婚約者が言う通りに奉仕したところ、顔中をぐちゃぐちゃにして意識を失ってしまいました。婚約者が。

婚約者が言う通りに奉仕したところ、顔中をぐちゃぐちゃにして意識を失ってしまいました。婚約者が。

「メイドになってもらいたい。格好だけでも」

　という婚約者の願いを聞いて、着替えてみましたメイド服。

　生地は分厚いし、動きにくいし、なかなか体力を使いますね。

　で、メイドになってどうすれば良いんですかね。

「奉仕をして欲しい」

　掃除じゃなくてですか？

「ああ、うん。悪いけど、うん。そう」

　なんか歯切れが悪い物言いですが、まあ良いでしょう。

　幼い頃から『超絶指圧の鬼』と呼ばれたこの私が、全身全霊で奉仕して差し上げましょう。

　手始めに靴と靴下を脱がせ、ベッドに横になってもらいます。

　あと、これを忘れずに。

「何これ。タオル？　何枚も？」

　枕元に敷いて下さい。顎の下にも置いておくと安心です。

　では、足の裏を丁寧に揉みまして、徐々に強くツボを押していきます。人に合わせた加減が大事。

　次はふくらはぎ、膝裏と、下半身から上半身にかけて揉み解していきます。



　はい、終わりました。

　婚約者は白目を剥いて意識を失っており、目と鼻と口からは大量の涙やら鼻水やら涎やらを垂れ流し続けています。

　これ、他の令嬢には見せられない顔ですね……。百年の恋も冷めて凍えて割れ砕けるレベル。

　敷いていたタオルもぐっしょり濡れていますから、後で水分をしっかり摂らせましょうかね。

　でもまあ、これで日頃の疲れもだいぶ取れたに違いないので良しとしておきます。

　我ながらいい仕事をしたものですね。



　それから週に一度くらいの割合で、婚約者は私に指圧をせがむようになりました。

　これは、堕ちましたね……。