王子ともあろう御方が平民の特待生を庇って瀕死の重傷になるとは。美しいですね、感動的です。しかし愚かの極みです。

広畝 K

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王子ともあろう御方が平民の特待生を庇って瀕死の重傷になるとは。美しいですね、感動的です。しかし愚かの極みです。

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 ベッドには静かに眠る王子が横たわり、その側で特待生が俯くように座っています。

 まあ、無理もありませんね。

 魔物から庇われた自分は無事で、庇ってくれた王子が意識不明の重体なんですから。

 王子の婚約者候補である私としても、冷静にはなれません。

「……あ、シルヒ様」

 平民に名を呼ばれて少し神経が苛立ちますが、まあ、許して差し上げましょう。

 もう二度と、その顔を見ることもないのでしょうから。

「シルヒ様、何を……?」

 私は平民の問いに応えず、王子の腹部に手を当てました。

 そしてそこから、自身の生命力を魔力に変換して注いでいきます。



「この温かさは、シルヒ嬢が……そうか」

 目を覚ました王子様は平民の女生徒の言葉を聞くと、沈痛の面持ちをもって頷きました。

 平民の女生徒は目を泣き腫らして、もう一つのベッドに横たわる令嬢に縋りついています。

 一部の貴族にのみ伝えられている、禁呪の一たる蘇生魔法。

 その魔法の存在を、王子は公の式典にて発表しました。

 彼の意図は不明ですが、この行動によって、しばらく国中が紛糾することになります。
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