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第5獣
怪獣5-8
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「秀人、何かいい誤魔化し方ないかな?」
「急に聞かれても、難しいな……」
秀人はゴリアスに助け舟を出しても、良い答えが思いつかず、無理だった。
「そう言えば、どうして古代日本について、研究しているんです?」
蘭が話題をすり替えるように、聞く。
「それは、この日本にアイヌ以外の先住民がいるのかもって、疑問に思ったのよ」
「アイヌ以外の先住民……?」
蘭の頭には疑問符が浮かぶ。アイヌ以外の先住民がいるだなんて、思ってもいない。
歴史の授業では、アイヌが北海道の先住民だと教わったが、それ以外の存在が本当にいたのだろうか? と、蘭の頭の中に疑問符が付く。
「そう思ったきっかけって、一体何ですか……?」
秀人の質問に、鏑木は答える。
「きっかけは大学時代の発掘実習よ、その時にどの時代にも属しない、土器の破片が出てきたの、調べても分からずじまいで、そこから、この北海道にアイヌ以外に人が居たらって、そんな疑問が浮かんだの。この日本列島に和人以外の人間が最初に暮らしていたらって、考えるようになって、その証拠が残っているのかもって、思うようになるとそれを突き止めたくて、大学院に進学したのよ」
言葉を聞きながら、秀人は思った。もし、和人やアイヌ人以外の人間が最初に暮らしていたら、自分達は一体何なのだろう。
もしかしたら、自分達はアイヌ人でも和人でもない、また別の存在なのではとも、思い浮かんでしまう。でも、そんな証拠はどこにもない。どこにもないことを考えてもどうしょうもない。
「だとしたら、何なんだろうな……」
ふいに蘭が呟く。
「何って?」
「この北海道に居るのが、アイヌでも日本人でも無かったら何なんだろうって。ちょっと思い浮かんじゃったんだ」
「そうね。私たちが最初から、この日本列島、北海道、そして地球に最初から住んでいた証拠はどこにもないんだもの。でも、それを突き止めるのも考古学や古代日本を調べて行くうちに分かって行くんだから、それはとても面白いことなのよ」
納得したかのように、蘭は頷いた。
蘭が理解してくれたのなら、それでいい。これから先また新しい発見や研究が進めば分かって行くのだから。
『理解してくれたのはいいが、ここから脱出する方法を考えないといけないな』
ゴリアスの言葉が頭の中に響いて、蘭と秀人は現実に戻される。
「入り口はどんな感じですか?」
秀人の問いかけに、鏑木はかぶりを振る。
「全くダメ、まるで岩のように動かないのよ」
「私がやってもダメか?」
蘭が盛り上がった、腕の力こぶを作って見せる。これならどんな岩でも動かすか、破壊することも出来ると、アピールしているかのようだ。
「一回、試してみましょうか」
蘭の力こぶを見て、何か確信を得たかのように、頷いた。
早速扉の前に行って、取っ手引くも何も反応は無かった。
「ちょっとやってみるから、待っていて」
扉のでっぱりを掴むと徐々に力を入れて行く。
腕の力こぶは膨れ上がって、血管がぴくぴく浮かび、額には筋が現れ、顔全体が赤みを帯びて行く。着ているシャツがはじけ飛ぶのではと思われるくらい、力を入れて行く。
「こいつ! 開かないか!」
顔は完全に赤くなり、額の筋からは血管が割けて血が噴き出そうになる、それは腕も同じだった。胸と背中の筋肉がぴくぴく痙攣するも、扉は動かない。
「うおおおおっ! なんだこいつ! 全然動かんぞ!」
手を離して、ゼイゼイ体で息をする。腹立ちに思いっきり扉を蹴るも、何も反応は無かった。
「蘭、これを使ってみよう」
秀人はバールと工具箱を持っていた。
「守衛室から、使えそうなものを探していたんだ。こいつを差し込んで、てこの原理でね。蘭、やってみて」
「分かった!」
