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第4獣
怪獣4-3
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「終わったんだな……」
『そうだな……』
呆気なかった、あれだけ騒がせていたグリフォンは、日本海、新潟沖に消えた。
何故、現れたのか何が目的だったのか、それは分からず仕舞いだったが、平穏を取り戻すことが出来た。それが一番だった。
本当に平穏を取り戻せたのだろうか? もっと自分達に出来ることがあったのではないか? 被害を最小限にとどめることが出来たのでは? と、蘭と秀人は考え込んでしまう。
二人の気持ちを察したのか、ゴリアスが言葉をかける。
『二人にしかできない事を、したんだ。それで充分さ……』
「ありがとう。ゴリアス……」
蘭が小さく礼を言った。
『さぁ、戻るぞ……』
ゴリアスの体は光に包まれて、元居た場所に向かっていく。
二人の人間、蘭と秀人に戻るために。
秀人たちに不快感は無い。目を開けたら、元居た場所に立っているだけだ。
そしてその通り、今回も目を開けると、元の北大博物館前に戻っていた。
「秀人、帰ろうか」
「そうだね」
二人は今までに感じたことがないほどの疲れを覚えていた。今日一日であらゆることが起こりすぎていたからかもしれない。そして、ゴリアスも無口だった。
「やけに静かだけど。どうしたの?」
たまらず秀人が聞いて来る。
『何だか。本当に倒したのか、気になって仕方ないんだ……』
「倒したのに決まっているさ、だって、ジラノと戦った時、光線で完全に消し去っただろ。今度は爆発だ。生きているわけがないよ」
蘭がそう言うが、秀人は違和感を抱いていた。
その言い方に蘭も不安を募らせていく。
「ゴリアス、一応聞くけど、倒した自信が無いのかい?」
秀人の問いかけにゴリアスは押し黙る。どうやって答えていいのか、分からない感じだったが、口を開いた。
『確かに倒した、だけれどもあいつは気になる言葉を言っていたんだ……』
「なんだよ、それって……」
「カナンガ……、そう言っていた」
聞きなれない言葉だった、何を意味しているのか、蘭と秀人はゴリアスの言葉を待つ。
『先住民を意味する言葉だ。あのグリフォンは、倒される前に自分を先住民と言っていたんだ』
「それはゴリアスのいた時代で、使われていた古代語の一つか……」
『そうなんだ、確かにカナンガと言っていた、何を言いたかったのか分からないんだ。それがずっと気になっている……』
「聞き間違いだよ、あの状況でそこまで分かるわけがないだろ」
蘭の言う通りだった。早くグリフォンを倒さなきゃいけなかった状況下で、そこまで聞き取れるわけがない、何かの聞き間違いを、昔使っていた言葉に当てはめているだけ。ある意味、合理的な話だ。
『そうかもしれない……、だけれども……』
ゴリアスは悩んで押し黙ってしまう。
「秀人、どうする?」
ゴリアスの様子に困った蘭が、秀人に助け舟を求める。
「何とも言えないな、ゴリアスの聞き間違いかも知れないし、本当にそう言っていたのかもしれない。もし古代語なら、僕ら初めて聞いたのかもしれないんだからさ……」
古代語と聞いて、秀人は知的好奇心を刺激されたのだろう。目を輝かせながら、興奮している。
「宝田先生。古代語も良いですが、本来の目的忘れていないでしょうね」
蘭は、やれやれと肩をすくめたオーバーアクションで言う。
「分かっているよ……、でも、嬉しいんだ。古代語を聞いてみてさ……。この言葉が僕たちが何気なく、当たり前に使っている、言葉の元なんだよ。これが聞けて嬉しいわけがない……」
秀人は一気に早口でまくし立てる。
その様子に蘭は気圧され、何も言えなくなってしまう。大人しい秀人だが自分の好きなこととなると、本当に前後の見境がなくなる。そして、それを自分はうまく感じ取ってあげられないのだ。
