エルフだと思った？ 残念！ エルフじゃなくてゴブリンでした！

四章「町へ行こう」

166話

　彼はそれらの防具を一目見た瞬間に、それら防具の圧倒的な魅力に惹きつけられ、心を奪われ、一瞬にして、我を失ったのである。瞳を爛々と輝かせ、鼻息も荒く見つめるその様態は、大好物を目の前にした一匹の獣であったと言って良い。

「なにこれ！　超カッコいいじゃん！　めっちゃ欲しい！　な、エリザベス！」

「マスター、少し落ち着いてください」

　エリザベスは諭すような口調でもって、七之上に優しく語る。
　なるほど、並んでいるこれらの防具は確かに格好良いのかも知れない。

　しかし、それらは誰が見ても並の防具ではなく、屈強な戦士が好んで装備するが如く優れた代物に違いない。そのような高い品質の装備を、ロクに鍛えてもいない七之上が装備することは不可能である。

　装備するどころか、持つことすら難しい重量があるかもしれない。

　装備もできない防具を買ったとしても有効的に活用できず、置物として家に飾ることくらいしかできないであろう。邪魔になれば、捨てるしかないのだから。

　そのような扱いは防具としても本望ではないだろうし、本来の使い方から大きく外れることになり、防具を作った者だけではなく、防具自身も無念に打ち震えることとなるに違いない。