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ティアナ王妃の独り言
しおりを挟む王妃の公務がひと段落して、ティータイムに入るために休憩用の1人掛け椅子に座る。王妃に与えられる椅子なだけあってとても座り心地がいい。
メアリーが淹れてくれた紅茶を楽しみ、王妃になって1年ほどの月日を思い出す。
お義母さまはあの茶会からしばらくした後、特別な時以外長時間離れることのなかった離宮から時々外に出るようになった。
外に出るといっても私の元へお茶をしに来るか孤児院に赴き慈善活動に勤しむほどしかないが、初めて顔を合わせた当初より柔らかく慈愛に満ちるように笑うようになった。寂しく微笑む方だったので良い変化だと思う。
お義母さまの行動にエドガー様の顔があんぐりと呆然としていたのも印象的だった。それほど何年もの間塞ぎ込んでいたようだ。側室争いも激しかったと言っていたから余計にストレスも抱えていたんだろうなぁ。
エドガー様も私に聞かせてくれた話は全部ではないと思う。証拠があるわけでもないし憶測でしかないけれど。
「……そういえばお父様から手紙が来ていたわね」
その呟きと共に出来る侍女であるメアリーがお父様からの手紙を持ってきてくれる。
なんだろうかと開いてみれば、姉の代わりに嫁ぐことになったことに謝罪が述べられていた。まぁそんなことは今となっては気にしない。手紙が来ていたことを知っていながら3ヶ月程放置はしていたが。
「あら、お姉様やっぱり戻ってきたのね」
どうやら失踪して半年には戻ってきたらしい。1年どころじゃなかった。それに図々しく戻ってこれることに神経を疑う。
丁度その頃エドガー様と私の婚礼絵画が届いたようでそれを見たお姉様が「どういうこと!?話が違うじゃない!?」と騒ぎ立てているのだとか。知りませんよ、私だって婚礼の日に知ったんだから。
おまけに図々しくも「私の方がふさわしいわ!」と叫んだそうだ。それにカンカンに怒ったお父様から王女の称号を取り上げ本当の意味で平民にし、修道院に送ったみたいだ。
贅沢好きな姉のことだ、修道院の慎ましい暮らしに満足できないのがありありと目に浮かぶ。
「ティアナ、サロンで茶でも飲まないか?」
無表情にけれど心は忙しくしながら手紙を見つめていると、エドガー様の声が近くでする。顔を上げればニコニコと私の方に手を差し出すので、その手を取る。
「ティアナの悪阻に何か良いものがないか料理長と出産経験がある者と一緒につまめる菓子を作ってみた、食べれそうだったら食べてくれ」
そう、私は今エドガー様の御子をお腹に宿している。
老後までずっと2人が良いと言っていたエドガー様だったが懐妊の報せがあったらあったで、今度はまだ産まれてもいないのに服やらぬいぐるみやら大きくなった時の部屋まで用意し始めた。いやまだ早いわ。
それに野性味溢れる色男がチクチク布おむつを縫っている姿は私だけの秘密で特権だ。
「ティアナ、子どもにはなんで名をつけようか」
「そうですねぇ……」
姉の身代わりで嫁いできたが、相手は愚王ではなくその息子の賢王でした。
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