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第6獣

怪獣6-2

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「鏑木さん、見当たりましたか?」
「全然、次に行きましょう」
 次の場所へ向かうも、心の中で、秀人は焦っていた。
(もし何の痕跡も見つからなかったら、どうすればいいのだろう? それに、あの光の玉が手掛かりになる確証はどこにもないし……。無駄に連れまわして、危険ばかり増やしているのではないだろうか……?)
『焦っているな』
 見かねたゴリアスが話かける。
「そりゃそうだよ……」
『秀人、お前の見立ては間違っていない……』
「それってまさか!」
『近づいている……、蘭!』
 ゴリアスの声が頭の中に響き、蘭は身構える。
「分かっている! 鏑木さん、近くに居るかもしれない!」
 言葉を聞いて、辺りをきょろきょろ見渡すも、何も変わったことは無い。
 蘭と秀人が、鏑木を守るようにして、挟む。
「蘭ちゃん、秀人君?」
「これからは、俺らに任せて!」
 真剣な声に、鏑木は頷く。自然と不安な気持ちは消えて、落ち着いた気持ちが、心の中から溢れてくる。
「ゴリアス、どうだ……」
 小声でゴリアスに聞く。
『近づいているぞ……』
 ゴリアスは三人に接近している気配を全身で、感じ取る。
 物凄い、恨みのエネルギーだ。人間を絶対に許さない。確実に殺してやる気持ちが籠っていた。気を抜くとゴリアスまで飲み込まれてしまいそうになる。
 それが一歩一歩迫っている、蘭と秀人は大丈夫なのか? もし、何か害を与えるのであれば、二人の同意を取らずに、強制的に変身させるのも考えている。鏑木の前だったが、構わなかった。守るためにもなりふり構っていられない。
「ゴリアス、大丈夫だ。信じなよ」
「そんな気配に飲まれるほど、やわじゃないよ!」
 気持ちを察したのか、二人は小声で返してくる。その中には安心させる思いが籠っていた。ゴリアスも小さく笑い、ありがとう。と頭の中で呟いた。
「二人共! あれを見て!」
 鏑木が展示室を指さす。
 展示室に収蔵されていた、土偶全てが欠片となってプラスチックケースを通り抜けて、散らばり、何かに導かれる虫の様に、床を這いながら一か所に向かって進んでいた。
 それらは三人の前に集まると、形になっていった。
 足、胴体、腕、頭……。等身大の遮光器土偶に似た様な姿になる。
 それは目の部分が小さく、胸の辺りに怪獣を象った、紋章が彫ってあった。
「これは一体……」
 相対したまま、対峙する。何も反応は無かった。
「何か、こっちからしてみるか……?」
 蘭が今にも、飛びかかろうとする。それを秀人が抑えた。
「罠かも知れないから、もう少し様子を見よう……」
 三人は息を飲んで、土偶を見るが、何も動きは無い。
「蘭ちゃん、秀人君……、土偶が何かを言っているの……」
「分かるんですか?」
「うん、頭の中に聞こえてくるの、分かるわ……」
 鏑木の脳内に、土偶の言葉が駆け抜けていく。
「なんて言っているんですか」
 蘭が聞く。この土偶は何が目的なのか、何のために三人を閉じ込めているのか、それを知りたい。
「警告って言っているの、侵略者をこの星から、一匹残らず抹殺するためにって……」
 全く意味が分からなかった、何のための警告なのか。そもそも侵略者は何を意味しているのか? 三人には全く分からない。
「何を言っているんだ?」
 蘭の呟きに、秀人は思案を巡らせる。
「侵略者って、地球人を言っているんじゃないのか?」
 秀人の言葉を聞いた土偶は、違うと言う意味のジェスチャーをする。
「地球人じゃないとなると、もっと別の意味になるんじゃない? 例えば、どこか特定の地域に住んでいる。」
 鏑木の言葉を聞いて、土偶は頷いた。
 野蛮人とは、地球人では無く、その地域に住んでいる、特定の人種。そんな人種は世界にたくさんる。一つ一つ挙げてもキリがない。
「ゴリアスまさかとは思うけど、グリフォンと関係あるんじゃないかな? 同じ気配がしたって言っていたよね」
 秀人が小声で話すと、ゴリアスは頷く。
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