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王太子殿下は面倒見の良い人がお好き
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「オルクス様! 今日はお弁当を作ってきたんです!」
そう言って生徒会室のドアを勢いよく開いたのは、特待生のシャロン様でした。
男爵の血を引くとして平民から拾い上げられた成り上がり。
様々な方面から妬みや誹りや嘲りを受けているにもかかわらず、本人は全く気にせず明るい振る舞いを続けています。
そんな天真爛漫な様子に、生徒会長であり王太子であり私の婚約者でもあるオルクス様は――。
「帰りたまえ」
酷く迷惑そうな仏頂面を見せ、虫でも払うように手を振ります。
が、そこは厚顔無恥とも揶揄されるシャロン様です。
そんな簡素な言葉には一切耳を貸しません。
ずかずかと部屋に入り込み、周りの視線を気にすることなくオルクス様を押していきます。
「さあ! 中庭で一緒に食事をしましょう! 天気も良いですし! 部屋に籠もってばかりいると毒ですよ!」
「トム、マリア、ついていってやれ」
オルクス様は返事をすることなく、側近の二人に命じて彼女を部屋の外へと追い出しました。
まあ、あの二人のことですからシャロン様と一緒に中庭までお供していそうですけれども。
と、それはともかく。
「殿下、頭の良い女性が好きなのでは? 彼女、特待生ですよ?」
「社会のイロハも知らない小娘に惚れることはない。そもそも、君という婚約者がいる」
幼い頃からの婚約を無理に守らなくても、選り取り見取りだと思うんですけどね……。
ほら、例の侯爵令嬢とか伯爵令嬢とか、頭も良くて見目も良い方は沢山いらっしゃいますよ?
「私は君が良いと言っている。不服か?」
分かりましたから真剣なイケメンフェイスで迫ってこないでもらえます?
私のような小心には眩しさの余りに消滅しちゃうんですよ。
あ、いや、そんなに落ち込まなくてもいいじゃないですか。
はいはい、捨てませんって。
捨てるなら幼少の頃から相手にしてませんって。
そう言って生徒会室のドアを勢いよく開いたのは、特待生のシャロン様でした。
男爵の血を引くとして平民から拾い上げられた成り上がり。
様々な方面から妬みや誹りや嘲りを受けているにもかかわらず、本人は全く気にせず明るい振る舞いを続けています。
そんな天真爛漫な様子に、生徒会長であり王太子であり私の婚約者でもあるオルクス様は――。
「帰りたまえ」
酷く迷惑そうな仏頂面を見せ、虫でも払うように手を振ります。
が、そこは厚顔無恥とも揶揄されるシャロン様です。
そんな簡素な言葉には一切耳を貸しません。
ずかずかと部屋に入り込み、周りの視線を気にすることなくオルクス様を押していきます。
「さあ! 中庭で一緒に食事をしましょう! 天気も良いですし! 部屋に籠もってばかりいると毒ですよ!」
「トム、マリア、ついていってやれ」
オルクス様は返事をすることなく、側近の二人に命じて彼女を部屋の外へと追い出しました。
まあ、あの二人のことですからシャロン様と一緒に中庭までお供していそうですけれども。
と、それはともかく。
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あ、いや、そんなに落ち込まなくてもいいじゃないですか。
はいはい、捨てませんって。
捨てるなら幼少の頃から相手にしてませんって。
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