雑多な短編集

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魔女に惚れられて大人になれなくなった王子の話

「酷い……貴女はずっと僕を騙してきたんですね……！」

　そうだよ、愛しのファルエル王太子。

　私はずっと貴方を騙してきたんだ。

　とはいえ、謝るつもりは毛ほども無い。

　何故なら、私は自身の欲求に正直な真っ当な魔女だからである。


　そう、魔女なのだ。

　聖女の再来と謳われ、王国の発展を推し進めていくだろうと期待されていた私が、である。

　私は王国に魔法を施し、国民全員が成長できなくなるように仕向けたのだ。

　端的に言うと『国民は大人になれず子供の姿のままでいる』ということである。

　これはつまりどういうことかと言うと、王国は他の国との円滑な貿易を行うことができずに滅びゆくということである。

　というか、二年前に滅んだ。

　良識ある人々は国から出奔し、残る人々は隣国からの侵略戦争によって命を落としたのである。


「どうして、そんなことをしたんですか……！」

　理由は簡単で、私が小さくも凛々しいファルエル王太子に惚れたからだ。

　それ以外に理由は無い。

　国民全員の成長を止めたのも、ファルエル王太子の成長を止める際における副作用のようなものだ。

　まあ、どう考えても私は悪くないだろう。

　悪いのは私を惑わせてしまったファルエル君であることは明白だ。

　ゆえに、ファルエル君は私に対する責任を負わなければならないのである。

　魔女を惚れさせた罪は重いのだ。