エルフだと思った？ 残念！ エルフじゃなくてゴブリンでした！

三章「ゴブリン大家族」

93話

　このままではやばい、と、七之上の中で何かが囁いた。

　彼は己の中の囁きに従って、急いで大布団から抜け出し、ログハウスとは逆方向の聖域内に向かって走る。

　だが、それも遅きに失していた。

　いや、彼には元から逃げ場などなかったのかもしれない。

　聖域内には、動物と戯れる娘たちの姿がちらほらと見られ、そして娘たちは聖域内を走っている七之上にすぐに気がつき、無邪気な笑みを浮かべて小走りで駆けてくる。

　万事休すか！　と、七之上は足を止めた。

　あらゆる方向から駆けてくる娘たちを、転生から今まで少しも鍛えていない軟弱な肉体で受け止める覚悟を決めたのである。

「さあ、来い！」

　その強い意志を受け、娘たちは歓喜した。

　全力で！　そう、全力をもって、だ。

　自分たちの父親に向かわねばならないと、娘たちは懸命に足を動かし、彼に到達しようと駆けに駆けた。

　そして、

「パパー！」

　何人もの娘たちが、一斉に七之上に飛び掛かった。

　それは抱っこを求めたものか、或いは自分たちから抱きつきにいったのか、それは定かではない。

　その目的や過程がどうであれ、結果は彼の予想のとおりに無情なものとなった。