エルフだと思った？ 残念！ エルフじゃなくてゴブリンでした！

五章「発端」

208話

　そして男は居住まいを正し、森で起こった出来事を団長に報告した。
　森に、エルフが出たということを。
　ジョンとジョニーが一瞬でやられた後、ジョゼフは姿を現したエルフと対峙し、自分を逃がしてくれたことを。
　男は話の途中で眩暈を起こして布団に倒れこんだが、それでも口を止めずに言葉を吐き出し、最後まで報告を行った。
　団長は男に安静な姿勢を取らせ、その手を両手で握って安心させるように言う。

「ジョネス、よく報告してくれた。そして……よく生きて帰ってきてくれた」

「だ、団長……お、俺……俺は……！」

　涙を流しながら拳を握り締めるジョネスに、団長は優しく声を掛ける。

「後は、俺たちに任せろ。お前はゆっくりと体を休めることだけ考えるんだ」

　ジョネスは弱々しく頷くと、団長に支えられながら、ゆっくりと目を閉じた。
　緊張の糸が切れ、一時的に意識を失ったのである。
　しかしその顔は、困難な任務をやり遂げたような達成感に満たされているように思われた。呼吸も安定しており、命に別状はないであろう。