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第5獣
怪獣5-2
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「誰か、助けないと……。それに警察……」
自分ではどうすること出来ない。とにかく助けを、ポケットの中のスマホを探すも、見つからない。研究室に置き忘れて来たのを今になって思い出す。
(こんな時に限って……!)
「落ち着いて……。とにかく助けを……」
この状況下で、出来ることは助けを呼ぶくらいだ。
懐中電灯を持って入り口に向かい、扉を開けようとするも、びくともしなかった。さっきまで空いていたのに。今はびくともしない。
押しても引いてみても、反応がない。
「誰か! 誰かいないの! お願い! 助けて!お願い!」
ドアに向かって、大声で叫び、叩く。ドンドンと大きな音を響かせる。もしかしたら通りかかった誰かが、聞いてくれるのかもしれない。誰か気づいてくれるのかもしれない。そんな淡い気持ちで叫ぶ。
「誰か! お願い! ここに居るの! 助けて!」
そんな叫びも虚しく、何も動きはなかった。今の鏑木は罠に囚われた、小動物と同じになっていた。
その様子を、赤い人魂は見下ろすように浮かんでいた
※
蘭は父親の部屋で、本棚を調べている秀人を見ながら、昼間あったことを思い出していた。
グリフォンを倒して、決着をつけることが出来、心の中にはやり遂げた達成感が芽生えていたが、同時に不安も抱えている。
(変身したことで、秀人の不眠症、再発していなきゃいいんだけど……)
心の中で湧き上がる不安、怪獣を倒して、平和を取り戻すことは出来たかのように見えるが、それは、隣にいる秀人を巻き込んだことによる、勝利でもあった。
(こんな時、ゴリアスだったら何を言うんだろう……?)
ゴリアスに話しかけようとするも、昼間からずっと黙ってしまい、何を話しかけても反応がない。
(ゴリアスもゴリアスで、何か抱えているんだろうな……。何も抱えていない、俺は何なんだろう……?)
蘭はこの場には、なんだか不釣り合いな感じがして、いたたまれなくなる。
(何もしないで、ただいるだけだもんな……)
ちらちらと、本棚の前にいる秀人を見ながら、蘭は心の中に沸いてきた不安を隠しながら、秀人の後ろ姿を見ていた。
視線が秀人の邪魔になっていないのか、気になり、紛らわすためにテレビをつけた。
映し出される映像は、グリフォンによって破壊されてしまった新潟県柏崎市のニュースに、沈んでしまった護衛艦の状況。そして消えてしまったグリフォンを必死で探索している、航空自衛隊の様子が流れていた。
そして、怪獣探索の援軍として、ロシア海軍の原子力潜水艦が合流したことも報道されていた。
(グリフォンを倒せても、完全に終わったわけじゃない、まだ続いているんだ……)
ニュースを見て、本当の平和が訪れて欲しいのを、蘭は心の中で願う。
(そうは言っても、全然落ち着かないな……)
居心地の悪さに蘭が部屋から出ようとすると、秀人が声をかけた。
「蘭、何も心配することはないよ……」
「何だよ、最初から知っていたのか……?」
蘭の問いかけに、秀人は振り向いて頷く。
それを見て、なんだか恥ずかしそうに蘭は顔を赤らめる。
「蘭の考えていることくらい、分かるよ。何年も一緒に居るからね……」
「なんでも、分かっているのか……」
蘭の言葉を聞いて、秀人は笑顔になる。
(いつもの蘭に、戻ってくれたほうがいい。いつまでも悩んでないでね……)
「ゴリアスに再び変身した時、正直言って怖かったんだよね……。だけど……、ゴリアスと一つになって、考え変わったんだ……」
「そうなのか……」
(秀人も、思うところがあったんだな……)
「あの、網走の惨劇を間近で見た時にね、この惨状を救えるのは、自分たちだけしかいない……。グリフォンの魔の手から人を助けるのは、蘭とゴリアスだけじゃできない。三人の力で助けないといけないって、改めて思ったんだよ」
自分ではどうすること出来ない。とにかく助けを、ポケットの中のスマホを探すも、見つからない。研究室に置き忘れて来たのを今になって思い出す。
(こんな時に限って……!)
