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一章「エルフは君の心の中に存在している」
32話
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オーガが咆哮した瞬間に、エリザベスは番えていた矢をその眉間目掛けて放った。
緑に輝く一本の矢が閃光となってオーガに向かって直進する。
高速で飛来したそれは、瞬く間もなくオーガの眉間に命中した。
が、眉間を貫くことはなく、微かな光の粒となって四散した。
「ふむ、ただの矢では駄目なようですね」
エリザベスには気落ちした様子はなく、まあこれくらいは予想の範囲内です、といった余裕すら見られる。
それは彼女の自信の表れと見るべきであろう。
初撃で命を取ることはできなかったものの、ダメージを与えることに成功しているのも確かであったからだ。
現に、矢が命中したオーガの眉間には、青い血の色が滲んでいた。
微々たるダメージではあるが、エリザベスは自身の攻撃が確かに通じるという確信を初撃によって得たのである。
敵の余裕じみた表情が気に入らないのか、はたまた僅かとはいえダメージを受けたためか、オーガは全身の肌の色を青く染め上げ、全身に青い光を纏って怒り狂った。
その光はオーガの行使した魔法による、魔力の光である。
魔法によって全身の筋肉が一段と膨れ上がって緊張し、密度を増し、浮き上がった血管の脈動すら見て取れるようになってゆく。
緑に輝く一本の矢が閃光となってオーガに向かって直進する。
高速で飛来したそれは、瞬く間もなくオーガの眉間に命中した。
が、眉間を貫くことはなく、微かな光の粒となって四散した。
「ふむ、ただの矢では駄目なようですね」
エリザベスには気落ちした様子はなく、まあこれくらいは予想の範囲内です、といった余裕すら見られる。
それは彼女の自信の表れと見るべきであろう。
初撃で命を取ることはできなかったものの、ダメージを与えることに成功しているのも確かであったからだ。
現に、矢が命中したオーガの眉間には、青い血の色が滲んでいた。
微々たるダメージではあるが、エリザベスは自身の攻撃が確かに通じるという確信を初撃によって得たのである。
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その光はオーガの行使した魔法による、魔力の光である。
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