エルフだと思った? 残念! エルフじゃなくてゴブリンでした!

広畝 K

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四章「町へ行こう」

180話

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 ――そんな状況もあるだろうから、我が特別に安眠法を伝授してやろう。

 と、事前にディーネが気を使って安眠法を教えてくれなければ、眠れずに徹夜で帰ることになったに違いない。

 その安眠法は魔法でもなんでもなく、前世の知識から推測するならば、自己の精神を集中させるものであったろう。自分の意識と感覚を外界から遮断し、己とその周囲を客観的に感覚として掴むことを奥義としているとのことである。

 前世の日本で言うなれば、禅による瞑想の感覚に近いものがあるかもしれない。

 目を閉じて全身の力を抜き、静かで深い呼吸を意識して、自己の体内に存在する空白を感じるというのが、その方法である。

 些か抽象的な説明ではあるが、その空白を感じることさえできれば何事も冷静に集中して対処できるようになる、とはディーネの言であった。

 結局、その空白を感じるというのは七之上には分からなかったが、眠ることには成功したらしい。目を閉じたと思ったら、薄い光が差し込む部屋の中で、朝の到来を謳歌する小鳥の鳴き声を聞いていたのである。

 目を開いた先にはエリザベスの少し拗ねたような顔があった。眠れない私を差し置いてぐっすりと眠っておられましたよ、という嫌味を小さく聞かされることになった七之上だが、それはいつもの小言と違って可愛らしいものに感じられた。
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