新天地で気分よく過ごしていた私ですが、追放元の国の王子が頻りに訪ねてくるようになりまして……

新天地で気分よく過ごしていた私ですが、追放元の国の王子が頻りに訪ねてくるようになりまして……

「頼むから我が国に戻ってきて欲しい。君がいれば、少しは状況が改善されるかも知れないんだ」

　王子が床に頭をこすりつけて土下座の格好をしていますが、その言葉には頷けませんね。

　なにしろ私、その王子の国から追放されたので。しかも目の前にいる王子の命令によって。

　彼自身としても当時の自身が視野狭窄に陥っていたことを自覚している様ですけど、もう遅いんですよね。

　私の家族もこちらの国に籍を移しましたし、私も結婚しましたし、元の国に未練はありませんので。

　そう言って断りますと、王子の護衛や使用人が激した感情を発露させて脅迫してきますが、そういうところが嫌なんですよ。

　怒りを見せれば相手が思い通りに動くだろうという浅い見識が無意識に刷り込まれているところが本当に嫌なわけです。

　貴方たち、本当にご自身の立場が分かっていて？　という感じです。

「お前たち、抑えろ」

「しかし！」

「今回は駄目でも、うんと頷いてくれるまで来る。では」

　はい、さようなら。

　懲りずに来るというなら、ちょっと上の方に報告して出禁の措置を取る必要がありますね。