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文化祭に一人で黄昏ていたら隣にイケメン貴公子が座ってきました

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 場所は地域経済の研究内容を掲示している教室です。

 文化祭というのだから、これくらいのことはやってやろうと気合いを入れたは良いものの。えーと、その……。

 誰も見に来ません。

 私は責任者として選ばれ、研究を仕上げたということもあり、こうして一人でぼんやりと黄昏ているわけです。

 誰も見に来ないので。

 教室外の喧噪を聞きながら、卒業用に研究論文でも執筆しようかと考えてもいるわけです。

 そんなところにフラっとやってきたのは、疲れを顔に浮かべたイケメン貴公子の……誰かさんです。

「やあ」

 どうも。

 声を出さずに首肯で応えます。声を出すのがめんどい。出さんでもいいでしょ。

 イケメン貴公子は苦笑し、私のすぐ近くに座りました。

 そして聞いてもいないのに愚痴ること愚痴ること。

 女子生徒に囲まれて疲れたの、騒がれて疲れたの、見たくもない展示を見せられたのと、なんだのと、よくもまあそんなに喋り散らかす元気があるものだと感心します。

「あ、これ、うちの領地の研究か」

 ん? ということは領主の令息? もう少しゴマでも擦っておけば良かったかな?

 別に良いか、めんどいし。将来は王宮勤めを目指すし。

「君、うちの領地に就くつもりなの?」

「王宮狙いですよ」

「ふーん……」



 なんかそれから、その貴公子から積極的に話しかけられるようになりました。
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