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第4獣
怪獣4-1 かりそめの勝利
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光の塊となった蘭と秀人は、怪獣の現れた場所に向かって進んでいた。
体がゴリアスへと変化しながら、声が頭の中に響く。
『もう少しだ……。準備は良いか?』
「もちろん! 秀人お前はどうだ?」
「良いよ! 大丈夫!」
普段の二人に戻っていた。
怪獣を確実に倒す、その信念で二人は満ち溢れていて、ゴリアスは内心安堵する。
「なぁ、秀人、あの怪獣の名前決めたか?」
「どうして、そんなこと言うのさ、でも考えてはいたんだ、グリフォンなんてどうだろう?」
「グリフォン? それって、なんだ?」
蘭は首をかしげる。
「あの怪獣を見て思ったんだけど、色々な生物が合わさっているだろ、そこから思いついたんだ」
「ふうん、じゃあグリフォン退治だ! 秀人、気合を入れろよ!」
蘭の声が光の中に響く。光の粒が合わさって、ゴリアスの頭が出来上がると、それは雄叫びとなって現れた。
グリフォンは柏崎刈羽原発の上で、翼を羽ばたかせながら見下ろしていた。
これからどうやって、これを壊すのか。それを頭の中で考えていた。
思いついたのは、この中で一番被害の出そうな場所だ。それならあの、角ばった建物が良い。そう思っていると、何かが瞳に写り込んだ。
光の塊だ、それが地面に降り立つと、ゴリアスが姿を現した。
「さぁ、グリフォン野郎! 今度こそ逃がさないぞ! 年貢の納め時だ!」
蘭の言葉はゴリアスの雄叫びとなって、変換された。周囲に響き渡り、近くの草や木がなびく。
グリフォンは羽を羽ばたかせながら、ゴリアスを見下ろす。
ゆっくりとゴリアスの近くにまで、降りてくると羽ばたきを強くさせた。
風の音はヒュウ、ヒュウと高まって行く。
「何をする気だ……」
「蘭、身構えて!」
秀人の言葉に、蘭はグリフォンを睨む。
羽ばたきが強くなると、グリフォンの周りに風の壁が出来て行き、完全にグリフォンの全身を覆った。風の力によって、木、柏崎原発の送電用鉄塔、煙突を壁の中に巻き込んでいく。
「こいつ……!」
『来るぞ!』
ゴリアスの言葉と共に、ビュンと音が響き、何かが飛んできて脇を掠め、ゴリアスの背後にある山に突き刺さる。
「何だ!?」
「蘭、鉄塔だ! 風の中に取り込んで、飛ばして来る!」
秀人の言葉と同時に、また飛んでくる。今度は木だった。枝の部分が脇に命中して、バシンと言う音と共に、鈍い痛みが伝わった。
「痛てぇ! 秀人、大丈夫か?」
「何とか……」
無理に笑顔を作って答えているが、妙に痛々しい。
『また来るぞ!』
ゴリアスの声と共に飛んできたのは、送電用鉄塔だった。赤と白が交互になっている、鉄塔がゴリアス目掛け飛んでくる。それを僅差でかわす。
何か反撃をしないと……、蘭がそう考えていると、耳の中にキィーンと、ジラノとの戦いの時に聞いた、ジェットエンジンにも似た音が聞こえて来た。どこからか、戦闘機でも飛んできたのかと思っていたが、違っていた。普段ならどこかにかき消えてしまうはずの音が、耳の中にいつまでも残っているのと同時に、頭に激痛が走る。
中から鎖で縛られている痛みに、思わず頭を押さえて、うずくまる。
「なんだ……、この音……」
『頭が……、割れそうだ……』
ゴリアスも呻き声を漏らす。
「超音波なのか……?」
腹の奥から、絞り出すように、くぐもった声で秀人が答える。
だが、秀人には疑問だった。超音波なら人間が聞くことが出来ない。定常音として、耳で感じるのが出来ないのだ。
どうして、その音を聞き取ることが出来るのか? ゴリアスに変身したことで体の機能も変わったというのか。
「秀人……、何か策は無いか……?」
『この音……、何とかしないと……』
