王子ともあろう御方が平民の特待生を庇って瀕死の重傷になるとは。美しいですね、感動的です。しかし愚かの極みです。

広畝 K

文字の大きさ
上 下
1 / 1

王子ともあろう御方が平民の特待生を庇って瀕死の重傷になるとは。美しいですね、感動的です。しかし愚かの極みです。

しおりを挟む
 ベッドには静かに眠る王子が横たわり、その側で特待生が俯くように座っています。

 まあ、無理もありませんね。

 魔物から庇われた自分は無事で、庇ってくれた王子が意識不明の重体なんですから。

 王子の婚約者候補である私としても、冷静にはなれません。

「……あ、シルヒ様」

 平民に名を呼ばれて少し神経が苛立ちますが、まあ、許して差し上げましょう。

 もう二度と、その顔を見ることもないのでしょうから。

「シルヒ様、何を……?」

 私は平民の問いに応えず、王子の腹部に手を当てました。

 そしてそこから、自身の生命力を魔力に変換して注いでいきます。



「この温かさは、シルヒ嬢が……そうか」

 目を覚ました王子様は平民の女生徒の言葉を聞くと、沈痛の面持ちをもって頷きました。

 平民の女生徒は目を泣き腫らして、もう一つのベッドに横たわる令嬢に縋りついています。

 一部の貴族にのみ伝えられている、禁呪の一たる蘇生魔法。

 その魔法の存在を、王子は公の式典にて発表しました。

 彼の意図は不明ですが、この行動によって、しばらく国中が紛糾することになります。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた

宮野 楓
恋愛
幼馴染のエリック・リウェンとの婚約が家同士に整えられて早10年。 リサは25の誕生日である日に誕生日プレゼントも届かず、婚約に終わりを告げる事決める。 だがエリックはリサの事を……

外国人留学生の世話をしていたら、どうも懐かれたようでして

広畝 K
恋愛
タイトル通りです。

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」

ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」 美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。 夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。 さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。 政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。 「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」 果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...