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第十五章:専行
84話
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理屈としては、体内に巡っている魔力を肉体の一点に集中させるということになる。
これは戦闘を嗜まぬ人間であっても多少の訓練を施せばすぐにでも物にできる基本技術であり、手先の器用を持たぬ獣であっても狩りの武器として使用している技術である。
魔物のみがその技術を扱えぬという道理はない。
しかし、大量の魔力を一点に集中させるとなると、途端に至難の技と化す。
なぜならば、魔力というものは一定の濃度を超えた場合においてのみ、離散と流動の性質を有するようになるためだ。
濃度が低ければ集中させやすい魔力であっても、濃密に集中させるとなると勝手が変わる。
常人の想像も及ばぬほどの集中力・精神力・忍耐力、そして高度の魔力操作技能を必要とするのである。
それに関しては人間であろうと獣であろうと、魔物であろうと不変である。
ではなぜ、『手負い』はそれを可能としたのか。
「そうか……『手負い』だからか…………」
話に聞くところ、『手負い』は全身から魔力が陽炎となって揺らめくほどに傷を負っていたのだという。
五メートルを超える全身の傷を癒して余りあるほどの膨大な量の魔力を、余すことなく攻撃に転化させたと考えるなら、現場の惨状は十分に実現可能であると、ソルトには思われた。
「……遭遇したくは、ないな」
これは戦闘を嗜まぬ人間であっても多少の訓練を施せばすぐにでも物にできる基本技術であり、手先の器用を持たぬ獣であっても狩りの武器として使用している技術である。
魔物のみがその技術を扱えぬという道理はない。
しかし、大量の魔力を一点に集中させるとなると、途端に至難の技と化す。
なぜならば、魔力というものは一定の濃度を超えた場合においてのみ、離散と流動の性質を有するようになるためだ。
濃度が低ければ集中させやすい魔力であっても、濃密に集中させるとなると勝手が変わる。
常人の想像も及ばぬほどの集中力・精神力・忍耐力、そして高度の魔力操作技能を必要とするのである。
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ではなぜ、『手負い』はそれを可能としたのか。
「そうか……『手負い』だからか…………」
話に聞くところ、『手負い』は全身から魔力が陽炎となって揺らめくほどに傷を負っていたのだという。
五メートルを超える全身の傷を癒して余りあるほどの膨大な量の魔力を、余すことなく攻撃に転化させたと考えるなら、現場の惨状は十分に実現可能であると、ソルトには思われた。
「……遭遇したくは、ないな」
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