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第2章 コマンド探偵K&W
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事務所から出て、古びた階段を降りる。薄汚い小さなビルの事務所から一歩出ると、そこはもっと薄汚い世界である。ため息をつきながら大地に降り立ち、彼はある場所に向かって歩き始めた。
ここでK&Wの本名と経歴について、説明させていただきたい。
Wこと、渡辺儀仁、年齢二八歳。性別男、人種はアメリカ系日本人。
生まれも育ちも、日本州北海道エリアの田舎で、家は貧困層。所謂、プワイエローと呼ばれる人間である。
高校卒業と同時にアメリカ海兵隊に入隊。カリフォルニア州サンディエゴのブートキャンプで訓練を受け、アメリカ本土のロサンゼルス近郊の海兵隊基地に配属になり、その後、イラク戦争に二回派遣され、帰国後除隊。
Kこと、川村祐治、年齢二八歳。人種はWと同じアメリカ系日本人。ここまではWと同じである。
Wと決定的に違うのは、川村の家は札幌の富裕層の家柄であることだ。
違う人生を歩む事を目的で、海兵隊に入隊。同じブートキャンプで訓練を受け、そこでWと知り合い、同じロサンゼルス郊外の基地に配属になり、イラク戦争に二回派遣され帰国後除隊。
WとKの二人は同じ時期に除隊した。その後の人生を話している時にKから探偵をやらないかと持ちだされ、Wは探偵になることを選んだ。
探偵養成所で探偵になるための勉強をして、試験に合格し、二人は探偵になった。
探偵事務所を開くときに、競争の激しいニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコを避け、北海道エリアの札幌を選んで事務所を開き、探偵稼業を始めた。
札幌を選んだのは、お互いの故郷でもあったという点もあるだろうが。何より、競争率がさほど高くないのが、魅力だったというのもある。
札幌の競争率がニューヨークなどと比べて高くないのは、半ば無法地帯に近いというのが理由であった。
探偵事務所を開いて三年後には、探偵K&Wの名は表世界、裏世界に名を轟かせていた。
それには二人の役割分担というものが大きかった。
Wはもっぱら探偵業の荒事専門、銃を使う、体を使うことだったら、右に出る者はいないと言われるほど、腕っ節が強く手が早かった。体格は一七八センチ、体重九五キロに筋肉質の体躯と獰猛な猛禽類を連想させる目をしていて。睨まれたら、どんな奴でも縮こまってしまうと言われる。
Kは銃を使う、体を使うことだったらWと比べて少し劣るが、頭を使うことであったらWに勝る。そして、身長一八〇センチ、体重六七キロとモデル体型で、眼鏡が似合う、やさしい目と整った顔立ち。とても綺麗な笑顔をし、その辺の結婚詐欺師顔負けの女たらしでもある。
そんな全く対照的な二人が出会ったのは、まさしく奇跡とでも言うべきであろう。
そんな二人のどっちかがかけていたら、このコンビはここまで有名にはなれなかっただろう。そんな二人の出会いを奇跡という者がいれば、悪魔の出会いと噂する者までいる。
そこまで、二人は有名になっていた。
自分の後方から近づき、今は走って離れようとしている少年の腕を、Wが掴む。少年はすぐさまそれを振り解きにかかるが、大人の力にはかなわず、ぐいと引き寄せられてしまう。その掴まれた少年の手には、まるで当然のようにWの財布が握られていた。
「待て、別に取って喰いやしない。お前新入りだな、ちょうどいいボスのいるところまで案内しろ」
こう言うと少年は抵抗をやめ、Wの顔をじっと見つめた。陰気な唇と病的な瞼は互いの共通項であり、少年はつい手の力が緩んで、Wの財布を地面に落としてしまった。
財布を拾い、ポケットにWは戻した。
ここでK&Wの本名と経歴について、説明させていただきたい。
Wこと、渡辺儀仁、年齢二八歳。性別男、人種はアメリカ系日本人。
生まれも育ちも、日本州北海道エリアの田舎で、家は貧困層。所謂、プワイエローと呼ばれる人間である。
高校卒業と同時にアメリカ海兵隊に入隊。カリフォルニア州サンディエゴのブートキャンプで訓練を受け、アメリカ本土のロサンゼルス近郊の海兵隊基地に配属になり、その後、イラク戦争に二回派遣され、帰国後除隊。
Kこと、川村祐治、年齢二八歳。人種はWと同じアメリカ系日本人。ここまではWと同じである。
Wと決定的に違うのは、川村の家は札幌の富裕層の家柄であることだ。
違う人生を歩む事を目的で、海兵隊に入隊。同じブートキャンプで訓練を受け、そこでWと知り合い、同じロサンゼルス郊外の基地に配属になり、イラク戦争に二回派遣され帰国後除隊。
WとKの二人は同じ時期に除隊した。その後の人生を話している時にKから探偵をやらないかと持ちだされ、Wは探偵になることを選んだ。
探偵養成所で探偵になるための勉強をして、試験に合格し、二人は探偵になった。
探偵事務所を開くときに、競争の激しいニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコを避け、北海道エリアの札幌を選んで事務所を開き、探偵稼業を始めた。
札幌を選んだのは、お互いの故郷でもあったという点もあるだろうが。何より、競争率がさほど高くないのが、魅力だったというのもある。
札幌の競争率がニューヨークなどと比べて高くないのは、半ば無法地帯に近いというのが理由であった。
探偵事務所を開いて三年後には、探偵K&Wの名は表世界、裏世界に名を轟かせていた。
それには二人の役割分担というものが大きかった。
Wはもっぱら探偵業の荒事専門、銃を使う、体を使うことだったら、右に出る者はいないと言われるほど、腕っ節が強く手が早かった。体格は一七八センチ、体重九五キロに筋肉質の体躯と獰猛な猛禽類を連想させる目をしていて。睨まれたら、どんな奴でも縮こまってしまうと言われる。
Kは銃を使う、体を使うことだったらWと比べて少し劣るが、頭を使うことであったらWに勝る。そして、身長一八〇センチ、体重六七キロとモデル体型で、眼鏡が似合う、やさしい目と整った顔立ち。とても綺麗な笑顔をし、その辺の結婚詐欺師顔負けの女たらしでもある。
そんな全く対照的な二人が出会ったのは、まさしく奇跡とでも言うべきであろう。
そんな二人のどっちかがかけていたら、このコンビはここまで有名にはなれなかっただろう。そんな二人の出会いを奇跡という者がいれば、悪魔の出会いと噂する者までいる。
そこまで、二人は有名になっていた。
自分の後方から近づき、今は走って離れようとしている少年の腕を、Wが掴む。少年はすぐさまそれを振り解きにかかるが、大人の力にはかなわず、ぐいと引き寄せられてしまう。その掴まれた少年の手には、まるで当然のようにWの財布が握られていた。
「待て、別に取って喰いやしない。お前新入りだな、ちょうどいいボスのいるところまで案内しろ」
こう言うと少年は抵抗をやめ、Wの顔をじっと見つめた。陰気な唇と病的な瞼は互いの共通項であり、少年はつい手の力が緩んで、Wの財布を地面に落としてしまった。
財布を拾い、ポケットにWは戻した。
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