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第3獣
怪獣3-1 博物館見学
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目を輝かせて、蘭は復元骨を見ていた。
「本当にこんな生き物が、地上に居たのか……。信じられないな」
(博物館とか、ちゃんと見ておけばよかったな……。ずっとサボってばかりだったし……)
3階にある、古生物標本の展示室にある、ニッポノザウルスの復元骨格を見た蘭は、思わず感嘆の声を漏らした。
「それだけ驚いてくれたら、発掘した長尾教授も、天国で喜んでくれていると思うわ」
小さく微笑みながら、説明する。
「1934年に当時、日本領だったサハリンで発見されて、2年後の1936年にニッポノザウルスと名付けられたのよ」
「へぇ……。この恐竜がか……」
蘭の頭の中には、ニッポノザウルスが地上を闊歩していた、その時の姿が映っている。
大勢の恐竜が地上を闊歩し、文明も何もない地球上の支配者だった。それは小学生、中学生の時に授業で何回も聞いてきたが、いまいちピンと来なかった。だが改めて、復元骨格を見て、その説明を見ると、恐竜が地上の支配者だった理由が頷けてくる。
大きな体の中に秘めているエネルギー。それはまさに支配者の持ち合わせているものを表しているように蘭は感じられた。
「蘭、次の展示に行くよ」
入口から、秀人の声が聞こえてくる。
「蘭ちゃん、次に行くわよ」
「今行きます!」
踵を返して、秀人と鏑木の後に続く。
案内されて、次の展示室に通される。
展示室の中には、整理棚の中に発掘された土器や土偶の遺構。大昔の暮らしと生活の場を再現した模型が置かれていた。
蘭は再び、目を輝かせて展示物を見ては、感嘆の声を上げる。
「蘭、静かにしてよね」
秀人が釘を刺す。
「分かっているって! 分かっているんだけど、見るものすべてが楽しくて仕方ないんだ……」
小学生、中学生の時の見学旅行や宿泊研修では、興味なさそうどころか、サボって抜け出していた、あの時の蘭の姿とは違っていて、秀人は若干困惑していた。
『昔の蘭とは、そんなに違うのか?』
蘭の変貌ぶりにゴリアスが困惑した声で、秀人に聞いてくる。
「そうなんだよ……、なんであの時、今のように真剣にならなかったんだろ……」
常に一緒に居た、秀人はゴリアス以上に困惑した声で返してくる。
「私はね、こんなに喜んでくれて、嬉しいの。だって、北大の博物館を作るために頑張ってきた先人たちの苦労が報われるもの。それは今も同じよ。今、この瞬間でも北大博物館のために、研究や発掘を行っている人がいるんだから」
鏑木の言葉には嬉しさが籠っていた。こういう誰かの感動があってこそ、自分達が今までしてきた、行っている研究が本当に報われるのだと。
博物館はどれだけ来館者が満足したのかを調べる方法は沢山あるが、来館者の反応を見るのが一番だ。喜んだ表情と言葉があるのなら、もっと良くしていこうと励みになる。もし不満の声や表情があるのなら、どこが悪かったのか、良くして行く方法は無いのかを、全員で検討して、更に良いものにして行く。
その全てが博物館にとって最良の刺激になり、また新しい博物館を作り出す起爆剤になって、より良い博物館を作り出してきた。北大大学院に進学したのも、それが理由だ。自分もこの博物館を、より良い形にする力になりたい。
秀人は蘭とは対照的で、大人しく展示品や収蔵品を見ているが、その目は真剣だ。
展示品の説明、収蔵品の状態、一つ一つを見る目が真剣で、目で見て分かること全て吸収しようとしている。興味を持っているその姿は、物言わぬ展示品や収蔵品から過去の謎を解明しようとする、学者の姿に似ているように見えた。
蘭は感嘆の声を洩らしながら展示品を見ていたが、ある展示品を発見すると体が止まった。
「本当にこんな生き物が、地上に居たのか……。信じられないな」
(博物館とか、ちゃんと見ておけばよかったな……。ずっとサボってばかりだったし……)
3階にある、古生物標本の展示室にある、ニッポノザウルスの復元骨格を見た蘭は、思わず感嘆の声を漏らした。
「それだけ驚いてくれたら、発掘した長尾教授も、天国で喜んでくれていると思うわ」
小さく微笑みながら、説明する。
「1934年に当時、日本領だったサハリンで発見されて、2年後の1936年にニッポノザウルスと名付けられたのよ」
「へぇ……。この恐竜がか……」
蘭の頭の中には、ニッポノザウルスが地上を闊歩していた、その時の姿が映っている。
大勢の恐竜が地上を闊歩し、文明も何もない地球上の支配者だった。それは小学生、中学生の時に授業で何回も聞いてきたが、いまいちピンと来なかった。だが改めて、復元骨格を見て、その説明を見ると、恐竜が地上の支配者だった理由が頷けてくる。
大きな体の中に秘めているエネルギー。それはまさに支配者の持ち合わせているものを表しているように蘭は感じられた。
「蘭、次の展示に行くよ」
入口から、秀人の声が聞こえてくる。
「蘭ちゃん、次に行くわよ」
「今行きます!」
踵を返して、秀人と鏑木の後に続く。
案内されて、次の展示室に通される。
展示室の中には、整理棚の中に発掘された土器や土偶の遺構。大昔の暮らしと生活の場を再現した模型が置かれていた。
蘭は再び、目を輝かせて展示物を見ては、感嘆の声を上げる。
「蘭、静かにしてよね」
秀人が釘を刺す。
「分かっているって! 分かっているんだけど、見るものすべてが楽しくて仕方ないんだ……」
小学生、中学生の時の見学旅行や宿泊研修では、興味なさそうどころか、サボって抜け出していた、あの時の蘭の姿とは違っていて、秀人は若干困惑していた。
『昔の蘭とは、そんなに違うのか?』
蘭の変貌ぶりにゴリアスが困惑した声で、秀人に聞いてくる。
「そうなんだよ……、なんであの時、今のように真剣にならなかったんだろ……」
常に一緒に居た、秀人はゴリアス以上に困惑した声で返してくる。
「私はね、こんなに喜んでくれて、嬉しいの。だって、北大の博物館を作るために頑張ってきた先人たちの苦労が報われるもの。それは今も同じよ。今、この瞬間でも北大博物館のために、研究や発掘を行っている人がいるんだから」
鏑木の言葉には嬉しさが籠っていた。こういう誰かの感動があってこそ、自分達が今までしてきた、行っている研究が本当に報われるのだと。
博物館はどれだけ来館者が満足したのかを調べる方法は沢山あるが、来館者の反応を見るのが一番だ。喜んだ表情と言葉があるのなら、もっと良くしていこうと励みになる。もし不満の声や表情があるのなら、どこが悪かったのか、良くして行く方法は無いのかを、全員で検討して、更に良いものにして行く。
その全てが博物館にとって最良の刺激になり、また新しい博物館を作り出す起爆剤になって、より良い博物館を作り出してきた。北大大学院に進学したのも、それが理由だ。自分もこの博物館を、より良い形にする力になりたい。
秀人は蘭とは対照的で、大人しく展示品や収蔵品を見ているが、その目は真剣だ。
展示品の説明、収蔵品の状態、一つ一つを見る目が真剣で、目で見て分かること全て吸収しようとしている。興味を持っているその姿は、物言わぬ展示品や収蔵品から過去の謎を解明しようとする、学者の姿に似ているように見えた。
蘭は感嘆の声を洩らしながら展示品を見ていたが、ある展示品を発見すると体が止まった。
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