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婚約破棄
婚約破棄を通したいのなら、決闘で勝ってからにしてもらおうかの話
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「ディアンヌ! 君に婚約破棄を申し込む!」
「その申し出、お受けしましょう……!」
ざわり、と場の空気がどよめいた。
場は王国学園の卒業パーティであり、多くの学生たちが立食を楽しんでいたところである。
パーティが盛り上がってきた頃合いにサルトル第二王子が一人の令嬢を連れて現れ、婚約者のディアンヌ公爵令嬢に婚約破棄を突きつけたという状況だ。
サルトルの連れた男爵令嬢は勝ち誇るかのようにディアンヌを見下ろしていたが、しかし当のディアンヌは鋭い視線をサルトルにのみ向けている。
そして貫かんばかりの視線を受け止めるサルトルもまた、強い視線をディアンヌに向けていた。
「我が王国伝統である婚約破棄、そのルールは知っているな?」
「貴方が私に勝てば、婚約破棄を受け入れましょう。ただし、私が貴方に勝てばその女は殺します。よろしいですね?」
「異論はない」
「ちょっ!?」
何それ知らないという顔で慌てだす男爵令嬢であったが、この場の誰もが王子と公爵令嬢の婚約破棄に夢中であり、その狼狽に気が付かない。会場のボルテージはマックスだ。
魔法式決闘場として徐々に上がっていく卒業パーティのステージ上には、サルトルとディアンヌの二人のみが対峙している。
二人は利き腕に決闘用リングを嵌め込んでおり、互いに相手の攻撃用・防御用・戦術用魔法カードが含まれたデッキをシャッフルしている。
相手のデッキを優雅に投げ渡したディアンヌは、不意に湧き上がってくる感情に酔い痴れる。
――私たちは初めて顔を合わせた時から、この勝負を待ち望んでいた……!
避けられぬ決闘の宿命を、公爵令嬢としての責務をもって全うする。
王子もまた王族としての生まれ持った責務を背負い、今回の決闘に臨んでいるのだろう。
互いに胸の奥底から熱き感情が過剰に噴出し、溢れる感情が涙となって頬を流れ落ちていく。
「「いざ、尋常に――決闘ッ!」」
心身を熱く滾らせる貴族としての在り方!
誰にも否定させはしない、しかし互いに想い合う相手のみは、想う相手を否定できるという生まれ持った悲恋の宿命!
恋や愛と称されるに相応しい哀しき決闘者としての生き様が、そこには確かに存在していた!
「その申し出、お受けしましょう……!」
ざわり、と場の空気がどよめいた。
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パーティが盛り上がってきた頃合いにサルトル第二王子が一人の令嬢を連れて現れ、婚約者のディアンヌ公爵令嬢に婚約破棄を突きつけたという状況だ。
サルトルの連れた男爵令嬢は勝ち誇るかのようにディアンヌを見下ろしていたが、しかし当のディアンヌは鋭い視線をサルトルにのみ向けている。
そして貫かんばかりの視線を受け止めるサルトルもまた、強い視線をディアンヌに向けていた。
「我が王国伝統である婚約破棄、そのルールは知っているな?」
「貴方が私に勝てば、婚約破棄を受け入れましょう。ただし、私が貴方に勝てばその女は殺します。よろしいですね?」
「異論はない」
「ちょっ!?」
何それ知らないという顔で慌てだす男爵令嬢であったが、この場の誰もが王子と公爵令嬢の婚約破棄に夢中であり、その狼狽に気が付かない。会場のボルテージはマックスだ。
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二人は利き腕に決闘用リングを嵌め込んでおり、互いに相手の攻撃用・防御用・戦術用魔法カードが含まれたデッキをシャッフルしている。
相手のデッキを優雅に投げ渡したディアンヌは、不意に湧き上がってくる感情に酔い痴れる。
――私たちは初めて顔を合わせた時から、この勝負を待ち望んでいた……!
避けられぬ決闘の宿命を、公爵令嬢としての責務をもって全うする。
王子もまた王族としての生まれ持った責務を背負い、今回の決闘に臨んでいるのだろう。
互いに胸の奥底から熱き感情が過剰に噴出し、溢れる感情が涙となって頬を流れ落ちていく。
「「いざ、尋常に――決闘ッ!」」
心身を熱く滾らせる貴族としての在り方!
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