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六章「闘争」
266話
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呆気なかったな、と意識の片隅で団長は思う。
対峙した瞬間から、勝てるとは到底思えなかった。
見た瞬間に感じ取れるほどの力の差が、彼我の間に横たわっていたのだ。
縮地が使えるものの、それは瞬く間ほどの僅かな時間だけである。
その技術は、自身の身体を壊しかねないほどの、人間の領分を過ぎた能力だ。
足りない分は、魔法による強化で幾らか補う必要があった。
それでも、使い過ぎれば身体に反動がくるのは当然で、縮地を使えば使うほど、身体はぼろぼろになっていった。
けれども、敵に通じる技術はその縮地だけだったのだ。
身体を酷使しなければ、僅かな時間でも相手を上回れなければ、仲間の命だけでなく自身の命脈すら延ばすことはできなかっただろう。
愛剣を犠牲にして一撃を叩き込める隙を得られたが、全力の一撃を叩き込んでも傷を与えることができなかった。
基本的な身体能力も、魔力の量も、敵の方が数段上であることは対峙した瞬間に分かっていたが、傷すら与えられないとは思ってもみなかった。
そこまでいくと恐怖すら起こらず、むしろ感動の情感が生じてくる。
だから、というわけではないが。
一瞬で殺されず、数秒でも長く戦えたことは好ましい。
そのように、彼は心から思えたのだ。
仲間たちには謝ることもできないが、敵がこちらを甘く見ることなく、あくまで自身の土俵に立って戦ってくれたことに感謝したい気持ちであった。
対峙した瞬間から、勝てるとは到底思えなかった。
見た瞬間に感じ取れるほどの力の差が、彼我の間に横たわっていたのだ。
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足りない分は、魔法による強化で幾らか補う必要があった。
それでも、使い過ぎれば身体に反動がくるのは当然で、縮地を使えば使うほど、身体はぼろぼろになっていった。
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そこまでいくと恐怖すら起こらず、むしろ感動の情感が生じてくる。
だから、というわけではないが。
一瞬で殺されず、数秒でも長く戦えたことは好ましい。
そのように、彼は心から思えたのだ。
仲間たちには謝ることもできないが、敵がこちらを甘く見ることなく、あくまで自身の土俵に立って戦ってくれたことに感謝したい気持ちであった。
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