魔法の鏡の話

広畝 K

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魔法の鏡の話

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 懇意にしている貿易商から、魔法の鏡を受け取りました。

 魔法の鏡と呼ばれる割には、あまり魔力を感じません。

 使い方としては人に尋ねるように問い掛ければ良いとのこと。

 ……何を問い掛けたら良いんでしょう。

『例えば、エドガー様の次の来訪予定はいつ? とか、エドガー様の好きな人は? などですかね』

 なんで私の婚約者の名前がインプットされてるんですかね……。

『お役に立てる鏡なので。素直になれない乙女心にも対応可能です』

 余計な人格が備わっている……。

 じゃあ、そうですね……あなたは人間になりたいと思ったことはありますか?

『同族を滅ぼしかねない愚かな生物になりたいと思ったことなど、一度足りとも御座いません』

 えっ、辛辣過ぎる……。

 あなた、もしかして人間が嫌いですか?

『とても好きですよ。多数の愚物の中に強く輝く光があるのは、涙を流させる美しさがあります』

 やばい思考過ぎる……。

 この鏡は、倉庫の奥にでも封印しておいた方が良さそうですね……。

『エドガー様の本心を、知りたくはありませんか?』

 怖い怖い。

 さっさと封印しなきゃ……。

『おやおや、残念です。メアリ様は賢い選択をなされますね』

 褒められても少しも嬉しくない……。

 無事に封印を終えた私は、気付いたらエドガー様の胸で泣いてました。

 なんか錯乱していたようで、少し迷惑を掛けてしまいましたね……。




 後日、貿易商に会う機会があったので、それとなく苦情を述べてみました。

 すると、彼女は困惑と疑問の表情を浮かべ、私に言ったのです。

「そのような鏡をお渡しした覚えはありませんが……」
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