エルフだと思った? 残念! エルフじゃなくてゴブリンでした!

広畝 K

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六章「闘争」

242話

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 男の決死の覚悟と決意を感じ取り、仲間たちは了解した。
 仲間が自分の覚悟を受け取ってくれたことを、男は確かに感じ取った。
 そして、感謝した。
 最後の最期まで、良い仲間に恵まれたものだ、と。悪くない人生だった、と。

 男はゆっくりと、左手で右手を押さえながら立ち上がり、腹の底から力を振り絞って大きく吼えた。

 瞬間、周囲の男たちは駆け出した。
 仲間に、敵の襲撃を知らせるために。
 残された男は吼え終わった瞬間、その場に仰向けに倒れていた。
 追撃が加えられた、というわけではない。
 既に、男は限界だったのだ。
 右腕の断面から流れていた血は、ほぼ止まっている。

 男は朦朧とし、曖昧となっている意識の片隅で安堵していた。
 自分のやれることは、やった。
 後は仲間たちを、信じるより他にない。
 死に極限まで瀕した彼が今際の際に耳にしたのは、年端もいかぬであろう少女による、賞賛の意思であった。

 ――その心意気、実に見事です。

 その意思に対する返答を思考する間もなく、男の意識は闇に閉ざされていった。
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