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逆転・復讐
ハーレムはけしからんので粛清した話
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教会の定める聖女ということで、私はかわいい婚約者と共に王国の建国祭に出ることになった。
退屈極まりないゴテゴテの式典を軽く済ませると、城下の通りに繰り出す。
楽しみですね、とにこにこ笑う婚約者の天真爛漫さに鼻血が出そうな私である。天使かな?
そうして教会騎士団の護衛に囲まれながら婚約者と一緒に祭りを楽しんでいると、突然にして不穏な気配を感じた。
聖女センサーの反応方向から判断するに、私たちの進行先である。
聖女アイにて進行先を見通せばなるほど、そこには悪の権化が存在していた。
美しい令嬢たちを引き連れたハーレムクソ野郎である。
性格の悪そうなキザったらしい顔をしており、聖女センサーに啓蒙を与えてくるのだ。
奴は間違いなく女を不幸にするクソ男であると。
聖女よ、やってしまいなさい――と、天の女神が激しく台パンしながら仰ってくるのである。
女神の応援があるのなら、まあやってやらないこともない。
私自身も、気に入らないしな。
「聖女様?」
純真無垢な婚約者を巻き添えにするわけにはいかないため、護衛の騎士たちに預けて行く。
私はこれから少しばかり聖女の仕事をするので、婚約者ちゃんは出店で二人分のジュースを買っておいて下さいね。
眩しいほどの笑顔で了承してくれた婚約者に、王国の恥部を晒したくはない。
愛国心の一つや二つ、私にもあるのだ。
私は深呼吸をして集中すると、ハーレム男に向かって疾駆した。
祭りの喧騒を掻き分け、止まることなく迫りゆく。
奴は途中でこちらに気が付いたようだが、もう遅い。
私は速度の乗った蹴りを奴の顔面に見舞っていた。
周囲から上がる令嬢の悲鳴。ざわつき。
倒れた奴を中心にして広がっていく空間。
そして私と奴とに二分される戸惑いと混乱の視線。
それを受けながら、私は宣言した。
「私は教会の聖女である。此奴は品行方正たる女人を我が物のように連れ歩いた。しかも複数人をだ! こんな狼藉が許されるか!?」
許されない!
呼応するように挙がった叫びは、連れてきていた教会の騎士によるものである。
聖女である私と同様に、教会騎士団もまた相応の発言力を有している。
それゆえに彼女の発言は民衆の心を掴む上において効果があるのだ。
現に彼女の呼応に続いて、周囲の人々もまたその熱が移っていくように許されないと叫び始めている。
奴と連れ歩いていた令嬢たちもまた、少なくない鬱憤があったのだろう。
許せない、許せる筈がない、と怨嗟の叫びを上げている。
私も彼女らの激情に釣られ、いつの間にか激怒していた。
激おこである。
立ち上がろうとするクソ男の足を払って再び地べたに這いつくばらせ、指を差して宣言した。
「よろしい諸君。ならば此奴を叩きのめそう。二度とこのような狼藉を許さぬために、徹底的に懲らしめようではないか!」
民衆の雄々しき叫びが上がる。
出店から供給されたのであろう調理用麺棒が各人の手に強く握られている。
そう、粛清の時間が訪れたのだ。
粛清の詳細は、語る必要が無いだろう。
こうして悪しき罪人は教会主導の元に粛清され、身元を洗われ、王国法においても然るべき罰を賜ったのである。
「人々の笑顔を守るのも、聖女の務め……」
私は後に合流した婚約者と共にトロピカルジュースを飲みながら、目の前の笑顔を守れたことに安堵の息をついたのだった。
退屈極まりないゴテゴテの式典を軽く済ませると、城下の通りに繰り出す。
楽しみですね、とにこにこ笑う婚約者の天真爛漫さに鼻血が出そうな私である。天使かな?
そうして教会騎士団の護衛に囲まれながら婚約者と一緒に祭りを楽しんでいると、突然にして不穏な気配を感じた。
聖女センサーの反応方向から判断するに、私たちの進行先である。
聖女アイにて進行先を見通せばなるほど、そこには悪の権化が存在していた。
美しい令嬢たちを引き連れたハーレムクソ野郎である。
性格の悪そうなキザったらしい顔をしており、聖女センサーに啓蒙を与えてくるのだ。
奴は間違いなく女を不幸にするクソ男であると。
聖女よ、やってしまいなさい――と、天の女神が激しく台パンしながら仰ってくるのである。
女神の応援があるのなら、まあやってやらないこともない。
私自身も、気に入らないしな。
「聖女様?」
純真無垢な婚約者を巻き添えにするわけにはいかないため、護衛の騎士たちに預けて行く。
私はこれから少しばかり聖女の仕事をするので、婚約者ちゃんは出店で二人分のジュースを買っておいて下さいね。
眩しいほどの笑顔で了承してくれた婚約者に、王国の恥部を晒したくはない。
愛国心の一つや二つ、私にもあるのだ。
私は深呼吸をして集中すると、ハーレム男に向かって疾駆した。
祭りの喧騒を掻き分け、止まることなく迫りゆく。
奴は途中でこちらに気が付いたようだが、もう遅い。
私は速度の乗った蹴りを奴の顔面に見舞っていた。
周囲から上がる令嬢の悲鳴。ざわつき。
倒れた奴を中心にして広がっていく空間。
そして私と奴とに二分される戸惑いと混乱の視線。
それを受けながら、私は宣言した。
「私は教会の聖女である。此奴は品行方正たる女人を我が物のように連れ歩いた。しかも複数人をだ! こんな狼藉が許されるか!?」
許されない!
呼応するように挙がった叫びは、連れてきていた教会の騎士によるものである。
聖女である私と同様に、教会騎士団もまた相応の発言力を有している。
それゆえに彼女の発言は民衆の心を掴む上において効果があるのだ。
現に彼女の呼応に続いて、周囲の人々もまたその熱が移っていくように許されないと叫び始めている。
奴と連れ歩いていた令嬢たちもまた、少なくない鬱憤があったのだろう。
許せない、許せる筈がない、と怨嗟の叫びを上げている。
私も彼女らの激情に釣られ、いつの間にか激怒していた。
激おこである。
立ち上がろうとするクソ男の足を払って再び地べたに這いつくばらせ、指を差して宣言した。
「よろしい諸君。ならば此奴を叩きのめそう。二度とこのような狼藉を許さぬために、徹底的に懲らしめようではないか!」
民衆の雄々しき叫びが上がる。
出店から供給されたのであろう調理用麺棒が各人の手に強く握られている。
そう、粛清の時間が訪れたのだ。
粛清の詳細は、語る必要が無いだろう。
こうして悪しき罪人は教会主導の元に粛清され、身元を洗われ、王国法においても然るべき罰を賜ったのである。
「人々の笑顔を守るのも、聖女の務め……」
私は後に合流した婚約者と共にトロピカルジュースを飲みながら、目の前の笑顔を守れたことに安堵の息をついたのだった。
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