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三章「ゴブリン大家族」

88話

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 エリザベスは合点がいったと言うように鷹揚に頷いた。

 マリーもまた、同様である。

「分かりました。これからはマスターが起きている時にしましょう」

「なの……!」

「あれ、そういう結論になっちゃう?」

 もし仮に、例えば、と七之上は言った。

 俺がお前たちを嫌いだとか、そういう俺の感情は考慮されないわけなん? と。

 エリザベスはその問いに、軽く首を傾げてみせた。

「私たちのこと、お嫌いですか?」

「いや、嫌いじゃないけど、どっちかってーと好きだけどさ」

 でも色々と順序とか、倫理とか、かっ飛ばしてない? と七之上は言いかけたが、自分でそう言おうと思っていたにも関わらず、考えが変わり始めていた。

 従者たちには人間らしい男女の駆け引きというものは要らないのでは? と思い始めてきたのである。

 なぜかと自問するのであれば、この二人の従者は人間ではなくゴブリンであるからだ、と言わざるを得ない。

 そもそも生物学的な意味で種族が違うのであるから、物事に対する価値観なども、当然違っているだろうと思えてきたわけだ。

 いわゆる思考の飛躍であるが、何が彼の思考をそこまで飛躍させたのかは定かではない。

 ともあれ七之上は一瞬でそこまで考えてしまい、どうも自分の言っていたことは些細なことだと思えてきた。

「まあ、いっか」

「よろしいのですか?」

「好きな奴らと一緒にいられるってだけで、問題ないような気がしてきた」

「なるほど、それは問題ないですね」

「大丈夫、問題ないの……」

 種族的な繁殖形態は多夫多妻とは言っていたが、本人たちが自分一筋であると表明していることでもある。

 まあいいかな、と七之上は心を納得させ、二人との関係を認めることとした。
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