王子が婚約者を想い過ぎて政務がまったく進まないので私の首が危ういです

王子が婚約者を想い過ぎて政務がまったく進まないので私の首が危ういです

　先日、王子が婚約を成約されてからぼんやりすることが増えました。

　今もほら、政務の手が止まっています。

　それで政務が滞って怒られるのは秘書役の私なんですからしっかりして下さい……！

「王子、手が止まっていますよ」

「ああ……」

　再び手を動かし始めましたが、すぐにまた止まります。

　そして溜め息をつきます。数えるた回数も忘れるくらいの数をついています。

　これはたぶん、先日にあった婚約者を想っているのでしょう。

　めちゃくちゃ惚れてますね、これは。

「王子、それほどお相手のことが気になるのなら、一度会ってきては？」

「いきなり押しかけても迷惑だろうし……というか、婚約者との将来を考えてるわけではない……」

「えぇ……なら何を考えてるんです？」

　あー、駄目ですねこれは。

　また上の空ですよ。しかも会話中に。

　なんかにやけてるし、王子？　もうちょっと他人の目を気にするようにして下さいよ？　切実に。

　応急処置として、こちらの方で婚約された家の方に連絡を入れておきましょう。御迷惑をお掛けします。

　それと王妃様にも連絡を入れておきましょう。教育指導的な意味で。