再びこじ開けようと、腕と体に力を籠める。額に汗が浮かび、血管が浮かび上がる。どれだけ力を籠めようとも、扉はピクリともしない。
「急に聞かれても、難しいな……」
秀人はゴリアスに助け舟を出しても、良い答えが思いつかず、無理だった。
「そう言えば、どうして古代日本について、研究しているんです?」
蘭が話題をすり替えるように、聞く。
「それは、この日本にアイヌ以外の先住民がいるのかもって、疑問に思ったのよ」
「アイヌ以外の先住民……?」
蘭の頭には疑問符が浮かぶ。アイヌ以外の先住民がいるだなんて、思ってもいない。
歴史の授業では、アイヌが北海道の先住民だと教わったが、それ以外の存在が本当にいたのだろうか? と、蘭の頭の中に疑問符が付く。
「そう思ったきっかけって、一体何ですか……?」
秀人の質問に、鏑木は答える。
「きっかけは大学時代の発掘実習よ、その時にどの時代にも属しない、土器の破片が出てきたの、調べても分からずじまいで、そこから、この北海道にアイヌ以外に人が居たらって、そんな疑問が浮かんだの。この日本列島に和人以外の人間が最初に暮らしていたらって、考えるようになって、その証拠が残っているのかもって、思うようになるとそれを突き止めたくて、大学院に進学したのよ」
言葉を聞きながら、秀人は思った。もし、和人やアイヌ人以外の人間が最初に暮らしていたら、自分達は一体何なのだろう。
もしかしたら、自分達はアイヌ人でも和人でもない、また別の存在なのではとも、思い浮かんでしまう。でも、そんな証拠はどこにもない。どこにもないことを考えてもどうしょうもない。
「だとしたら、何なんだろうな……」
ふいに蘭が呟く。
「何って?」
「この北海道に居るのが、アイヌでも日本人でも無かったら何なんだろうって。ちょっと思い浮かんじゃったんだ」
「そうね。私たちが最初から、この日本列島、北海道、そして地球に最初から住んでいた証拠はどこにもないんだもの。でも、それを突き止めるのも考古学や古代日本を調べて行くうちに分かって行くんだから、それはとても面白いことなのよ」
納得したかのように、蘭は頷いた。
蘭が理解してくれたのなら、それでいい。これから先また新しい発見や研究が進めば分かって行くのだから。
『理解してくれたのはいいが、ここから脱出する方法を考えないといけないな』
ゴリアスの言葉が頭の中に響いて、蘭と秀人は現実に戻される。
「入り口はどんな感じですか?」
秀人の問いかけに、鏑木はかぶりを振る。
「全くダメ、まるで岩のように動かないのよ」
「私がやってもダメか?」
蘭が盛り上がった、腕の力こぶを作って見せる。これならどんな岩でも動かすか、破壊することも出来ると、アピールしているかのようだ。
「一回、試してみましょうか」
蘭の力こぶを見て、何か確信を得たかのように、頷いた。
早速扉の前に行って、取っ手引くも何も反応は無かった。
「ちょっとやってみるから、待っていて」
扉のでっぱりを掴むと徐々に力を入れて行く。
腕の力こぶは膨れ上がって、血管がぴくぴく浮かび、額には筋が現れ、顔全体が赤みを帯びて行く。着ているシャツがはじけ飛ぶのではと思われるくらい、力を入れて行く。
「こいつ! 開かないか!」
顔は完全に赤くなり、額の筋からは血管が割けて血が噴き出そうになる、それは腕も同じだった。胸と背中の筋肉がぴくぴく痙攣するも、扉は動かない。
「うおおおおっ! なんだこいつ! 全然動かんぞ!」
手を離して、ゼイゼイ体で息をする。腹立ちに思いっきり扉を蹴るも、何も反応は無かった。
「蘭、これを使ってみよう」
秀人はバールと工具箱を持っていた。
「守衛室から、使えそうなものを探していたんだ。こいつを差し込んで、てこの原理でね。蘭、やってみて」
「分かった!」
再びこじ開けようと、腕と体に力を籠める。額に汗が浮かび、血管が浮かび上がる。どれだけ力を籠めようとも、扉はピクリともしない。
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