平民男性に謎に執着している公爵令嬢の話

平民男性に謎に執着している公爵令嬢の話

「私との婚約を了承するなんて、物好きな方ですね」

　いや、それはお互い様だと思いますよ。

　なにしろ私は平民で、貴女は公爵令嬢ですからね。

　身分が違い過ぎますから、一般の社会通念上においては認められ難いことだと思いますよ。

「それは仕方がありません。貴族に良い人がいなかったら、平民で良い人を探すしかないではありませんか」

　そういう柔軟過ぎる思考が、家から疎まれる原因となったのでは？

　平民に嫁いでくるなんて、醜聞以外の何物でもありませんよ？

「情報操作は公爵家の嗜みですので」

　然様ですか。

　まあ、貴女が良いなら良いんですけれども。

　というか、生活が一気に変化して落ち着かないんですけれども。


「よろしいではありませんか。他国に住んでみるというのも一興です」

　一国の公爵令嬢が他国に逃げ住むってかなりの問題のような気がするんですけど……。

「あまり細かいことを気にし過ぎると禿げますよ？」

　たぶん、数年経たないうちに私は禿げるでしょうね。ストレスで。

「仮に禿げても絶対に離しませんし、死んだ後も逃がしませんから安心して下さいね」

　その恐ろしいほどの執着心は一体どこから来てるんです？？？