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第2獣

怪獣2-6

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「そうだ。新しい友情の印に二人共、北大博物館を見て行かない? 私が案内してあげる」
「博物館か……」
「本当ですか! ありがとうございます!」
 博物館という単語に、蘭が少し戸惑っていると、隣に居た秀人が先に答えた。
「いいのかよ秀人? そんな勝手に……」
「大丈夫だよ! 蘭だって、文化や土地に興味を持ってほしいし、それにゴリアスへの教育にもなるからさ……」
『そうだな……、この土地の歴史を知ることも大事なことだ……』
「まぁ、ゴリアスが言うならいいか……」
 渋々納得すると、三人は博物館に向かって歩き出した。
(そうは言っても、正直好きじゃないんだよな……)
 蘭は博物館や資料館のような場所は、はっきり言って苦手である。
 展示物を見たり、調べていたりして何が面白いのか、さっぱり理解できない。それは昔から同様で、小学校の時の社会見学や中学校の時の郊外研修でも、カリキュラムの中に博物館や資料館が入っていると、常に興味なさげにしていた。
「蘭、せっかく鏑木さんが案内してくれるんだから、失礼のないようにね」
 蘭の性格を熟知しているからこそ、秀人は蘭に釘を刺してけん制する。
「分かっているよ……。でも、昔から苦手なんだよなぁ……」
 蘭のモチベーションは下がりっぱなしで、さっきまでアイスを食べていた時とは大違いだ。
『勉強するときの、蘭になったな』
 テンションの下がった姿を見て、ゴリアスが冷やかすようなことを言う。
「そうなんだけど、蘭が抜けださないか心配だね」
 成長したとはいえ、抜け出すようなことはしないだろうと秀人は考えている。そこには蘭を信じる気持ちも入っていた。
 北大病院を出て少し歩くと、三人の目の前に茶褐色でモダンゴシック形式風の建物が見えてきた。これが目的の北大総合博物館だ。
 1999年に開館し、北大の多様な歴史、研究の伝統を後世に伝える役目をしているが、同時に来館者に対して、教育的活動の普及や講演会活動や展示品の公開、演奏会を行っていて、外部からの来館者を楽しませる、開かれた博物館になっている。
 思えば、北大博物館に来たのは初めてだった。五島博士が北大で教鞭を執っているが、積極的に来たことが今までなかった気がして、秀人の体はなんとなく緊張する。
「こっちよ、早く入って」
 北大博物館の正面玄関のドアを開けて、蘭と秀人の二人を呼ぶ。
「さぁ。行こう」
 秀人の声は若干テンションが上がっていた。
 蘭は二人にばれないように、小さな欠伸をして、秀人の後に付いて行った。
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