「落ち着いて……。とにかく助けを……」
この状況下で、出来ることは助けを呼ぶくらいだ。
懐中電灯を持って入り口に向かい、扉を開けようとするも、びくともしなかった。さっきまで空いていたのに。今はびくともしない。
押しても引いてみても、反応がない。
「誰か! 誰かいないの! お願い! 助けて!お願い!」
ドアに向かって、大声で叫び、叩く。ドンドンと大きな音を響かせる。もしかしたら通りかかった誰かが、聞いてくれるのかもしれない。誰か気づいてくれるのかもしれない。そんな淡い気持ちで叫ぶ。
「誰か! お願い! ここに居るの! 助けて!」
そんな叫びも虚しく、何も動きはなかった。今の鏑木は罠に囚われた、小動物と同じになっていた。
その様子を、赤い人魂は見下ろすように浮かんでいた
※
蘭は父親の部屋で、本棚を調べている秀人を見ながら、昼間あったことを思い出していた。
グリフォンを倒して、決着をつけることが出来、心の中にはやり遂げた達成感が芽生えていたが、同時に不安も抱えている。
(変身したことで、秀人の不眠症、再発していなきゃいいんだけど……)
心の中で湧き上がる不安、怪獣を倒して、平和を取り戻すことは出来たかのように見えるが、それは、隣にいる秀人を巻き込んだことによる、勝利でもあった。
(こんな時、ゴリアスだったら何を言うんだろう……?)
ゴリアスに話しかけようとするも、昼間からずっと黙ってしまい、何を話しかけても反応がない。
(ゴリアスもゴリアスで、何か抱えているんだろうな……。何も抱えていない、俺は何なんだろう……?)
蘭はこの場には、なんだか不釣り合いな感じがして、いたたまれなくなる。
(何もしないで、ただいるだけだもんな……)
ちらちらと、本棚の前にいる秀人を見ながら、蘭は心の中に沸いてきた不安を隠しながら、秀人の後ろ姿を見ていた。
視線が秀人の邪魔になっていないのか、気になり、紛らわすためにテレビをつけた。
映し出される映像は、グリフォンによって破壊されてしまった新潟県柏崎市のニュースに、沈んでしまった護衛艦の状況。そして消えてしまったグリフォンを必死で探索している、航空自衛隊の様子が流れていた。
そして、怪獣探索の援軍として、ロシア海軍の原子力潜水艦が合流したことも報道されていた。
(グリフォンを倒せても、完全に終わったわけじゃない、まだ続いているんだ……)
ニュースを見て、本当の平和が訪れて欲しいのを、蘭は心の中で願う。
(そうは言っても、全然落ち着かないな……)
居心地の悪さに蘭が部屋から出ようとすると、秀人が声をかけた。
「蘭、何も心配することはないよ……」
「何だよ、最初から知っていたのか……?」
蘭の問いかけに、秀人は振り向いて頷く。
それを見て、なんだか恥ずかしそうに蘭は顔を赤らめる。
「蘭の考えていることくらい、分かるよ。何年も一緒に居るからね……」
「なんでも、分かっているのか……」
蘭の言葉を聞いて、秀人は笑顔になる。
(いつもの蘭に、戻ってくれたほうがいい。いつまでも悩んでないでね……)
「ゴリアスに再び変身した時、正直言って怖かったんだよね……。だけど……、ゴリアスと一つになって、考え変わったんだ……」
「そうなのか……」
(秀人も、思うところがあったんだな……)
「あの、網走の惨劇を間近で見た時にね、この惨状を救えるのは、自分たちだけしかいない……。グリフォンの魔の手から人を助けるのは、蘭とゴリアスだけじゃできない。三人の力で助けないといけないって、改めて思ったんだよ」
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