蘭とゴリアスの悲痛な声を聞きながら、考える。
秀人はグリフォンが作る、風の動きに注目して、流れを見る。
体がゴリアスへと変化しながら、声が頭の中に響く。
『もう少しだ……。準備は良いか?』
「もちろん! 秀人お前はどうだ?」
「良いよ! 大丈夫!」
普段の二人に戻っていた。
怪獣を確実に倒す、その信念で二人は満ち溢れていて、ゴリアスは内心安堵する。
「なぁ、秀人、あの怪獣の名前決めたか?」
「どうして、そんなこと言うのさ、でも考えてはいたんだ、グリフォンなんてどうだろう?」
「グリフォン? それって、なんだ?」
蘭は首をかしげる。
「あの怪獣を見て思ったんだけど、色々な生物が合わさっているだろ、そこから思いついたんだ」
「ふうん、じゃあグリフォン退治だ! 秀人、気合を入れろよ!」
蘭の声が光の中に響く。光の粒が合わさって、ゴリアスの頭が出来上がると、それは雄叫びとなって現れた。
グリフォンは柏崎刈羽原発の上で、翼を羽ばたかせながら見下ろしていた。
これからどうやって、これを壊すのか。それを頭の中で考えていた。
思いついたのは、この中で一番被害の出そうな場所だ。それならあの、角ばった建物が良い。そう思っていると、何かが瞳に写り込んだ。
光の塊だ、それが地面に降り立つと、ゴリアスが姿を現した。
「さぁ、グリフォン野郎! 今度こそ逃がさないぞ! 年貢の納め時だ!」
蘭の言葉はゴリアスの雄叫びとなって、変換された。周囲に響き渡り、近くの草や木がなびく。
グリフォンは羽を羽ばたかせながら、ゴリアスを見下ろす。
ゆっくりとゴリアスの近くにまで、降りてくると羽ばたきを強くさせた。
風の音はヒュウ、ヒュウと高まって行く。
「何をする気だ……」
「蘭、身構えて!」
秀人の言葉に、蘭はグリフォンを睨む。
羽ばたきが強くなると、グリフォンの周りに風の壁が出来て行き、完全にグリフォンの全身を覆った。風の力によって、木、柏崎原発の送電用鉄塔、煙突を壁の中に巻き込んでいく。
「こいつ……!」
『来るぞ!』
ゴリアスの言葉と共に、ビュンと音が響き、何かが飛んできて脇を掠め、ゴリアスの背後にある山に突き刺さる。
「何だ!?」
「蘭、鉄塔だ! 風の中に取り込んで、飛ばして来る!」
秀人の言葉と同時に、また飛んでくる。今度は木だった。枝の部分が脇に命中して、バシンと言う音と共に、鈍い痛みが伝わった。
「痛てぇ! 秀人、大丈夫か?」
「何とか……」
無理に笑顔を作って答えているが、妙に痛々しい。
『また来るぞ!』
ゴリアスの声と共に飛んできたのは、送電用鉄塔だった。赤と白が交互になっている、鉄塔がゴリアス目掛け飛んでくる。それを僅差でかわす。
何か反撃をしないと……、蘭がそう考えていると、耳の中にキィーンと、ジラノとの戦いの時に聞いた、ジェットエンジンにも似た音が聞こえて来た。どこからか、戦闘機でも飛んできたのかと思っていたが、違っていた。普段ならどこかにかき消えてしまうはずの音が、耳の中にいつまでも残っているのと同時に、頭に激痛が走る。
中から鎖で縛られている痛みに、思わず頭を押さえて、うずくまる。
「なんだ……、この音……」
『頭が……、割れそうだ……』
ゴリアスも呻き声を漏らす。
「超音波なのか……?」
腹の奥から、絞り出すように、くぐもった声で秀人が答える。
だが、秀人には疑問だった。超音波なら人間が聞くことが出来ない。定常音として、耳で感じるのが出来ないのだ。
どうして、その音を聞き取ることが出来るのか? ゴリアスに変身したことで体の機能も変わったというのか。
「秀人……、何か策は無いか……?」
『この音……、何とかしないと……』
蘭とゴリアスの悲痛な声を聞きながら、考える。
秀人はグリフォンが作る、風の動きに注目して、流れを見る。
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