エルフだと思った? 残念! エルフじゃなくてゴブリンでした!

広畝 K

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六章「闘争」

260話

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 ――まさか、縮地を使うとは……。

 知覚の感知し得ない僅かな間隙を縫うことによって、些細の違和すら感じさせずに距離を縮めるという、体術における高等技術である。
 もし娘がディーネの実演によってその技を見ていなければ、自身の身体の硬直をもってしか、その事実を認識できなかったであろう。
 その僅かな時間こそ、敵にとっては垂涎の、致命の隙となったに違いない。

 だが、娘は敵の縮地が技術として完成していないことに気がついていた。
 なぜなら、自身の知覚に引っかかる僅かな違和が、敵の攻撃とその意思を確かに伝えてくるからである。

 ゆえに娘が、頭上から振り下ろされた剣撃を見ることなしに弾き返すのは容易であった。
 が、その剣撃の手応えが軽いことに気づいた娘は、この剣撃が敵のフェイントであることを知る。

 そして、それに気付いた時には、

「遅い」

 敵の拳が、隙を生じた娘の背中に撃ち込まれていた。
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