返した時に飛んでいったんだろう。
「……」
俺は、この時のことを少し思い出した。
〝あの時……〟
〈春風〉と付き合えるかも、ってことになった汐見が『社会人になって付き合うってどうすんだ?』とか焦った口調で言い出すから、本当は嫌だったけど俺の車を出して3人でドライブに行くことになった。鎌倉あたりならデートスポットとしても有名だったし────
汐見と付き合うかも、って話の〈春風〉がそれでも俺にちょいちょいモーションかけてくるのが気に入らなくて問い詰めようと思って。
その前に二人で波打ち際で遊んでたから俺は見ないフリして写真を撮ってたんだ。
〝……どうせ別れる、と思ってたんだよな、この頃……〟
〈春風〉の態度を見ていたらわかった。将を射んと欲すればまず馬を射よって作戦だ、と。汐見と付き合うことで自分の特別感を演出して振り向きもしない俺の気を引こうとしてたんだ。
やっぱりそういう作戦思いつくような女なんだなこいつ、と思った俺にはまったくもって逆効果だった。そもそもその作戦、大学でも一度やられたことあるし、それで数少ない男友達無くしたし。
まぁ、あの頃の俺はクズだったから、友達無くしても仕方なかったんだけどな。
そこまで考えて、そういえば、と思い出した。
〝あの時、あの構図の写真を……〟
独占欲丸出しで、写真だけでも汐見を独り占めしてる気分を味わいたかったから、戯れてる二人を背景に小人汐見にキスしてる写真を撮ったはずだ。二人は気付いてないだろうから、と思って……
俺は趣味部屋に戻って大量に散乱した写真をざっと見回す。
「……ない……」
あの構図の写真を撮るのにハマってた時期ががあった。
いつバレるのか、ヒヤヒヤしながらそんなことをされてると気づかない汐見に呆れつつ撮り溜めていた。
写真は基本的にデータで残すようにしてる。
でも気に入った写真を印刷して貼り出すのはすごく楽しくなってテンション上がって……で、現在この部屋はこういう状態になったんだけど。
「……おかしいな……」
あの写真は苦心して撮ったこともあって割とお気に入りだった。
〈春風〉だけ画角内に映り込まないように俺の横顔で隠しつつ、でも背景の海と一緒に汐見が映るようにと細心の注意を払ってシャッターチャンスのタイミングを図ってスマホ越しに見て連写した。
〝帰ってきてデータを確認した時、運よくブレてなかったのが一枚だけあって、ちょっと興奮したもんな〟
『波打ち際を戯れる小さな恋人と俺』ってタイトルを付けたいくらいだった。
「……全部片付けたら出てくるよな……」
そう考えて、
〝さっき、汐見から11時くらいに行く、ってLIMEで返信来てたから、十分間に合うな〟
とりあえず部屋の大掃除にかかることにした。
リビングで適当に朝食を取った俺は、重い腰をあげてぐちゃぐちゃになったあの部屋に行った。
「あ~……こりゃまた派手にやったな、俺……」
【あの時】も片付けるのに骨が折れるほどだったけど、今回も結構ひどい。
「とりあえず……鏡の破片から先だな……」
寝入る直前に、姿見にスマホを投げつけた……のはぼんやりとだけど覚えてる。
……美形だイケメンだとか見た目だけ他の人間にもてはやされたって、汐見が俺のことを恋愛対象に見てくれないなら意味がない。こんな姿……逆にそうじゃなければ汐見は見てくれたかな……俺が美形でもなんでもなく普通のそこら辺にいるような男なら……
〝男って時点でダメなんだもんな。無理だよな……〟
色々考えたところで汐見が俺をそういう目で見てくれる可能性はゼロだ。
どう足掻いたって……男って時点で、俺が汐見と恋人同士になる可能性は……
「あ~あ……〈春風〉、俺と入れ替わってくんないかなぁ……」
そしたら俺は世界最高に幸せな嫁になれる自信がある。
一生汐見潮の隣にいて、病める時も健やかなる時もずっとそばにいて、最期はお前を看取って、俺はお前と同じ墓に入るんだ。そんな幸せな人生を送りたい、ただそれだけなのに……