ゴリアスは考え続けていたが、二人は自分達の家に帰って行った。
『そうだな……』
呆気なかった、あれだけ騒がせていたグリフォンは、日本海、新潟沖に消えた。
何故、現れたのか何が目的だったのか、それは分からず仕舞いだったが、平穏を取り戻すことが出来た。それが一番だった。
本当に平穏を取り戻せたのだろうか? もっと自分達に出来ることがあったのではないか? 被害を最小限にとどめることが出来たのでは? と、蘭と秀人は考え込んでしまう。
二人の気持ちを察したのか、ゴリアスが言葉をかける。
『二人にしかできない事を、したんだ。それで充分さ……』
「ありがとう。ゴリアス……」
蘭が小さく礼を言った。
『さぁ、戻るぞ……』
ゴリアスの体は光に包まれて、元居た場所に向かっていく。
二人の人間、蘭と秀人に戻るために。
秀人たちに不快感は無い。目を開けたら、元居た場所に立っているだけだ。
そしてその通り、今回も目を開けると、元の北大博物館前に戻っていた。
「秀人、帰ろうか」
「そうだね」
二人は今までに感じたことがないほどの疲れを覚えていた。今日一日であらゆることが起こりすぎていたからかもしれない。そして、ゴリアスも無口だった。
「やけに静かだけど。どうしたの?」
たまらず秀人が聞いて来る。
『何だか。本当に倒したのか、気になって仕方ないんだ……』
「倒したのに決まっているさ、だって、ジラノと戦った時、光線で完全に消し去っただろ。今度は爆発だ。生きているわけがないよ」
蘭がそう言うが、秀人は違和感を抱いていた。
その言い方に蘭も不安を募らせていく。
「ゴリアス、一応聞くけど、倒した自信が無いのかい?」
秀人の問いかけにゴリアスは押し黙る。どうやって答えていいのか、分からない感じだったが、口を開いた。
『確かに倒した、だけれどもあいつは気になる言葉を言っていたんだ……』
「なんだよ、それって……」
「カナンガ……、そう言っていた」
聞きなれない言葉だった、何を意味しているのか、蘭と秀人はゴリアスの言葉を待つ。
『先住民を意味する言葉だ。あのグリフォンは、倒される前に自分を先住民と言っていたんだ』
「それはゴリアスのいた時代で、使われていた古代語の一つか……」
『そうなんだ、確かにカナンガと言っていた、何を言いたかったのか分からないんだ。それがずっと気になっている……』
「聞き間違いだよ、あの状況でそこまで分かるわけがないだろ」
蘭の言う通りだった。早くグリフォンを倒さなきゃいけなかった状況下で、そこまで聞き取れるわけがない、何かの聞き間違いを、昔使っていた言葉に当てはめているだけ。ある意味、合理的な話だ。
『そうかもしれない……、だけれども……』
ゴリアスは悩んで押し黙ってしまう。
「秀人、どうする?」
ゴリアスの様子に困った蘭が、秀人に助け舟を求める。
「何とも言えないな、ゴリアスの聞き間違いかも知れないし、本当にそう言っていたのかもしれない。もし古代語なら、僕ら初めて聞いたのかもしれないんだからさ……」
古代語と聞いて、秀人は知的好奇心を刺激されたのだろう。目を輝かせながら、興奮している。
「宝田先生。古代語も良いですが、本来の目的忘れていないでしょうね」
蘭は、やれやれと肩をすくめたオーバーアクションで言う。
「分かっているよ……、でも、嬉しいんだ。古代語を聞いてみてさ……。この言葉が僕たちが何気なく、当たり前に使っている、言葉の元なんだよ。これが聞けて嬉しいわけがない……」
秀人は一気に早口でまくし立てる。
その様子に蘭は気圧され、何も言えなくなってしまう。大人しい秀人だが自分の好きなこととなると、本当に前後の見境がなくなる。そして、それを自分はうまく感じ取ってあげられないのだ。
ゴリアスは考え続けていたが、二人は自分達の家に帰って行った。
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