巨大魔物討滅作戦

広畝 K

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第十章:始動

55話

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「なるほど、分かりました」

 シュガーは己の経験と知識を踏まえて、自身の思うところを述懐した。

 下方と上方の二方向に分かれているのであれば、魔物は下方から来たに違いないと推測する。
 理由としては、この山に元々魔物は生息していなかったからであり、上方にある魔力の痕跡は明らかに、その方向へと魔物が向かったからであろうと考えられる。

「ふむ、では下方の痕跡については?」

「魔物が下方から来たときのものじゃないかな、と私は思いますね」

「説明はつく」

「でもなんで村に来なかったんだ? そいつ」

「……恐らく、人間がいると気付いたからでしょう」

 推測混じりにはなるがと前置きした上で、ロアと名乗ったそのメンバーは言う。
 その個体は人間との戦いを経験しており、この山に追われてきたのではないだろうか、と。

 それはつまり、その個体は人間に敗れた経験があるためなのだろう。
 この山に入ってきて、すぐには人間の前に姿を現したくはないと思われる。
 だからこそ村を避け、上方へと向かったのではないか、とロアはいうのだ。

「となると、山頂に向かった第一部隊にも注意を促す必要があるわね。
 もし遭遇したら、死に物狂いで向かってくる可能性があるわ」

「私たちも今まで以上の用心が必要」

 討伐隊の面々が一様に頷いたと同時に、通信機が震えて着信を知らせた。
 キーリは通信機を手に取ると、魔力を通して受信する。

『こちら一部。応答されたし』

「こちら二部。通信精度は良好なり」

『一部了解。三部への通達終了。二部による追跡を許可する』

 キーリの視線が皆の顔を見渡した後、変わらぬ声音で返答した。

「二部了解。これより追跡行動に入る」
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