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第5獣
怪獣5-4
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こんな時は、ゴリアスの力を借りるしかないが、肝心のゴリアスはずっと黙ったままだ。よっぽど古代語とグリフォンが気になっているのだろう。
それでも、話しかけるのは出来る。
「ねぇ、ゴリアス。お昼からずっと黙っているけどさ、そんなに気になっているのか」
「蘭、どうしたんだろうね……。ゴリアス」
「さぁな。ゴリアスだって考えたいんだろうよ」
その時だ。
『実は、ちょっと気になっていることがあってな。今思い出したんだ』
蘭と秀人の頭の中に、ゴリアスの声が聞こえてくる。
「何か分かったのか?」
真っ先に蘭が聞いて来る。口調にはゴリアスを心配している気持ちが籠っていた。
『グリフォンが、最後に言ってた言葉なんだけどな……』
「カナンガって言う古代語でしょ。それがどうかしたのかい?」
『先住民以外にも、意味があったんだ。人間という意味なんだ』
人間という単語に、二人には、それで考えられるのがある。
「まさかグリフォンは、ゴリアスの中に人間が居るのを気が付いていたのか?」
蘭の言葉を聞いて、ゴリアスは押し黙る。
『わからない。もしかしたら分かっていたのかもしれないが、なんとも言えないな……』
ゴリアスの言葉を聞いて、蘭と秀人は押し黙る。
もし、あのグリフォンが自分達の正体に気が付いていたら、何を仕掛けていたのだろうか。
蘭と秀人の家族を、攻撃するようになるのかもしれない。
二回戦っているが、あの時はまだ正体が分かっておらず、もしわからないまま、グリフォンを倒しているのなら、それは幸運だった。
しかし、確実に倒した証拠はない。
爆発に飲まれ、ジラノと同じように倒した。倒したというよりかは消滅させたほうがが正しい。
復活することは出来ないはずなのだが、なぜか蘭と秀人、ゴリアスは得も言われぬ不安を抱いている。
「グリフォンは、何を言いたかったのかな?」
「先住民と人間か……」
考えれば考えるほど、分からなくなってきた。
本当に何を言いたかったのだろう。
「本当、何なんだろうな……」
新しい形の怪獣が現れたとしても、不思議ではない。
人間の言葉を理解し、道具を使う。そんな変わった怪獣も現れる可能性もあるのだから。
「そうなるとさ、ジラノの時みたいにただ戦えばいい相手でも、無くなるんだからな」
「でも、僕らとしても、戦わない相手がいちばんだと思うけどね」
『確かにそうだな』
戦わずに終わり、余計な犠牲や被害を出したくない。それは三人の切実な願いでもある。
「それは叶って欲しいな。平和的に終わって欲しいんだ」
「本当だよ……」
蘭が息を吐いて天井を見る。もし、戦わずに終わったらどれだけの平和が来るのだろう。
平和。それは人類、否、この星に住む全生物共通の願い。
何も争いがなく、笑顔で暮らす世界。そのユートピアを目ざそうと心の中で思っているのだが、一向に実現しないのがもどかしい。
ちらと時計を見ると、もう8時になろうとしている。流石にもう帰ろうと秀人が思った時。ゴリアスが声を掛けた。
『二人共! 現れた!』
「何が! まさか、グリフォンか?」
蘭の言葉を、ゴリアスは否定する。
『違う……、グリフォンなんかとは違う。もっとこう……、何かを捉えているような、そんな感じなんだ……』
「場所はどこなんだ? 遠いか?」
『否、すぐ近くだ。ここからそんなに離れていない』
「すぐに行こう! ゴリアス、力を貸して!」
秀人の言葉に蘭が頷いて、手を握って目を瞑る。
蘭と秀人の体を光が包み、二人の体は小さな光の粒子となって消えて行く。
不快感は無い。ただ体の部分が消えて行くという感覚だ。
最後に二人の足が消えると、部屋の中に二人が居た痕跡は、完全に消えてしまった。
それでも、話しかけるのは出来る。
「ねぇ、ゴリアス。お昼からずっと黙っているけどさ、そんなに気になっているのか」
「蘭、どうしたんだろうね……。ゴリアス」
「さぁな。ゴリアスだって考えたいんだろうよ」
その時だ。
『実は、ちょっと気になっていることがあってな。今思い出したんだ』
蘭と秀人の頭の中に、ゴリアスの声が聞こえてくる。
「何か分かったのか?」
真っ先に蘭が聞いて来る。口調にはゴリアスを心配している気持ちが籠っていた。
『グリフォンが、最後に言ってた言葉なんだけどな……』
「カナンガって言う古代語でしょ。それがどうかしたのかい?」
『先住民以外にも、意味があったんだ。人間という意味なんだ』
人間という単語に、二人には、それで考えられるのがある。
「まさかグリフォンは、ゴリアスの中に人間が居るのを気が付いていたのか?」
蘭の言葉を聞いて、ゴリアスは押し黙る。
『わからない。もしかしたら分かっていたのかもしれないが、なんとも言えないな……』
ゴリアスの言葉を聞いて、蘭と秀人は押し黙る。
もし、あのグリフォンが自分達の正体に気が付いていたら、何を仕掛けていたのだろうか。
蘭と秀人の家族を、攻撃するようになるのかもしれない。
二回戦っているが、あの時はまだ正体が分かっておらず、もしわからないまま、グリフォンを倒しているのなら、それは幸運だった。
しかし、確実に倒した証拠はない。
爆発に飲まれ、ジラノと同じように倒した。倒したというよりかは消滅させたほうがが正しい。
復活することは出来ないはずなのだが、なぜか蘭と秀人、ゴリアスは得も言われぬ不安を抱いている。
「グリフォンは、何を言いたかったのかな?」
「先住民と人間か……」
考えれば考えるほど、分からなくなってきた。
本当に何を言いたかったのだろう。
「本当、何なんだろうな……」
新しい形の怪獣が現れたとしても、不思議ではない。
人間の言葉を理解し、道具を使う。そんな変わった怪獣も現れる可能性もあるのだから。
「そうなるとさ、ジラノの時みたいにただ戦えばいい相手でも、無くなるんだからな」
「でも、僕らとしても、戦わない相手がいちばんだと思うけどね」
『確かにそうだな』
戦わずに終わり、余計な犠牲や被害を出したくない。それは三人の切実な願いでもある。
「それは叶って欲しいな。平和的に終わって欲しいんだ」
「本当だよ……」
蘭が息を吐いて天井を見る。もし、戦わずに終わったらどれだけの平和が来るのだろう。
平和。それは人類、否、この星に住む全生物共通の願い。
何も争いがなく、笑顔で暮らす世界。そのユートピアを目ざそうと心の中で思っているのだが、一向に実現しないのがもどかしい。
ちらと時計を見ると、もう8時になろうとしている。流石にもう帰ろうと秀人が思った時。ゴリアスが声を掛けた。
『二人共! 現れた!』
「何が! まさか、グリフォンか?」
蘭の言葉を、ゴリアスは否定する。
『違う……、グリフォンなんかとは違う。もっとこう……、何かを捉えているような、そんな感じなんだ……』
「場所はどこなんだ? 遠いか?」
『否、すぐ近くだ。ここからそんなに離れていない』
「すぐに行こう! ゴリアス、力を貸して!」
秀人の言葉に蘭が頷いて、手を握って目を瞑る。
蘭と秀人の体を光が包み、二人の体は小さな光の粒子となって消えて行く。
不快感は無い。ただ体の部分が消えて行くという感覚だ。
最後に二人の足が消えると、部屋の中に二人が居た痕跡は、完全に消えてしまった。
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