「っあー、やめやめ! とりあえず片付けだ!」
気を取り直した俺は、趣味の部屋を出て、向かいの部屋のクローゼットに向かう。
汐見に貸し出す予定のあの部屋のクローゼットには掃除機だのそういう電化製品一式を置いてあったから。
部屋に行って、改めて見ると
「まぁ、確かにこの部屋の方がデカイはデカイんだよな……」
俺の趣味の部屋は5畳しかないけど、この部屋は6畳以上あって、まぁ最初はここを趣味の部屋として使ってたんだけど壁が……と思って今の部屋に移動した。まぁ、別に不自由しなかったからどうでもよかったんだけど。
「ん?」
趣味の部屋に戻ろうとした俺は、その6畳の部屋のドアに挟まってる紙切れを見つけた。屈んでそれを取ると
「あぁ……」
いつぞやに3人で鎌倉に行った時の【汐見だけ写ってる】写真だ。ギリギリで〈春風〉を切り取ったせいで正方形に近い形になってる。昨日、写真箱をひっくり返した時に飛んでいったんだろう。
「……」
俺は、この時のことを少し思い出した。
〝あの時……〟
〈春風〉と付き合えるかも、ってことになった汐見が『社会人になって付き合うってどうすんだ?』とか焦った口調で言い出すから、本当は嫌だったけど俺の車を出して3人でドライブに行くことになった。鎌倉あたりならデートスポットとしても有名だったし────
汐見と付き合うかも、って話の〈春風〉がそれでも俺にちょいちょいモーションかけてくるのが気に入らなくて問い詰めようと思って。
その前に二人で波打ち際で遊んでたから俺は見ないフリして写真を撮ってたんだ。
〝……どうせ別れる、と思ってたんだよな、この頃……〟
〈春風〉の態度を見ていたらわかった。将を射んと欲すればまず馬を射よって作戦だ、と。汐見と付き合うことで自分の特別感を演出して振り向きもしない俺の気を引こうとしてたんだ。
やっぱりそういう作戦思いつくような女なんだなこいつ、と思った俺にはまったくもって逆効果だった。そもそもその作戦、大学でも一度やられたことあるし、それで数少ない男友達無くしたし。
まぁ、あの頃の俺はクズだったから、友達無くしても仕方なかったんだけどな。
そこまで考えて、そういえば、と思い出した。
〝あの時、あの構図の写真を……〟
独占欲丸出しで、写真だけでも汐見を独り占めしてる気分を味わいたかったから、戯れてる二人を背景に小人汐見にキスしてる写真を撮ったはずだ。二人は気付いてないだろうから、と思って……
俺は趣味部屋に戻って大量に散乱した写真をざっと見回す。
「……ない……」
あの構図の写真を撮るのにハマってた時期ががあった。
いつバレるのか、ヒヤヒヤしながらそんなことをされてると気づかない汐見に呆れつつ撮り溜めていた。
写真は基本的にデータで残すようにしてる。
でも気に入った写真を印刷して貼り出すのはすごく楽しくなってテンション上がって……で、現在この部屋はこういう状態になったんだけど。
「……おかしいな……」
あの写真は苦心して撮ったこともあって割とお気に入りだった。
〈春風〉だけ画角内に映り込まないように俺の横顔で隠しつつ、でも背景の海と一緒に汐見が映るようにと細心の注意を払ってシャッターチャンスのタイミングを図ってスマホ越しに見て連写した。
〝帰ってきてデータを確認した時、運よくブレてなかったのが一枚だけあって、ちょっと興奮したもんな〟
『波打ち際を戯れる小さな恋人と俺』ってタイトルを付けたいくらいだった。
「……全部片付けたら出てくるよな……」
そう考えて、
〝さっき、汐見から11時くらいに行く、ってLIMEで返信来てたから、十分間に合うな〟
とりあえず部屋の大掃除にかかることにした。
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